第49話できちゃった?



できちゃった?


「一樹さま。 申しわけございません。  少々気分がすぐれないので、本日はお休みをいただけませんでしょうか」


「んっ? マリアが体調不良なんて珍しいな。 いいよ、何かあったらサットンに頼むから、ゆっくり休んでよ」


「あの男にですか。  ならば、お休みの話は無かったことに」


「いや、分かったよ。  何かあっても自分で対処するからね。 ほら、そこのベッドで横になってて」


「すみません、一樹さま。  そうさせていただきます」


『いやー 昨晩は激しかったからなぁ・・ 体に無理がきちゃったのかもな~』


そうなのだ。 昨晩俺はマリアに襲われて、いきつくところまで暴走してしまったのだ。

このことがエバに知れたら命がないかも知れないが、あんなエッチな体を見せられたら理性など、どこかに吹き飛んでしまう。


・・・

・・


次の日になるとマリアは、いつも通り元気になっていた。  やはり処女の体はデリケートだったのだろうか。

俺たちは、朝食をとるためにポポたちと合流し、オアシスの中心地へと向かった。

オアシス自体大きくないので、20分も歩けば町の中心に着いてしまう。

そこには、数軒の食堂や居酒屋があったが、開いていたのは一軒だけだった。

その食堂は、東南アジアにあるような店の外にもテーブルが並んでいるつくりで、結構にぎわっている。


涼しい風が吹いていたので、俺たちも外にあるテーブル席に腰掛けた。

周りのテーブルからは、様々な料理のいい匂いが、風にのって流れてくる。

テーブルの上の小さな紙に書かれたメニューをみんなに見せながら、注文する料理を考える。

メニューには料理の絵もかかれていたので、どんな料理なのかはだいたい分かった。

麺料理、肉、魚料理あたりは想像できるが、中には何の絵なのか分からないものもあった。


「ポポは魚料理にするにゃ」


「わたし肉料理アル。 タンパク質は筋肉にかかせないアル」


「みんな決めるの早いな。  マリアはどうする?」


「わたしは食欲がないので、このスープだけにします」


「そうか。 まだ完全に治ってないの?」


「はい。  すみません」


「いや、謝ることないって。  むしろごめん。  昨日は無理なことして」


「いえ、ぜひまたお願いいたします」


ぶはっ  俺は飲んでいた水を思いっきり吹いた。

結局俺は麺料理を頼み、それぞれが出て来た料理を微妙な顔で食べた。

一言で言えば、食べられないことはないくらいの変な味だった。


・・・

・・


竜は長寿な生き物である。  また、生物としては最強種なこともあり群れはつくらない。

そして一部を除き孤独を好む傾向にある。

このような理由で、今はその個体数は激減しつつあるのだ。

しかし種の繁栄という本能が消えたわけではない。

雄も雌も何十年に一度の頻度で、発情期がやってくる。

それでも、パートナーに巡り合える機会は滅多になく、個体数は減少の一途をたどっていた。


そんな中、竜は人の姿に変化へんげすることで、人間とも交尾できることを知る。

人の数は男も女も圧倒的に多い。 なにせ人は毎日が発情期のようなものだから、人口はうなぎ登りに増える。

一部の男は10分に一度はエッチなことを考えているらしい。  まあ俺は一時間に一度くらいだけどね。

そしてエバやマリアは、俺と交尾してしまったというわけだ。


・・・

・・


俺は知らなかったのだけれども、竜はとても妊娠しやすい生物らしい。

その理由は少ない個体数ゆえ、巡り合ったら確実に子孫をつくらなければ絶滅するからだ。

ちなみに、うさぎの妊娠率は99%で、ほぼ一発妊娠である。

そして、エバもマリアも一度で妊娠していた。 Oh my God!


竜は、妊娠しても出産時期は、いくらでも調整できるらしい。

それは、子どもを育てる環境が大きく関係している。

例えば周りに魔物が多い場合などは、安心して子育てができない。

その場合は、安全に子育てできる環境が整うまで待ってから出産するのだ。


後から分かったことだが、マリアはエバが出産した後に、俺の子を産もうと考えていた。

それはほかでもない、第二夫人の立場と使用人という立場の両面からである。

そしてエバも、俺が冒険の途中であることで、出産は当面しないつもりだった。

竜は、大奥の女たちより、よほど奥ゆかしかったのである。


・・・

・・


その日の夕方になって、ティアナがオアシスまで戻って来た。

何だか元気がないと思ったら、スマホに表示されている例のパーセンテージがゼロになっていたためだと分かった。


「あれだけ頑張ったのに振り出しに戻るなんて・・・もう立ち直れないかも知れないわ」


「っていうか、その%表示って結局なんなの?」


「アハハ 100%になれば受験資格が得られるのよね。  でももう絶望的かも」


「へぇ、そうなんだ。  受験資格かぁ・・  まだ可能性が残っているなら頑張ってみればいいじゃん。  俺も応援するぜ!」


「あ・・ありがとう」


ティアナがシクシク泣き出したので、あとはポポたちに任せ、宿に戻ってから2人部屋を追加で頼んでおいた。


・・・


翌朝、ティアナがめちゃくちゃ元気になっていて驚いたのだが、クーニャンに聞いたところ、受験ライバルが大きなミスをやらかして、そいつもなんか0%になったらしい。

人の不幸を喜ぶ女神さまって、ありなのか?


今日は、このオアシスを出てアーレンへと出発する。  またあの灼熱地獄と巨大な魔物のいる砂漠へと・・・



第五十話(サンドスネークと大サソリ)に続く。

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