第2話 火おこし

俺は島に上陸した。


波打ち際にはカニやヤドカリ、浅瀬の岩にはムール貝やフジツボ。


甲殻類、貝類の食べ放題じゃねえか!!!


普通なら漁業権だの狩猟権だのなんだのでタダじゃ食えねえ代物ばかり。


はああ、これが本来の人間のあるべき姿なんだよ。


自然のモノは勝手にとって無料で食う!


それが現代じゃ、獲って食う権利を金で買わにゃならん。


おかしいだろう。


はあ、この無人島で生きていくのが楽しみでならない。


サルトルよ、俺を追放してくれてありがとうな・・・。


まあ、孤独感だけはどうしようもないが、俺は学生時代は生粋のぼっちだった。


慣れっこなのだ。


さて、甲殻類や貝類の食べ放題とは言ったものの、食べる前に火を通さなければいけない。


でなければ食あたりを起こす。


寄生虫がどこに潜んでいるかわかったもんじゃないからな。


水分補給だってそうだ。


川の下流の水には動物のフンや寄生虫が混じっていて、殺菌されていなければ腹を壊す。


水を一旦火にかけて殺菌してから飲まなければならない。


こうした知識は、スキル「サバイバル」のある俺にとって、生まれついてわかっていることなのだ。


もっとも、スキル「サバイバル」は知識しか用意しない。


このスキルは自動で火が起こせるわけでも、水を殺菌できるわけでもないのだ。


なんと中途半端な能力なのか・・・。


さて、文句を言っていても始まらん。


まずは火おこしに使えそうな木を探さなければいけないな。


木を用いた火おこしはやったことが無いが・・・。


俺は普段、ダンジョンで火を起こすには、火打石なる石を使っていた。


あれはとても便利で、火打石を適当にナイフやら他の石に打ち付けるだけで火花が出る。


その火花を麻の繊維に移して燃え上がらせるだけだ。


しかし、ここにはそんな便利な石は存在しない。


なにせ、俺はいま手持ちも何もない。


裸なのだから!!!


己の身一つで生活する、なんとかっこいい、男のロマンではないか!


さて、俺は適当な木の棒と、木の皮を入手した。


木の皮を下に敷き、木の棒を両手で挟む。


そして、両手をこすり合わせて木の棒を高速回転させる。


シュシュシュシュ!


うーん、木の皮時の棒の摩擦によって火が起こるはずなのだがなあ・・・。


なにかうまくいかない。


(それは、木が乾燥していないからです。

 乾いた木を使用しましょう。)


おっ!


俺のスキルが発動した。


こうして、サバイバルのヒントを教えてくれる。


これが俺のスキルだ。


微妙なスキルではあるが、生きる上で情報はとても重要だ。


この無人島で生き抜くのにピッタリのスキルではないか。


さてさて、乾いた木ねえ・・・。


先日雨が降ったのだろうか、木々は少しばかり湿ったものばかりだ。


参ったな・・・。


(木の上部は風通しがよく、乾いた枝葉が豊富にあるでしょう。)


おお、なるほどな。


たしかに、今日は風が強い。


木の上のほうは乾いているかもしれないな。


そうして、俺はなんとかして登れそうな木を見つけた。


はっ!よっと!


俺は木を上り、乾いた木の枝と木の皮を手に入れた!


そうして木を降り、さっそく火おこしに挑戦した。


シュシュシュシュ!


いいぞ、煙が出てきた!


シュシュシュシュ!


はあはあ、煙が出ては消え、出ては消え。


あと何回やれば火がつくんだあああ!!!


(火種を受ける葉っぱを一枚、火種を広げるスギの葉を用意しましょう。

 スギの葉は油分を含むため、火を容易に広げられます。)


そういう大事なことは先に言ええええ!!!


このスキル、間違いを犯さないとヒントをくれないんだ。


なんで一回泳がせるのかね。


最初から全部教えてくれよ・・・。


俺はスキルに文句を垂れつつ、該当する葉っぱを持ってきた。


そして、枯葉を1枚木の棒と木の皮の間に敷いた。


シュシュシュシュ!


いいぞ!火種が葉っぱに落ちた!


シュシュシュシュ!


もう一息!


シュシュシュシュ!


よっしゃ!


火が少しだけ付いた!


この小さな火種をそっと松の葉に移して。


フー!フー!フー!


空気を送り込む!


ボッ!


よっしゃあああああ!!!


結局、2時間くらいかかっただろうか。


やっと火がついた!


命の炎だ。


温かい・・・。


まずは水を確保せねば!


俺は川の水を、波打ち際から拾った空き缶ですくい、炎で熱した。


そして、沸騰したころに飲んだ。


ぷはあーーー!!!


数時間ぶりの飲水!


身体に染み渡る。


欲を言えば、冷えたビールを飲みたいところだが・・・。


それはまあ我慢だ。


これで、脱水で死ぬことはまずないだろう。


しかし、この火が雨や風で消えないように、火をどこか雨風をしのげる場所に移動せねばならんな。


俺はしばらく海岸沿いを散策した。


お!あそこがよさそうだ。


俺は拠点となりそうな岩のくぼみを見つけた。


ここなら雨もしのげよう。


俺はそこに火を移動した。


そうだ、それと、焚火を絶やさないための薪でも集めますか。


そうして、俺は薪を集めた。


薪は焚火のすぐそばに置いておく。


寝ている間に火が消えないように、常にストックを用意しておかねばならない。


これにて拠点(仮)、完成!


さて、仮の拠点もできたことだし、次は料理としゃれこみますか!



==== 作者あとがき ====


次回、カニ料理!


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