第38話勝利の女神



勝利の女神



夏の日差しはジリジリと肌を焼く。

その中で、みんな汗だくで試合を続けていた。


そして身体強化をした、女神ティアナは想像以上の活躍をする。

俺たちのスパイクは、ことごとくレシーブ若しくはブロックされた。


そして、ポポやクーニャンのスパイクも集中して俺を狙ってくる。


結果、1セット目は大差で俺らの負けだった。

この結果にエバは、メラメラと燃えていた。


第2セットは、ほぼ100%エバだけがコートを動き回って、僅差で俺らが勝利した。

つまり俺が足を引っ張っていたってことだ。  悲しい。

そして運命の第3セット。


三人は熱中症気味で、足元がふらつき始めている。

これはチャンスだ。  エバは暑さにはめちゃ強い。

俺はこっそり威力の弱いウォーターシャワーを使い、ミストを纏わせているので熱中症とは無縁なのだ。


そんな状況の中、俺とエバのスパイクは面白いように決まりだす。


そして、とうとうマッチポイント。

ティアナたちの顔は絶望感でいっぱいになる。

少々可哀そうになるが、これは勝負だ。


エバの強烈なサーブが、ティアナに向かって飛んで行く。

ティアナは最後に意地をみせ、うまくレシーブを決める。

その高く上がったボールをポポとクーニャンが同時にスパイクしようとして、空中で激突。


「フギャッ」

「アイヤー」


二人は虚しくコートへ叩きつけられる。


「やったぁ、俺たちの勝利だー」


俺とエバは再びハイタッチで喜びを分かち合う。


「く、くやしいにゃぁ」


「燃え尽きたアルよ」


「・・・」  ティアナはガックリとその場に膝から崩れ落ちた。


「まだよ・・ まだビーチフラッグがあるわ。  それに絶対に勝つのよ!」


「まあまあ、少し休憩しないとヤバイよ。  みんなフラフラじゃん」


「そうね、流石に疲れて動くのがつらいわ」  Fカップブラも汗だくで透け始めている。

プルプルと揺れるそのブラをチラ見していると、あることに気づく。


「おや?  三人ともお腹周りがスッキリしてないか?」


「ほんとだにゃ」


「アイヤー ほんとアル」


「運動ってほんとうに大事なんだな」  この思わぬビーチバレーの効果に俺も驚く。

もちろんティアナのだらしなかった体もだいぶ引き締まってきている。


・・・

・・


30分ほど休憩し、水分もしっかり取ったので、いよいよビーチフラッグの開始である。

全部で3本。 先に2勝した方が勝ちだ。

組み合わせは、くじ引きの結果


  1本目: 一樹 v/s ポポ

  2本目: エバ v/s クーニャン

  3本目: 一樹 v/s ティアナ


となった。


1本目、最初から俺に勝ち目はない。 圧倒的な差でポポが勝利した。


2本目、クーニャンも健闘するが、エバに3メートルは離されていた。


そして運命の3本目。


ティアナは、身体強化をもう一度おこなったようで、足の筋肉がエグイことになっている。

だが、俺も旅に出てからずっと鍛えて来た。  ここで負けるわけには行かない。


「準備はいいかにゃ?」  スターターは1本目勝者のポポが担当する。


「おう。 いつでも来い!」


「3・・2・・1・・ ゴーーッ!  にゃにゃ!」 


スタートから15mまでは、ほぼ互角。 横目でティアナを意識しつつ、前方の旗を目掛けて爆走する。


が、ティアナが、じりじりと前に出て来る。


「くそっ 負けてたまるか!」


俺は最後の勝負にでる。 旗を目掛けてダイビングジャンプ!  右腕をこれでもかと伸ばす。


まるでスローモーションのように旗が近づいて来る。


バッ 


旗を握ると同時に砂が大量に舞い上がる。


「やったにゃ!  ティアナの勝ちにゃ!」


「なんだって?」


どうやらティアナの方が、わずかに早く旗を取ったらしい。


「俺があのダメ女神に負けたのか・・・」


しょげる俺の横で、三人が抱き合って喜んでいる。


「一樹さま。 頑張りましたね。 エバは旦那さまのこと、誇らしく思います」


「エバ・・・」


俺はエバの胸に顔を埋うずめ、慰めのパフパフをしてもらった。



・・・

・・


ここは、パルマ村の一件宿。

今は、サマーイベントの打ち上げの最中である。

村の漁港で獲れた魚や貝、蟹などの料理が並ぶ。

ティアナたちはビール、俺は麦茶で乾杯だ。

そしてこの宴は深夜まで続いた。


翌朝。


「おい、お前ら・・・  なんで一晩で元のだらしない体に戻ってんだよ!」


「い、いやーーーーーっ!!」


「アイヤーーー!」


「にゃあぁーーー!」




第三十九話(三の塔)に続く

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