第40話雪合戦



雪合戦



ポポは寒さに弱い。 猫だからである。

此処はクワタム村。 現在の気温は、ティアナのスマホ情報によるとマイナス5度である。


もしかしたら三の塔の守護者は、極度の暑がりなのかも知れない。

三の塔は別名、財宝の塔と呼ばれ、宝物やマジックアイテムの入手が出来るダンジョンである。


村に着いてからポポは、宿から全く動こうとしない。


「おい、ポポ。  ダンジョンにお宝を探しに行くぞ!」


「あたいは寒くて、動けにゃいにゃ」


「しかたがないなぁ・・  それじゃあ体を温めるために、雪合戦でもやるか!」


「雪合戦って何んにゃ?」


「雪玉の投げ合いだよ。  相手チーム全員に雪玉を当てたら勝ちだ」


「面白そうだけど、外は嫌にゃよ」


「全力でやると、体がポカポカになるよ」


「ほんとうかにゃ?」


「おぅ、寒いのは最初だけだ」


こうして、ポポを何とか誘い出すことに成功する。


毎回同じチーム分けだと面白くないので、村の子供も誘って2チームを作った。

10人のチームと9人のチームで、バランスを取るため少ない方にクーニャンを配置する。

俺は今回、ティアナと同じチームで、エバは相手チームだ。

広場の所々に雪山を作り、隠れる場所も作った。

そして、大きな雪山はチームの本陣になる。

ここに旗を立てて、旗が取られたら負け、もしくは雪玉が当たって全滅しても負けとなる。

それぞれのチームのボスは、村の子どもにお願いして、俺らは全員が戦闘員だ。


「よし、雪合戦開始!」


俺の合図で、戦闘員が散って行く。

お互いの距離があるうちは、玉が届く前によけられる。 

また、玉を投げるたびに作っていると攻撃を受けやすくなるため、予め玉を何個か作ってから相手に近づいて行く。

そんな中で目覚ましい機動力を見せたのは、寒がりのポポであった。

なにせ、速すぎて玉が当たらない。


「みんな!  ポポに集中攻撃だ!」


そしてポポは、雪玉の飽和攻撃をくらう羽目になる。

ポポが近づく若しくは、玉を投げようとしようものなら、あちこちから一斉に玉が飛んでくる。


「よし、よし。  これでポポは封じたぞ」


しかし、あと二人 厄介なやつがいる。  クーニャンとエバである。

クーニャンはポポほどではないが、すばしっこいので、対ポポチームと対クーニャンの2チームに分かれた。

そして、クーニャンは俺たちの攻撃の前に、あえ無く敗れ去った。


引き続き、対クーニャンチームはエバに攻撃をシフトし、雪山に潜んでいいるエバに、山なりの高い玉を集中して投げた。

つまり隠れていても、頭上から玉が降ってくるというわけだ。

これに対して、口から炎を吐いて防御したエバは反則退場となる。

強豪メンバーの全滅により、これで俺らのチームが、俄然有利になった。

とはいえ、ポポとクーニャンにやられて、子どもの数は相手チームが若干多い。


ティアナは、雪山を利用しながら、敵の本陣に近づくも、あと一歩と言うところで転んで、雪玉の餌食となった。

まあ、ティアナには期待していなかったけど。

そして、俺は最後の特攻に出撃した。

雪山などに隠れず、ただひたすらに突進する。

飛んでくる玉は、反射的に左右にかわす。


そして、本陣の雪山まで辿りつき、山頂の旗を目指し登り始めたところで、ボコボコにされた。

大人全員が脱落して、ついに子どもだけの雪合戦となる。

そして俺のチームの子どもが全滅し、試合が終了。


その後、村の子どもたちの間に、雪合戦ブームが訪れたことは言うまでもない。


・・・

・・


体も温まったので、ダンジョンの様子を見に行こうという事になったのだが。


「そういえば気になってたんだけど、一樹くんたちって、どうしてあたし達より先にクワタム村に居たの?」


ダメ女神のティアナが、急に嫌なところを突いて来る。


「それは・・ 秘密だ!」


「えーー 気になるぅーーー」


「じゃあ、貸したお金の返済が済んだら教えてあげるよ」  そのころには絶対に忘れているだろう。


「わかったわ。  約束よ」


・・・

・・


ポポは体が冷えて来るとだんだん元気がなくなって来た。


「一樹は嘘つきにゃ。 こんなことなら宿の炬燵こたつで丸くなっていたかったにゃよ」


ポポの愚痴を無視しながら、20分ほど歩くとダンジョン(三の塔)の入口に着いた。

真っ赤な塔は、冬のイメージとは真逆の違和感がある。

この塔は地下がダンジョンになっていて、宝箱が沢山あるらしい。

ただしハズレの宝箱も多く、ミミックに食べられてしまう冒険者も出るらしい。

そして、だんだんとこのダンジョンを訪れる冒険者が少なくなってきている。


1階層は、珍しくゴブリンやスケルトン、ミイラ男など、そこそこ強い魔物が出没した。

それを雪合戦であっという間に負けたのが相当悔しかったのか、クーニャンが魔物の大半を倒してしまった。

ポポも地下潜ったため、外ほど寒くなくなり、少しずつ元気になってきている。


「浅い階層の魔物は、俺らの敵じゃないなエバ!」


「魔物は全て我が倒しますので、一樹さまは黙って見ていてください」


「いやいや、俺だって少しは活躍したいよ」


そんなやり取りをしているとエバが腕を絡めてきた。  ヤバイ、この体勢はオッパイが当たるんだよな。


『エバが竜の姿の時は、オッパイなんて見当たらないので、もしかしたら人の姿になった時のオッパイは偽物なのか?』


そんなことを考えていると、エバが俺を睨む。  もしかしたら、竜は心の中が読めるのかも知れない。


「あの~ エバさん。 顔が怖くなっていますけど・・・」


「はっ!  一樹さま、たいへん失礼しました」


『でも、こうやって腕をロックされてると魔物と戦えないよな』


・・・

・・


1階層では、宝箱を13個見つけた。

この中で5個がミミックだった。  ポポは尻尾を噛みつかれ、クーニャンは服を破られてブちぎれた。


その他の宝箱は、1階層なので中身がショボい。

なんとか1階層をクリアするも、夕方を過ぎているので、いったん宿に引き返すことにした。


そして、明日からは本格的なダンジョン攻略が始まるのだ。




次回へ続く

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