第42話指輪の誤解
指輪の誤解
2階層の宝箱に入っていた緑色の石が付いた指輪は、嵌めた者が4精霊を従えることが出来た。
精霊は、執事、ヒーラー、ガイド、プロフェット(よげんしゃ)の4精霊である。
最初に押したボタンで、執事のサットンが現れたのだが、まだ宝物の仕分けが済んでいなかったので、俺は一旦精霊の指輪を右の人指し指に嵌めて、作業を続けた。
日が暮れたころ、ようやく宝物の仕分けが終わり、買い出しに出かけていた女性陣も戻って来たので、仕訳の結果と分配方法の説明をする。
「分配方法の説明は以上だけど、何か質問はあるかな?」
「魔道具にゃんだけど、二人以上が欲しい場合は、どうすればいいのにゃ?」
「その時は、当事者間で決めてくれ。 ジャンケンでもいいし、くじ引きや話し合いとかね」
「決闘でもいいのかにゃ?」
「いやいやダメでしょ! 勝っても負けても後味が悪いじゃん」
「そうかにゃ?」
「そうだにゃ。 って猫語尾がついちゃったじゃねぇか!」
なんだかんだで、宝物の分配は大きな問題もなく無事に終わり、各自が部屋へと戻って行った。
「ところでエバはどうして宝物を貰わなかったの?」
俺とエバだけが残った部屋で、エバが自分に分配された宝物は要らないから、みんなで分けてと分配を辞退た理由を聞いてみた。
「一樹さま。 エバは既に数えきれないほどの財宝を持っておりますので、これ以上頂く必要がないのです」
『うぉっ、これって一度でいいから言ってみたいセリフじゃん』
「そ、そうなの?」
「はい。 それにエバはどのような財宝よりも尊い、一樹さまを得ましたゆえ・・・」
「あはは さすがに照れるな・・・ ありがとうエバ」
俺は、照れながら頭をかいたのだが、そのとき右の指に嵌めた緑の指輪にエバが気づいたようだ。
「一樹さま。 その指輪はいったいどうされたのですか?」
「ああ これか。 これは・・」
俺は精霊の指輪について説明しようと思ったのだが、エバの顔は明らかに不機嫌そうだ。
「あれ? エバさん。 何か怒っています?」
「竜族の間では、右の人指し指に指輪を嵌めるのは、離婚したいという意思表示です」
「なんですと?」
「一樹さまは、エバのことをそのようにお想いなのでしょうか」
「いやいや違う違う。 それは誤解だよ。 竜族の決まりごととか知らないし」
「では、なぜ故に指輪を嵌めているのでしょう」
エバが、あまりに近くまで迫ってくるので、めちゃくちゃ焦る。
「そ、それはこれから説明するから、いったん落ち着こうね」
もし今、エバが竜の姿に戻ったら、見ただけで百回は死ねるだろう。
俺はエバを刺激しないように、ゆっくりと順を追って丁寧に説明をした。
「なるほど、理由は理解しましたが、指輪を右の人指し指に嵌めるのは不快ですので、何とかしてくださいませ」
「ああ、分かったよ。 ごめんな」
俺が指輪を外して、しょんぼりしていると、エバが突然抱きついて来た。
「一樹さま、エバは本気で責めたのではありません。 申しわけございません」
「いや、分かってるって。 だからソファアに押し倒さないで。 お願い」
もう、男女逆転状態になりそうで怖いので次回へ続く。
第四十三話 アンソニーとオリビアに続く。
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