島流しの刑で追放された俺は、スキル「サバイバル」で平穏に過ごします

ムゲン

第1話 島流しの刑

俺はしがない冒険者マサル(18)。


スキルは「サバイバル」。


サバイバルに関することはオールマイティにこなすことができる。


ゆえに、パーティメンバーからは何かと重宝されている。


が、それはあくまで、野宿したり、料理したり、ダンジョンで火おこしをして明かりをともしたり、とそんな程度のものだ。


実際の魔物との戦いとなっては、俺は後方でアイテム支援をしたり、状況確認や伝達係をすることが多い。


つまり、魔物と闘うチカラは持ち合わせていない。


逆に言えば、魔物と闘う以外のすべてのことをこなしていると言える。


そのことを理解するパーティメンバーからは俺はハッキリ言って好かれてる。


そのことを理解しないパーティメンバーからは俺はハッキリ言って嫌われている。


はあ。今日も、俺のことを嫌うメンバー・サルトルがやかましい。


「マサル!お前はろくに戦えねえんだから、俺たちに口出しするんじゃねえ!」


そして、俺のことを好いてくれるメンバー・ティターニアは俺をフォローする。


「マサルはよくやっているわ。

 だって、マサルがいなきゃ、私たち、衣食住の一つもできないじゃない!」


メンバーはこいつら2人と俺の計3人。


サルトルはティターニアのことが好きで、ティターニアは俺のことをたぶん好き。


だから、サルトルは俺のことが気に入らなくて、邪魔で仕方ないと思っているのだ。


「まあ、俺、戦えないし。サルトルの言い分もわかるぜ。

 ティターニアもフォローしてくれてありがとうな。」


こんな感じで、俺は両方に気を遣わなければならない。


はあ。


何事も人間関係が結局一番大変で大事なんだよな。


あーあ、パーティとかめんどくせえ。


でも、パーティとしてダンジョンをクリアして金を稼がなければ。


だって、食費とか家賃とか税金とか払わにゃならん。


パーティはめんどくせえけど、スキル「サバイバル」とかいう中途半端なスキルしか俺にはねえから、パーティの雑用係として食っていくしかねえんだよ。


ある日、俺たちはダンジョン攻略を終え、野宿していたテントに戻った。


「さあみんな、服に血がついているだろ?

 俺が洗うから脱いで脱いで。」


いつものように、家事は俺の役目。


しかし・・・。


「いいやマサル。今日は俺がやる。」


サルトルが洗濯をしてくれるという。


なんと珍しい。


珍しいというか、パーティを組んで以来、初めてじゃねえか?


まあ、洗ってくれるなら任せよう。


「ありがとう、サルトル。」


さてと、夜も遅い。


俺たちはここでもう一晩だけ泊ることにした。


すると、どういうことだろう。


複数の足音が聞こえる。


「マサルはここか?」


聞き覚えのない男の声・・・。


謎の男がテントに入ってきた。


って、こいつ、警察!?


「23時52分。強姦の容疑で逮捕する!」


おいおい待て待て。俺は手錠をかけられた。


どういうことだ?


俺はそのままパトカーにぶち込まれた。


「なんだよ!?強姦って!」


警官が答える。


「お前がティターニアさんを犯したとサルトル氏から通報があってな。」


現行犯でもないのになぜ逮捕されにゃならん!


それに、サルトルの仕業だと!?


抵抗したいが、こいつら、拳銃を持っている。


下手に手は出せない。


俺は黙って警察署に連行された・・・。


---


「さて、取り調べを始める。

 まず、容疑を認めるか?」


いやいや、捏造も甚だしい。


「認めるわけないだろ!」


「でもね、証拠が挙がってるんだよ。

 君のパンツにはティターニアさんの血がついていた。

 これ、君がティターニアさんを無理やり犯した証拠だよね?」


はっ!


俺は察した。


珍しくサルトルが洗濯に行った理由はそれか!


ティターニアの服の血を俺のパンツにこすりつけ、強姦を捏造したんだ。


なんて野郎だ。


やつが俺をパーティから追い出したいのは知っていた。


でも、こんな強引な方法ってあるかよ!


「サルトルの仕業だ!

 信じてくれ!」


すると、警官がニッと笑った。


「サルトル君のお父さんはここの警察署の署長でね。

 証拠なんて、いかようにもできるんだよ。

 君が何と言おうと、君は強姦魔なんだよ。」


は?


俺は頭が真っ白になった。


そんなことってあり?


俺、そんなんじゃ勝ち目ねえじゃん・・・。


---


「判決を言い渡す!

 主文、被告人は強姦の罪により、島流しの刑に処す!」


裁判は当然負け。


だって、警察がグルなんだぜ。


こうして、俺は島流しの刑となった。


サルトルだ。


「なんて野郎だ!

 パーティメンバーを犯すとは、汚らしい!」


はっ!しらじらしい。


お前の罠にまんまとハマっちまったぜ。


「お前は地獄に落ちるぜ、サルトル。」


俺はそう吐き捨てた。


ティターニアだ。


「マサルは何もしてないのに!

 なんで島流しなんかに遭うのよ!

 おかしい!

 私、絶対あなたを助けるから!

 それまでどうか無事で!」


ティターニアは最後まで俺の無実を訴えてくれた。


でも、サルトルの親父には敵わなかった・・・。


---


さて、島流しの刑に処され、俺は船の上。


あれからもう何日経過したかな・・・。


「とうちゃーーーーーく!!!」


お、島に着いたらしい。


俺は船の甲板に上がり、島を見渡す。


!!!


そこには広大な無人島が広がっていた。


オーシャンビューの絶景、青々とした木々。


楽園じゃねえか!


船長が俺に声をかける。


「ははは!

 お前さんも運が悪い。

 この島は完全な無人島。

 お前さんのようなひ弱なガキ、3日ともたねえだろうな。

 お前さんの最後はなあ、肉食獣のエサがオチだぜ。

 わっはっは!!!

 あばよ!」


そう言うと、船はそそくさと去って行った。


おいおい、何が島流しの刑だよ!


ここじゃ、食べ物食い放題!水飲み放題!税金なし!家賃もなし!


天国じゃねえか!!!


そこは、スキル「サバイバル」持ちの俺にとって、楽園だった・・・。



==== 作者あとがき ====


次回、火起こし!


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