第4話
一方その頃もえみは仕事を終え今日の偶然の奇跡の余韻を感じていた
『まさか、もてうちくんに会えるなんて、やっぱり一人で頑張ってて良かった、でも相変わらずあいちゃんも一緒なんだ』
もえみは嬉しくも少し残念がっていた
『ふぅ、それにしても今日は疲れたな、でも凄く嬉しい一日だった』
店のロッカールームで着替えながら今日一日を振り返っていた
そして着替えを終えるとロッカーの裏扉に話しかけた
『明日も頑張るからね、もてうちくん、じゃ、明日ね』
その扉の裏側には洋太の写真が貼ってあった
もえみはそう言ってロッカーの扉を閉め、みんなに挨拶をして店を出た
裏口から店を出て家に帰ろうと歩いていると
突然一人の男がもえみの前に立ち塞がった
『あ、あの、ぼ、ぼく、その、おれ、あなたに』
男は極度に緊張している為、呂律が回っていなかった
突然の出来事にもえみも動揺を隠し切れなかった
『え、ええ、あ、あの、その』
両手を胸の前で軽く合わせながらしどろもどろに答えるもえみ
少し落ち着いてきた感じのその男が
『あ、あのお店で初めて会ってから、好きになっちゃいました』
男は顔を真っ赤にしながら告白した
突然の告白に、どうしていいのか分からないもえみ
『あ、え、あの、その、でもわたし』
『付き合ってください!!』
男は恥ずかしげに右手をもえみに差し伸べた
『ご、ごめんなさい、 私今の気持ちでは誰とも』
もえみは左手をあごの下に当て少し斜め下向きに顔を向けながら答えた
『あ、あの、いいんです、その、今すぐじゃなくても、もえみさんの心の整理つくまで待ってますから』
男は作り笑いをしながら、精一杯の抵抗をするが
『ごめんなさい、本当にごめんなさい、お気持ちは大変嬉しいのですが、私あの人(洋太)の事まだ諦め切れていないの』
もえみはその男に深々と頭を下げ断った
そんな真剣に断るもえみの姿を見て男は
『・・・・・・・・・・、わ、分かりました』
弱弱しい声でうなだれ、もえみを背にしてゆっくりと歩いていった
『ご、ごめんなさい、本当に・・・』
もえみは謝りながら目をつぶって、その男を見送った
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