第50話サンドスネークと大サソリ
サンドスネークと大サソリ
「いやー やっぱりあっちいなーー」
汗も出たそばから蒸発し、乾いた塩だけが残る。 色のついた服を着ていたら塩だらけで、きっと驚くことだろう。
「ポポはオアシスにもどりたいにゃ」
ポポは、歩き始めて30分もしないうちに弱音を吐く。
「ティアナは女神なんだから、雨ぐらい降らせられないのかよ」
「無茶なことを言わないで。 クーニャンだって神様なんだし、出来ないものはたくさんあるわよ。 女神は万能じゃないの!」
「ちぇっ、たーく使えない女神さまたちだぜ」
「ねぇ、暑くてイライラしてるんだから、もう大人しくしててよね!」
どうやら本気で怒っているようなので、ティアナから距離をおくことにする。
「マリア、体調はどう? 辛かったら早めに言ってくれよ」
「一樹さまは、お優しいのでマリアはとても嬉しいです♪」
「う、うん」
マリアは照れながら腕を絡めてくるが、正直暑い。
嘘か本当かは分からないが、竜は灼熱のマグマの中でも平気だと聞いたことがある。
この大砂漠の中で涼しい顔をしているのは、マリアだけだ。
ドォォーーン
突然、俺たちの後ろで砂柱が上がる!
荷物を積んだ1頭の らくだ がその砂柱に巻き込まれ、空高く跳ね飛ばされた。
そして、そのまま落下して来たところを巨大な蛇が口を開け、そのまま一飲みにする。
ズザザザーーッ
その蛇は、すぐさま砂の中に潜り、スルスルと何処かに移動して行った。
「なんだアレは!」
「一樹さま。 あれはサンドスネークです。 まだ他にいるやも知れません」
「くそっ、大事な水と食料が・・」
「いま、マリアが取り返して参ります!」
「いや、いいから。 それよりも他の荷物が心配だ」
「はい」
「これ以上、荷物を失うとオアシスまで戻らないとならなくなる」
水も食料も分けて運んでいたので、致命的では無いが、かなりの痛手である。
それにしても、予想以上に魔物が多く出没する。
キャーー
「今度はなんだ?」
後方に気を取られていると、前を歩いていたティアナたちから悲鳴があがる。
ズズズズッ
大きなハサミと毒のある尾を持つ、真っ黒な大サソリが2匹、行く手を塞いでいるではないか。
「おいおい、あんなハサミに挟まれたら、体が真っ二つになっちゃうぞ!」
この砂漠に出る魔物はスケールが大き過ぎて、ほんとうに戦い難い。
「ポポ、特大ファイアボールを打ち込め!」
「わかったにゃ。 任せておけにゃ!」
ポポが放ったファイアボールに、俺もファイアボールを合わせて撃ち放つ。
ギギギィーー
大サソリにファイアボールが命中し、サソリの体が真っ赤に変色する。
「あれっ? 焼きガニみたいな いい匂いがするな」
「ほんとうにゃ。 一樹、これは美味いやつかもしれないにゃ」
「おう、それじゃあ、ファイアボール集中攻撃でいくぜ!」
この後、ファイアボール3発ほどを喰らわすと、大サソリは美味そうに焼き上がった。
「これって、毒は尾の部分だけだよな?」
「はい、一樹さま。 わたしも生で食べたことはありますが、焼くと更に美味しそうになりますね」
「そうだね。 さっきのサンドスネークに食べられた食料分以上の量だな」
「余った分は、干して持って行けばいいですよ」
「それにしても、甲羅が堅そうだなぁ・・ おい、まだ活躍してないクーニャンさん。 甲羅を割ってくれないかな」
『こういうのは、格闘家の強力なパンチを打ち込めば、割れるんじゃないか』
「わかたアル! みているアルよ!」
テヤーーッ
ドンッ バキバキッ
「おぉ、お見事~」
「ふんっ どんなもんアル」
割れた甲羅からホカホカといい匂いの湯気が上がる。
「うひょーー うまそうーー」
みんな大サソリによじ登って、ムシャムシャと食べる。
「こりゃぁ カニだわ!」
「うまいにゃ!」
この後の砂漠の旅でも、大サソリが出るとみんなが涎を垂らすようになったのは言うまでもない。
第五十一話(砂漠の中の罠)に続く。
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