第51話砂漠の中の罠
砂漠の中の罠
この砂漠には小さなオアシスが点在している。
オアシス同士の間隔が短い場合もあれば、死ぬほど遠い場合もある。
それでも砂漠を旅する者たちにとっては、オアシスの存在はとてもありがたい。
それに不思議なことには、オアシス内には魔物が出ないのである。
なので、疲れを癒すのには好都合な場所なのだ。
ただし、人が住んでいるオアシスとなると、どうやら3ヶ所しかないらしい。
つまるところ無人のオアシスでは、水以外は補充できないということだ。
そして、俺たちはこのオアシスで大変なことに巻き込まれる。
・・・
・・
・
「暑い~ もうだめにゃぁ」
ポポが、あっちへよろよろ、こっちへよろよろとしだした。
「なんだポポ、お前熱中症じゃないのか?」
「うにゃぁ」
「ほら、これでも首に巻いておけ」
俺は、タオルに水を浸み込ませて、ポポに渡してやる。
「温かいタオル、ありがとにゃ」
「んっ? 待てよ。 水で濡らしてあるってことは・・」
俺は、すぐにタオルに氷結魔法をかけてやる。
「にゃっ 急に冷たくなったにゃ!」
「よしっ、これだ! なんで今まで気づかなかったんだろう」
これで砂漠の旅も楽になる。
更に風魔法を使えば、いま流行りの ペルチェ素子ネッククーラーと同じになるじゃないか。
早速、みんなにも氷タオルを作ってあげて、それを渡しながら風魔法を付与してやる。
「一樹くん、これすごいわ♪」
「極楽アルネ!」
「へへん しばらくは俺さまを、神と崇めるがよい!」
「一樹は神様にゃよ」
こうして今までの旅が嘘のように快適になったのだった。
しかし、魔法で食料は出せないので、それはオアシスだよりになる。
そして、遠くに次のオアシスが見えて来た。
・・・
・・
・
「一樹さま、このオアシス何か様子がおかしくないですか?」
隣を歩いていたマリアが、辺りを警戒しながら見回す。
「そうだね。 何かへんだ。 いったいなんだろう?」
ザザッ
「あっ! 落ちるアルよーーー」
突然クーニャンが、大きな穴に落ちてしまった。
「これは、もしかして落とし穴なのか?」
ズボッ
「きゃー 助けてぇーーー」
女神なのに、ティアナも落ちた。
「ポポ、動くなっ!」
ズッポン
「にゃぁーーー」
みんな次々に別の穴に落ちて行く。
「一樹さま、後ろ!」
ズサッ
「えっ? うわーーーっ」
俺は、迂闊にも一番大きな穴に落っこちてしまった。
「一樹さまーーー!」
穴の底に落ちるまでに、飛び込んで来たマリアに助けられる。
「ちくしょー。 こんなに沢山穴を掘りやがって、いったいどこのどいつの仕業だ!」
マリアに抱きかかえてもらいながら、穴から出てくると・・・
「あれっ? らくだがいないぞ!」
「ほんとうですね。 どこにも見えません」
「しまった、もしかして盗まれたのか!」
荷物を積んだ、らくだが1頭もいなくなっている。 1頭には大サソリの干し肉も積んでいたのに。
「よし、辺りを探してみよう。 もしかしたら見つかるかも知れない」
まだ、盗まれたとは限らない。 俺たちが穴に落ちたので、驚いて逃げただけかも知れない。
「一樹、これはいったいなんなんだにゃ?」
ティアナ以外は、そうそうに穴から這い上がって来た。
「穴に落ちている間に、らくだがいなくなったんだ。 お前らもその辺を探してくれ」
「わかったにゃ」
「一樹、干し肉もなくなったアルか?」
「そうだよ。 1頭もいないんだ」
「アイヤー それは大問題アルネ」
・・・
・・
・
そのころ、オアシスから少し離れたところを、らくだ を連れた3人組の男たちが歩いていた。
「兄貴、みごとに成功しましたね」
「サンドスネークが掘った穴を利用した落とし穴は、最高のアイデアだっただろ!」
「ええ、穴を掘る手間もいっさい無しで、楽にこれだけ手に入れられるなんて病みつきになりそうです」
「そうだな。 またあの穴を再利用すれば、何回でもいけるからな」
「でも兄貴、オアシスなのに何んでサンドスネークが、穴を掘れたんですかね」
「あのオアシスは、他のと違って地下に魔素が溜まってるんだと」
「なるほど、それであのオアシスの水を飲むと腹を下すんですね」
「ああ、初めて立ち寄った時は、全員3日間苦しんだ。 まったく最悪なオアシスだぜ」
「あいつら、今ごろオアシスの水を飲んでるんでしょうね。 なにせ あいつらの水はここにあるんですから」
ひげ面の男が革袋に入った水をうまそうにゴクゴク飲む。
「ハハハ やつらが腹を下したら本当に踏んだり蹴ったりだな」
・・・
・・
・
その頃、喉が渇いた俺たちは、仕方なくオアシスの水を飲もうとしていた。
「一樹さま、その水には微弱ですが魔素が含まれています。 飲んではいけません!」
マリアが水を飲もうとする俺らに注意する。
「なんだって、もう俺たちの持って来た水は無いんだし、いったいどうすれば・・・」
「ふふふ、一樹くん。 優秀な女神さまがパーティーにいるのを忘れていない?」
ダメ女神が自分のことを優秀女神アピールしてくる。
「ティアナが、この水をなんとかできるっていうのか?」
「そうよ。 わたしは、浄化魔法が使えるのよね」
「へぇー ティアナが役に立つときもあるんだな」
「なによ、失礼ね。 そんなこと言うなら一樹くんの水だけ浄化しないからね」
「ごめんなさい。 それだけは勘弁してください」
こうして、水だけはなんとか飲むことができた。
あとは、いなくなった らくだと荷物を探さなければならない。
第五十二話(預言者とガイド)に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます