第43話アンソニーとオリビア
アンソニーとオリビア
今日から俺たちのパーティーは、3階層に挑む。
2階層では、強い魔物に苦戦したが、3階層はそれ以上に難易度が高いはずだ。
俺はみんなに精霊の指輪の説明をしてから、さっそくガイドを呼び出すことにした。
ただし、サットンが言ってたMAX3時間の制限を意識すると、ガイドは道の分岐など迷いそうなときに頼るのがよさそうだ。
俺は指輪の左下のボタンを軽く押した。
すると、背の高いイケメンの若者が指輪からシュッと出て来たではないか。
俺のハーレムパーティーには、要らないキャラだなと思ったのだが。
キャーー カッコイイーー
女性陣から、聞いたことが無いような黄色い声が飛び交う。
ダメ女神は写メを撮り始め、ポポは膝の上に登ろうとし、クーニャンはチャイナドレスの切れ込みから太腿を見せるありさまだ。
このガイドは、パーティーをダメにする奴だと俺は即判断した。
指輪のボタンをもう一度押そうとすると。
「お、お待ちください。 まだ名乗ってもいませんのに。 それに、わたしはダンジョンのような迷路の案内には欠かせない存在ですよ」
「いや、メンバーが血迷っていますので、速やかにお引き取りいただければと思います」
「ちょっと待ちなさいよ。 勝手に決めないで!」 ←ティアナ
「そうだにゃ。 このフェロモンは心地いいにゃよ」
「アイヤー カッコイイお兄さん。 お姉さんといいことするアルよ」
「こいつらー イケメンだとメチャ態度が変わるやん」
「そうよ、母性本能がくすぐられるのよ。 誰かさんと違ってね」
『ちっ こんなことならサットンによく聞いておけばよかったぜ』
「しかたがないな、名前だけ聞いておこうか!」
「はい、マスター。 わたしは、アンソニーと申します。 この世界の道や絶景、グルメなど何でも最高のご案内をいたします」
キャーー アンソニーー
キャー カッコイイーー
こっち向いてニャーーー
『いったいなんなんだ、こいつら』
「はいはい、アンソニーさんね。 それじゃあダンジョンで道に迷ったら、よろしく頼むわ」
そして即、ボタンを押す。
「痛てっ! 誰だ石投げたの!」
「あたしのアンソニーを返してよ!」
「いや、アンソニーはお前のものじゃなくて、俺のものだから!」
何だか自分で言ってて、おかしな誤解を招きそうなセリフを放ってしまう。
「何よ、バカ、悪魔!」
『今度は悪魔呼ばわりだよ』
「お前らいい加減にしろよな! これから3階層攻略ってときによ!」
「ポポはアンソニーがいなきゃ、いかないにゃ!」
「だーかーらー 指輪の制限で連続3時間しか持たないんだよ! 分かるか?」
「わからないにゃ」
「それじゃあ、俺とエバだけで行くから。 あと道に迷ったらアンソニーに頼むから、お前ら留守番でもしておけ!」
「にゃっ? 道に迷ったらアンソニーに会えるのにゃ?」
「迷ったらな!」
「行く行く、あたいも行くにゃ」
「・・・ もう勝手にしやがれ」
こうして何とか3階層の探索が始まった。
2階層とはガラリと変わって、3階層の内部は まるで巨大な鍾乳洞のようだった。
天井までの高さは、軽く100mを超えるだろう。 横幅も広い。 例えるならばドーム球場みたいだ。
そしてその中に、大物が潜んでいた。
「なるほど、雑魚はみんなコイツが喰っちまったってことかよ」
「こんなのに勝てる気がしないわね」 ダメ女神ティアナは、いつの間にか最後尾まで下がっている。
ポポも恐怖からなのか、尻尾の毛が逆立って、ものすごく太くなっている。
『これは、ヒーラーを呼び出して置いたほうがいいだろうな』
俺はすぐさま、左上のボタンを押す。
「マスター、道に迷われましたか?」
キャーー アンソニーー 素敵ぃーー♪
「あれ? 間違って左下を押しちゃった」
即、ボタン押下っと。
「ああぁ 何するのよ!」
「はいはい、左上でしたっと」
俺に呼び出されて、ヒーラーがボンッと現れる。
「初めましてマスター。 ヒーラーのオリビアちゃんデッス♪」
「はぁ・・ この指輪が埋もれてた理由わけが、なんだか分かったような気がしてきた」
「戦闘中にヒールが必要な人は、オリビアちゃんが指示なしで全て回復して差し上げるから、安心してネ」
「おぅ・・ よろしく頼むぜ」
「ハイ♪」
『まあ、こんなんでも居ないよりはマシだろう』
「一樹さま。 あいつは、わたくしにお任せください」
「いや、どんなヤツか見極めるまでは、手をだしちゃダメだ」
『いくら最強の竜の娘とはいえ、どんなヤツか分からない魔物に嫁を戦わせては漢が廃すたるってもんだぜ』
「あの魔物は、バジリスク。 毒蛇の王と呼ばれしものです」
「バジリスク・・・ って、エバは知ってたのか」
「はい、アレの毒液を浴びた者は、即死するか石化します」
「いや、オリビアの出番無しじゃねーか」
「一樹さま。 心配しないでください。 我の鱗はアヤツの毒液など全く効きはしませぬゆえ」
「いやいや、もしかして竜の姿で戦うつもりなの?」
「あっ・・・」
「マスター オリビアちゃんは、毒の無効化も出来ますよ」
「いや、即死してからじゃ遅いでしょ!」
「いやですね。 無効化の魔法を最初にかけてから戦うのですわよ」
「そういうことか。 それじゃ、俺もお宝のサンダーブレードを使ってみますか」
そいつは2階層で唯一ゲットしたソードである。 なぜだか’サンダーブレード’って札が付いてた一品なのだ。
強そうな名前なので、なんとかなるだろう。
「おーーい。 お前らーー いったん集合だーー こっちに来ーーい」
『ちくしょー あいつらいつの間にあんなに遠くまで行ったんだよ』
「これから、オリビアが毒を無効化する魔法をみんなにかけてくれる。 有難く思えよ!」
「一樹が偉そうにしてる意味がわからないにゃ」
「ちぇっ こういうところだけ口が達者なんだからよ!」
「ふん だにゃ」
「いいか、毒対策が出来たんだから、目いっぱい活躍しろよな!」
「わかったアル。 わたし、これ使って戦うアル」
「おお、それはゴッドアックスじゃねーか」
「ちょっと重いけど問題ないアルよ」
「よしっ、それじゃあ行くぜ!」
「オオーーーーッ!」
こうして、俺たちパーティーとバジリスクとの長い戦いが始まったのだった。
第四十四話(スマホをなくした女神様)に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます