第55話五の塔に向けて



五の塔に向けて



さて、いくら強い冒険者であろうと、ハニートラップにかけられ油断したところを襲われて、命を失ったケースは山ほどある。

五の塔(誘惑の塔)は、そうゆうことにならないよう、誘惑に対する耐性を養う場所である。

そして、五の塔の守護者はサキュバスであった。

もっともサキュバスは悪魔であるため、五の塔の守護者がサキュバスの代わりをしているというわけだ。


そしてこの五の塔が、スケベな一樹にとって最大の難関になるのである。


・・・

・・


「なあ、ティアナ。  五の塔ってここからどのくらいかかるんだ?」


「ここからは、結構遠いわよ。 途中に大きな渓谷もあるし、そこを迂回しないといけないからね」


「そうなのか・・・」


「ええ、200mくらいの切り立った崖がずーっと並んでいて、とても通れるところじゃないしね」


「渓谷っていうことは、舟で行けそうじゃん」


「ちょっと正気なの? 川には信じられないくらい大きなワニが棲んでいて、あっという間に胃袋の中よ」


「それならさ、でっかくて頑丈な舟を作ったらいけるんじゃね」


「一樹くん、一人で行けばー。 体長が100mはあるワニだからねー。 どれだけ頑丈に作ったって一度に10頭くらいで襲われたら死ぬでしょ!」


「100mって・・  恐竜じゃねーか。  わーたよ。  迂回路で行けばいいんだろ!」


こうして、五の塔を目指しての旅が始まった。

まずは、アーレンの隣村まで行くのだけれど、途中にはだだっ広い草原があるらしい。

草原に生えている草の繁殖力が半端なくて、樹木が育たないのだそうだ。

だから、日影がなく砂漠並みに暑い。


「まったく暑くて敵わないな。  砂漠用の装備品を捨てなくてほんとに良かったよ」


「ポポは暑いのは苦手にゃよ~」


「はいはい。  それじゃこれなっ!」  俺は氷タオルを作ってポポに渡す。


「ありがとにゃっ」


「なあ、マリア。 マリアは空を飛べるんだろ」


「はい。 我の翼は強靭ゆえ、一樹さまがお望みなら何処へでも短時間でお連れいたします」


「だったら、五の塔までひとっ飛びじゃん」


「それは、この修行の旅の定めとして、禁止されております」


「なんだよそれ。 いったい誰が禁止したんだよ」


「それは、この世界を御造りになられた大神さまによってです」


「ちぇっ、ったく権力者って禄でもないやつが多いよな」


「しーーっ!  一樹さま。 今のが大神さまの耳に届くと厄介なことになります」


「へへん、上等だぜ。 受けてたってやろうじゃないか」


「全裸で町や村を引き回されてもでしょうか?」


「えっ? いや・・ それは嫌です。  ごめんなさい大神さま。 許してください」


「二人は、ほんとうに仲がいいわね~  まさに青春アオハルって感じだわ~」


俺たちのやり取りを見ていたティアナが、話しに割り込んで茶々を入れる。


『仲がいいってか、夫婦なんですけどね』


「ところでさ。  次の町ってどんなところなんだ?」


「えーっと。  リベルク村って魔物が棲んでる村よ」


「へぇー  魔物がたくさん出没するんだ」


「いいえ、魔物がつくった村なのよ」


「っていうことは・・」


「そう、魔物しかいない村よ」


「いや、それって大丈夫なのか?」


「魔物にもいろいろあるの。 リベルク村に住んでいる魔物たちは、人間にしか見えない姿をしているわよ」


「なんか、おっかないなぁ」  <おっかないは方言で恐ろしい・怖いです>


「そんなに気にしなくても、平和な村よ。  食べ物も美味しいし」


「ふ~ん」


「ティアナさま、食べ物って・・お肉もあったりしますか?」


「あらあら、マリアちゃんはお肉が好きだったのね~。  リベルク村は牧畜が盛んなの。 お肉も最高に美味しいわよ」


「やったぁ♪」


『もしかして、丸飲みっスカ?』


「違います!」


「いや、やっぱ心がよめるんかーい」


「一樹くん、何?」


「いや、ティアナには関係ない話しだよ」


「まあ、エッチなお話しなのね?」


「だからちげーって!」


こうして、大草原の1日目が過ぎて行ったのであった。



第五十五話(リベルク村)に続く。






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