第2話 存在進化

 壁から抜け出すとそこは不思議な景色だった、全てが固い石の様なもので出来ていて、空まで高く連なる石の山は、芸術的ですらあった。周りを覗くと、私以外にもたくさんのモンスターが溢れ出していた。

 ゴブリンはもちろん、オーク、コボルト、オーガ、スケルトン、ゾンビ、ワーウルフ、リザードマン、ワイバーン。物語や伝承などで聞いたことのある生物まで、そしてそれらから逃げる群衆。

 私はその溢れ出すモンスターの群から抜け出す。すると目の前に何かが出来ていた。


〈ステータス〉

個体名:

種族:ゴブリン

性別:雌

年齢:2歳

レベル:10/7

HP:78

MP:45

戦闘力:123

スキル:•罠士•石投げ•体捌き

ユニークスキル:•悪虐を秘めし心•知性有し者



 これが何なのか一瞬よくわからなかった。けれども、私は脳を回して理解した。これは自分の能力を示した者であると。そうなれば後は簡単だった、理解すればいい。生まれながらにして得意だったことだ、なにも難しくはない。

 私はこの知性で生き残ってきたんだ。工夫で生き残ってきたんだ。それをする場所が変わるだけ、そう難しくはなかった。


 私は強くなろうと思った。それはこの世界だからだ、強くならなければこの世界では生きてはいけないのだと感じたからだ。

 この世界は私にとってあまりにも未知数だったからだ、整備された道、空へと登る石の塔の連なり、身なりの整った人種ヒトそのすべてが私の知りうるものからかけ離れていた。それに、今この世界を荒らしているモンスターたちは私では到底闘うことのできない種族たちだ、そんな全てが敵の中で、私がやるべきと言うのは決まっている。生物を消費して強くなる、それだけだった。



 大通りから外れた、薄暗い道を歩いている、ここにはあまり人気が感じられなく、安全そうに思えたからだ。

 

—ワンッワンッ!


 その動物は私よりも小さい、中型の動物だった、狼よりも二回りほど小さく、狼よりも攻撃性の感じられない爪や牙はさほど脅威とは思えなかった。


だから


「っ!」


そこらへんにあった固そうなものをその動物に向けて叩きつけた。その動物は、頭をやられたようで、すでに生きているとは思えなかったけれど、念のため何度か同じ行動を繰り返した。


〈ステータス〉

個体名:

種族:ゴブリン

性別:雌

年齢:2歳

レベル:10/8

HP:81/78

MP:49/45

戦闘力:129

スキル:•罠士•石投げ•体捌き

ユニークスキル:•悪虐を秘めし心•知性有し者


 レベルが上がったのを確認し、そのまま歩いていく、道なりに歩いて歩いて、歩き続けると、横から気配がした。念のため拾ったナイフを構えておく、私はその角に顔を出すと。


「うおおおおおおおお!化け物が!死ねぇ」

 何かを叩きつけようと男は迫ってくる、私はそれを裁き、男の股を狙って切り裂く。

「ぐっ、ああああああああああ」

 私は男を押し、男は股を切られた痛みとその押し出しによって倒れ込み、私はその上を乗った、私は一番皮膚の薄く、脳に近い首に狙いを定めたまま、ナイフを使い滅多刺しにした。最後には男は叫ぶこともできなくなり、目が虚を剥いていた。


〈ステータス〉

個体名:

種族:ゴブリン

性別:雌

年齢:2歳

レベル:10/10(存在進化が可能です。進化しますか?YES/NO)

HP:89/62

MP:53/45

戦闘力:136

スキル:•罠士•石投げ•体捌き

ユニークスキル:•悪虐を秘めし心•知性有し者


【モンスター説明:存在進化】

説明:存在進化とは魔物にのみ起こる進化現象のことです。進化していくには多く生物を殺して、糧にしないといけませんが、存在進化による影響は大きく、存在進化を重ねることによって別の種族に変わることもある。


 存在進化…新たな可能性が見えてきた。私は存在進化するために安全であろう場所を探す。以前存在進化する生物を見た事がある、その生物は存在進化する時に進化までの待ち時間を無防備で過ごすことになっていたのだ。格好の獲物だったので、他の生物に殺されて食事になっていた。

 私はそんなのの二の舞にはなりたくないので、生物にバレなさそうなところを探す。


 あった、それは私の体がすっぽり入って、その上空間がかなり開きそうな箱だった、私はその中にあるものをすべて外に放り投げ、中に入る。


《存在進化が可能です。進化しますか?YES/NO》


 YES


《存在進化が実行されます。一定時間休眠が行われます。安全な場所で行ってください。》


 ぐわん、視界が一瞬揺らぐ、その一瞬の揺らぎが増大していくように、揺らぎが強くなっていき、それと同時に悪感情が強くなっていく。胸が、頭が段々と熱を帯びていき、次第には体全体がズキズキと痛み出す。その余の痛みのせいなのか、それとも別の何かのせいなのか意識が遮断されるかのようにシャットアウトしていく。

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