第2話

『お待たせいたしま はっ!・・・』


一瞬時間が止まったように見えた


『え!も、もえみちゃん?』

『え!も、もてうちくん!』

『あ!!もえみちゃん』


三人は同時にお互いの顔をみる


突然の再会に驚きを隠せない三人


『え、でも、何でココ(日本)に、あれ?だって確か海外』


最初に質問したのは洋太だった


『あ、う、うん海外は結局親だけ、私は一人ココ(日本)に残ったの』


もえみは俯きながら心の中で(だって、やっぱりもてうちくんの事諦め切れないんだもん)


『あれ、でも家は?もえみちゃん今何処に住んでるの?』


あいも会話に入ってきた


『うん、この近くのマンションに、あ、でもごめんね先にオーダー通さないと』


その場の状況を瞬時に把握し仕事を優先させるもえみ


『そ、そうだね、ごめんね』


『でも本当、仲良さそうでいいね』


今のもえみに出来る精一杯の皮肉だった


洋太もまたもえみに対しての思いが完全にふっきれては居なかった


会わなければ何も思い返す心もなかったはずだが、実際会ってしまうと心に嘘は付けない


もえみはとりあえずオーダーを通し、またいつものように仕事に戻った


あいと洋太は楽しそうに食事を楽しみながら雑談をした


そんな二人を気にしながらもえみは仕事を続けた



『あいちゃん、悪りぃ、ちとトイレ』


申し訳なさそうに席を立つ洋太


『えー、今デートの食事中だぜ、もう、デリカシーってもんがねぇな』


洋太はトイレに向かう途中、店の先輩らしき人にもえみが注意されているのを目撃しその時もえみも洋太を見つけ、目が合い照れ笑いで誤魔化す


洋太はいつものもえみと思い安心してトイレに行く


でも真相は違っていた、会うこと等ないと思っていた二人が目の前に現れた事でもえみはいつもの平常心を少し失っていた為ミスが多かった


トイレから出てきた洋太を呼び止める声


『もてうちくん』


洋太の肩を軽く後ろから叩く


『もえみちゃん』


後ろを振り返る


『ひ、久ぶりだね、ビックリしちゃった、まさかこんなトコでもてうちくんに会えるなんて』


嬉しくもあり恥ずかしそうなもえみ


『そうだね、あの時以来だから、俺はてっきり海外』


洋太は今もえみが仕事中だと言う事を思い出し話を途中で変えた


『あ、でもいいの?今仕事中だろ』


さっきの状況(注意されているトコ)を思い浮かべ、もえみに気を使う洋太


『うん大丈夫、少しくらいなら』


直に返答をするもえみ


『なら、いいんだけど』


安心した顔で改めて久しぶりのもえみとの再会に笑顔がこぼれる洋太


『私ね、今一人で仕事とか色々自立して頑張ってるんだけど、なかなか思うように頑張れなくて』


久々に洋太に会ったことで、以前(貴志の事)のように話しかけるもえみ


『大丈夫だよ、もえみちゃん、もえみちゃんならしっかりできるよ』


笑顔でもえみの言葉を受け止め励ます洋太


『あ、ありがとう、もてうちくん、 でも、でもね       あ、う、うん、でもいいの、ごめん』


突然戸惑い気味の表情で洋太に話しかけた


『???、ど、どうしたの?』


俯くもえみを下から覗き込みながら心配げに声を掛ける洋太


『出来れば前みたいにもてうちくんに励ましてもらいたいな、なんて』


もえみは体を横に向けてもじもじしながら顔を赤らめた


しかし、次の瞬間もえみは自分自身で


『ごめんごめん、もてうちくんにはあいちゃんが居るんだもんね、ごめん今言った事忘れて』


もえみは精一杯の作り笑顔と両手を使ってさっきの言葉を打ち消した


一人で頑張る健気なもえみに洋太には以前の感情は無かった


ただ同情でもえみに言葉を送った


『あ、ああ、分かった、いいよ、大丈夫あいちゃんならちゃんと理解してくれるよ、だからいいよ『辛い時』TELしても俺に出来る事なら』


その時洋太は全く気付いていなかった、もう既にもえみはあいから洋太を奪い返す心を持っている事に、もえみは洋太の事を諦め切れていなかった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る