第57話 BBQ  


BBQ    



「にゃんで臨時休業なんにゃよー。  一樹なんとかしろにゃ!」


「いや、俺に言われても・・」


「一樹さま大丈夫です。 ここはマリアに任せてください」


「いや、マリアはリベルク村は初めてなんだよな」


「そうですが、あそこを見てください」


「八百屋と肉屋?」


「魚も売ってるみたいです」


「そっか!  バーベキューだな」


「はい♪  前に野宿した時、一樹さまが教えてくれました」


「よし、お店の人にバーベキューが出来る場所を教えてもらおう」




・・・

・・


俺たちは、食材を買ったお店でBBQが出来る場所を教えてもらい、そこへ向かった。

その場所は公園のようで、きれいな小川も流れている。


「よっしゃ、この辺でいいだろう!」


サットンを呼び出せば、BBQの準備が捗るのになぁと思うが、マリアがうるさいので諦める。


「ポポとクーニャンは石で竈を作ってくれ」


「わかったアル」


「マリアとティアナは、肉と野菜のカットな!」


「はい♪」


『さて、俺は薪の用意とそれが終わったら魚でもさばくかな』


こうしてみんなは、ようやく食事にありつけたのだった。


「うまいにゃ!」  ポポは喉をゴロゴロ鳴らしながら魚中心にモリモリ食べる。


「一樹さま。  お肉が焼けましたよ」


マリアは、焼けた肉を俺の皿にどんどん入れてくれる。


そして、自分は焼けてない肉までパクパク食べている。


「マリアは野菜は食べないの?  美味しいよ」


「一樹さまが、食べろとおっしゃれば、1トンでも食します」


「いや、ずいぶん極端だな。 そんな無理に食べなくてもいいよ」


「はい。 竜は肉食ですので、肉以外はドラゴン草くらいしか食べませんね」


「そうなんだ。  それじゃあ、今までは無理やり食べてたのか・・・」


「誤解しないでください。 別に嫌いなわけではないのです」


「うん、でもなんか悪かったなって・・」


「なんて言えばよいのか・・ ただ肉とドラゴン草以外ずっと食べてこなかっただけですから」


『ライオンみたいなものなのかな』


「ま、まあ これからは、いろいろな食べ物も少しずつ食べてみるといいよ」


「そうですね。  一樹さまの御食事を作った時に、同じものを食べてみます」


「そうだね、それがいいと思うよ」



・・・

・・


こうして腹いっぱい食べた俺たちは後片付けを済ませ、今日の宿を探すために村の中心へと引き返した。

リベルク村は魔物の町なので、人間が訪問することは滅多にない。


畜産物を購入する場合も、購入したいものを手紙で送り、それをリベルク村から届けてもらう仕組みなのだ。

故に宿屋は、村に一軒しかなかった。


「あの~ 今日なんですけど部屋は空いてますでしょうか」


宿も民宿のような規模の小さい建物で、全員が泊まれるか不安がよぎる。


「本日ですが、セミダブルのお部屋が1部屋とツインのお部屋が1部屋でしたらご用意できます」


「やばいな。 3人しか泊まれないじゃん」


「わかりました。 それで結構です」  ティアナが即決する。


「いや、残りの2人は、どうするんだよ!」


「一樹くん。 ツインの部屋のベッドをくっつけて、わたしとポポとクーニャンで寝るから、一樹くんはマリアちゃんと寝てね」


「ファッ?  ななな、なんで俺とマリアなんだ」


「あらぁ、だってこの間だって、ふたりでエッチな雰囲気だったじゃない。  じゃあね」


ティアナたちは、ニヤニヤしながら自分たちの部屋へと消えて行った。

俺の隣で、マリアがすっごく嬉しそうな顔をしている。


もし、これがエバにばれたら、ヤバイことにならないだろうか。

固まっている俺の手を引いて、マリアが部屋へと俺を連れて行こうとする。


『あーー もうどうにでもなれ!』


こうして、リベルク村の夜は更けて行くのだった。




第五十八話(崖っぷちのティアナ)に続く。

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