第52話預言者とガイド
預言者とガイド
俺は、いなくなった らくだ と荷物を探すために、精霊の指輪を嵌めて預言者を呼び出すことにした。
「いでよ、預言者トラス」 ほれっ右上をポチッとな。
ボンッ
「マスター お呼びでしょうか」
「さっそくだけど、俺たちの荷物を載せた らくだ が居なくなったんだけど、どっちに行ったか知りたいんだ」
トラスは俺の言葉を聞いて、大きな杖を振りかざすと、何やら呪文のような言葉を唱えた。
すると杖が光輝き、トラスの瞑った目が、大きく見開かれた。
「汝の希望は、この方角へ向かえばきっと叶うであろう!」
そして、その杖は北西の方角を指した。
「わかった、ありがとう」
らくだは、歩く速度は早くない。 今からでも急げば追いつくことは出来る。
「おい、みんなお告げの方向はあっちだ! 急いで出発するぞ!」
おぉーーーっ!
こうして、オアシスの浄化水のみを持って、俺たちは、らくだを追うことにした。
「待てよ・・ 砂漠の中って目印がないから迷い易いよな・・」
『ちょっと不安もあるが、こんな時はガイドが必要じゃないか』
俺は、今度は指輪の左下のボタンを押した。
ポムッ
「マスター お呼びでしょうか」
キャーーー アンソニーー ひさしぶりぃーーー
「なんだよ、出て来たとたんに黄色い声を出すなって!」
「だってぇ・・ アンアソニーはカッコイイんだもの♪」
ポポも喉をゴロゴロ言わせて、尻尾もクルクル回す。
「アンソニーくんって、何か強力なフェロモンでも出してるのか?」
「いいえ、そのようなものは出ておりません」
「そっか、まあいいや。 あのさ、この方角に俺らの らくだ が逃げたらしいんだ。 だから迷わないように道案内を頼むよ」
「かしこまりました」
アンソニーの後について歩き始めるが、すぐに俺を押しのけてティアナがアンソニーの横を歩き始める。
するとクーニャンもその隣を、ポポも更にその横をと、なんだか横一列に広がって歩きだし、校門近くの生徒の登校風景のようになる。
「なんだよあれ」
「一樹さま、マリアが横におりますから」
どうやらマリアは他の女子たちが俺の傍からいない方が嬉しいようだ。
「一樹さま、マリアと手をつないでください」
「ぉ?・・おぅ」
これで益々、登校時に手をつないで歩いているカップルが追加されたみたいになった。
アンソニーは長身でイケメンだ。 長身なので歩くスピードも速いのだが。
「アンソニー もっと急いでくれないと追いつけないぞ」
俺は更にスピードアップを要求する。
「わかりました、では!」
アンソニーは、いままでの倍のスピードで歩き始める。
そのスピードは、まるで競歩のようだ。
「これなら直ぐに追いつくだろう」
「はい。 でも手をつないでいる時間が短くなってしまいますね」
マリアは、胸をユサユサ揺らしながら恥ずかしそうに俺を見た。
『やばい! ジュニアが反応しそうだ。 こっちは本物のフェロモンだよ』
小一時間もしたころ、遠くに俺らの らくだ らしき姿が見えた。
だが、その らくだ を引いている男たちもいる。
「マリアの目なら、遠くでも見えるだろ。 どんなやつらか分かるか?」
「はい、男は3人で人相は悪いですね。 おそらく砂漠によくいる盗賊の類たぐいかと思います」
「ふ~ん、やっぱりそうなのか。 あれは落とし穴で間違いなかったってことだな」
「さきに行って懲らしめてきましょうか」
「いや、今回は女性陣に任せよう!」
「はい」
「おーい お前らー この先に俺たちの荷物を盗んだ奴らがいるから、取り返してこいよーー」
アンソニーにくっついて、かなり前を歩いているティアナたちを焚きつける。
「あいつらも目がいいはずだから、気づいて・・ いなかったか・・」
そう、アンソニーばかり見て前方なんて、見てやしなかった。
「おーい。 行かないとアンソニーを指輪に戻すからなー」
すると、みんなダッシュで男たちの方に走って行った。
後は言うまでもない。 男たちはポポとクーニャンにボコボコにされる。
こうして俺たちは無事に荷物と らくだ を取り返すことに成功した。
用が済んだので、アンソニーを指輪に戻す。 それポチッとな。
「ああっ! 一樹の嘘つき! あたしのアンソニーを返して!」
「いや、どうせもうすぐ制限時間切れだし・・」
「時間いっぱいまで待ってってくれればいいじゃにゃいか!」
「そうアルよ!」
そして、この後俺もボコボコにされたのだった。
トホホ
第五十三話(アーレンの町)に続く。
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