第41話宝箱



宝箱



今日は三の塔ダンジョンの2階層から攻略を開始する。

1階層の終着点でゲットできる魔石パスポートを使うと、2階層の入口まで簡単に進むことができるのだ。

2階層から宝箱の中身もグレードアップするのだが、ミミックがより狂暴化するので厄介だ。

なので、宝箱を見つける度に 誰が蓋を開けるか、ジャンケンで決めることになった。


最初に見つけた宝箱は、クーニャンが蓋を開ける。

なんと中身はチャイナドレスだった。 昨日は服を破かれたのでちょうどいいタイミングである。


「アイヤー アタシが欲しかった色とちょっと違ったけどこれもありヨ」


次の宝箱は狂暴なミミックで、ポポは避ける間もなく頭をかじられる。


「わわっ、大事な耳がギザギザになったにゃぁー」


2階層の魔物は、ゴーレムや死神、ゾンビなど、あまり戦いたくない相手が多い。

なかでもメタルナイトは、対ソード性や対火炎系魔法に優れていて倒すのが大変な相手だ。

メタルナイトが複数現れた場合は、ためらわずに撤退するのが最善策である。


もしこいつを倒すのであれば、電撃系魔法を使うか水系魔法で沈めるかなのだが、狭いダンジョンでは味方にも被害が出てしまう場合があるので注意が必要だ。

また、硬い鎧を纏っているので、クーニャンの鉄拳やポポのような猫パンチでは歯が立たない。


そして、俺たちのパーティーは、2階層を制覇するのに、何と3日もかかってしまったのだった。

しかし苦戦したという事は、各自のレベルも上がったし、かなりのお宝もゲット出来たので、悪い事ばかりではない。


「にゃあ、そろそろ持ってきた食料も残りが少なくなってきたにゃよ」


ポポがやたらとぽっちゃりしてきた、ティアナの腹を凝視しながら呟く。


「あらあら、それなら一旦食材を仕入れに戻らないといけないわね」


ティアナは食べることとなると反応が早い。


「そうだな。  2階層のパスポートも手に入ったことだし、そろそろ柔らかい布団でゆっくり眠りたいから戻るとするか!」


「賛成アルー♪」


こうして俺たちは村に戻り、食材の買い出しと疲れを取るため数日の間、宿屋に滞在することにした。

この間、買い出しは女性人に任せ、俺はゲットしたお宝の確認と仕分けを行っていく。

一旦、金貨、宝石、魔道具、ガラクタなどに仕分けしたあと、それぞれの詳細を見ていく。

金貨や宝石などは、なるべく公平になるように分けてから、くじ引きで順番を決めて好きなものを順番に取っていくことにした。

なお魔道具は、使い手との相性もあるので、話し合いで分ける。


「おや? これは・・ なんだろう?」


俺は仕分けの最中に、今まで見たことがないような輝きを放つ緑色の指輪を見つけた。


手に取ってじっくり見ると石の四隅に、Gショ〇クの腕時計に付いているボタンのようなものがある。

ボタンといっても、そんなに大きくはなく突起に近いかもしれない。

まぁ、そんなものがあれば、必ず押してみたくなるというものだ。


「ポッチっとなっ」


お決まりの掛け声で、右下の突起をプッシュしてみた。

すると・・・


「お呼びになりましたかマスター」


背後で男の声がして、死ぬほどびっくりする。


「な、なんだお前は!」


「わたくしは、指輪の精のひとり、サットンと申します」


「この指輪のか・・・」


「はい」


「っていう事は、残りのボタンにも?」


「はい、それぞれの精霊を呼び出すことが出来ます」


「驚いたな。  こんなお宝があったなんて」


「マスターに呼び出されるのは、300年ぶりです」


「前のマスターは亡くなったっていうことなのか・・・」


「そういうこともございましたが、指輪をはめている方がマスターですので、盗まれて売られたりしてマスターが変わられることもありました」


「残りの3精霊にも会ってみたいな」


「指輪に魔力量もございますので、一度に呼び出せるのは2精霊までです」


「へぇー。  そうなの」


「はい、もう一度突起を押していただくと、精霊は指輪の中に戻ります」


「ふ~ん。  四色ボールペンみたいなんだな」


「・・・」


「ああ、ごめん。 ボールペンなんて知らないよねww」


「わたくしは、執事のサットンです。  改めてよろしくお願いいたしますマスター」


「こちらこそ。  それで、残りの3精霊はどんなことができるの?」


「はい。 ヒーラーとガイドとプロフェットです」


「おぉっ。   ヒーラーがいるんだ。  最高じゃん」


「ヒーラーは、左上の突起で呼び出せます」


「ガイドって、あのガイド?」


「はい、ダンジョンなどでは迷うことが無くなり、便利かと」


「で、プロフェットは?」


「はい。 預言者でございます」


「予言とかなんだか怖いな・・」


「それぞれが出来る事は、本人たちを呼び出して詳しくお聞きくださるのがよろしいかと」


「ああ、そうさせてもらうよ。  ちなみにサットンは何が出来るの?」


「わたくしは、執事ですので家事全般とマスターのサポート全般になります」


「それは助かるな」


「あと注意していただきたいことが一つあります」


「うん」


「指輪の力を使う際には、制限時間がございます」


「3分間とか?」


「時間は使用するパワーに比例しますが、フルパワーですと3時間程度です。 あと次に使うのためには1日ほど空ける必要があります」


「3時間もあれば十分だと思うけどな」


「もし時間を過ぎてもご使用になりたい場合は、マスターの魔力を指輪に移していただくことで延長使用が可能となります」


「いや、そこまでは・・」


「他にご用がなければ、わたくしはこれで失礼させていただきます」


「ああ、ボタン押さなくてもいいの?」


「はい、本人の意思でも戻る事は可能です」


こうして、偶然見つけた緑色の指輪は、俺の右手の人指し指にはめたのだが、この時はこれが後で大事になるとは思いもよらなかったのだった。



第四十二話(指輪の誤解)に続く。

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