第31話

少し時間が流れ二人はベッドの上に並んで腰掛けていた


そしてもえみの話がまだ続いた


『もてうちくんとあいちゃんが今までただ普通に過ごしてきた訳じゃない、私には少なくともそれは分かってた、だから二人の邪魔はしたくない、でも私も弱いときだってある、その時くらい甘えたい、でもそんなの出来ない、だからって訳じゃないけどもてうちくんの何かを感じられるなら、何か思えるならって、きっと一人でもやっていける、たとえ一緒にはなれなくても絶対やっていける、そう想ってた』


そんなもえみのピュアな思いを聞き洋太は信じられない行動をする


洋太は突然もえみを強く抱きしめ


『結婚しよう、一緒になろうもえみちゃん』


突然の洋太のプロポーズに嬉しくも戸惑うもえみ


『え!だっ、だって!あいちゃん!あいちゃんは?あいちゃんはどうするの?』


洋太は真剣な表情でもえみを見つめ


『別れる、別れるよ、きちんと別れる』


洋太はもえみの妊娠を知り責任を取る覚悟を決めると同時にあいと別れる事も心に決めた




決心を固めて家に戻る洋太


リビングのソファーで待ち続けていたあいは玄関のドアが開く音を聞き玄関の方を振り返った


あいは洋太が帰って来たのを確認すると急いで洋太の側へ駆け寄った


『洋太、どこ行ってたんだよ、心配したんだぞ』


目を潤ませながら洋太を見つめるあい


しかし、洋太は突然何も言わずその場で土下座をし始めた


『あいちゃん、今から言う事を聞いてほしいんだ』


洋太は床に頭を擦りつけ両手を床に付け頭を下げたまま話し出そうとすると


その姿を見てあいは拒絶反応を起こした


『やめろ!やめろよ!!聞こえない!聞こえねぇぞ何にも!!』


大声を張り上げ両手で耳を塞ぎ眼を力いっぱい閉じ顔を左右に振った


あいを落ち着かせようと洋太はあいの腕を掴まえるが、あいはそれを振り解きさらに暴れだした


『ふざけんな!!!ふざけんじゃねぇよ!!!!!』


あいは近くにあったソファーのクッションで洋太を殴り出した


洋太は原因が自分だと言う事を分かり切っているので、何も言う事も抵抗もせずたた無言で殴られ続けた(約7分)


あいは殴りながら、涙をこぼしながら


『何だよ、何で何も言わないんだよ、何でやり返して来ねぇんだよ、何か言えよ!!』


やがて洋太を殴りつかれたあいの手が止まり、洋太が真剣な目であいに近付いた

るとあいはその場から逃げ二階の自分の部屋に閉じ篭った


洋太がゆっくりと階段を上がっている途中で


『来るな!!、上がって来るな!!、来るなよ!!』


部屋の中から大声で抵抗をするあい


そんなあいの抵抗を受けながらも冷静にあいの部屋に一歩一歩近付き、あいの部屋の前まで来た


『あいちゃん、聞いてくれ』


ドア越しであいに語りかける洋太


すると部屋の中から


『うるせぇ!!消えろよ!今すぐ消えろ!!』


ベッドの上で布団を被って泣きながら大声を出し洋太を拒絶した


洋太は今のあいに何を言っても無理だと思いおとなしくあいの部屋の前から立ち去った


洋太は一階のリビングのソファーに腰を下ろし、両手を両腿に当て両手で頭を抱え込みながら眼を閉じ悩み苦しんでいた


静まり返る家の中であいの泣き声だけが微かに響き渡っていた・・・





洋太はふとっある事を思い出し急いで外へ駆け出していった


悲しい事にこれがあいとの最後の別れの場面になる

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