第31話逃避行


逃避行


「父上、 不覚にもこの人間に我の裸体を見られてしまいました。 なのでこの男とこれから契りを結ぶことにします」


「おいおい、一方的に言うなよ!  ただの間違いだろ!」


「娘よ!  竜族の掟は絶対である。  例えゴミのような男であっても、掟は揺るがない」


「分かっております。  父上!」


「俺ってゴミ扱いなの?」


「さあ、一緒にくるのだ!」  竜のお姉さんは、また俺の腕を掴んで更に奥へと進んで行く。


そして洞窟の突き当りには、水晶で出来た竜の形をした巨大な神殿があった。

俺は、その中にグイグイと連れ込まれたのだった。


・・・

・・


長い一夜が明けた。

俺は足腰が立たない状態で、神殿をひとり這い出た。

あのお姉さんはと言うと、まだスヤスヤと眠っている。


今のうちに、一人でも次の町まで逃げて行こう。  ここでドラゴンとの結婚生活を続けるつもりなどない。


ようやくまともに歩けるようになると、渓谷沿いの狭い道を一目散に駆けだした。

次の町まではいったいどのくらいかかるのだろう?

一本道ならば良いが、途中で分かれ道があれば、どちらに行くかは運にまかせるしかない。


しかし、自分はいったい何というトラブルに巻き込まれてしまったのだろう。


・・・

・・


こちらは、ティアナ、ポポ、クーニャンの三人。

俺がたいへんな目に遭っているのに、のんびりと温泉三昧である。

今も三人で露天風呂に浸かっている。


「そういえば、一樹くんまだ帰って来てないわね」


「昨日の女は、竜族アル。 われわれ神族と同等の力を持っているアルネ」


「そうなのにゃ?」  ポポの目がまあるくなる。


「戦闘能力が高いぶん、わたしたち以上ともといえるわね」


「それじゃ 一樹がたいへんじゃにゃいか!」


「だいじょうぶよ。  連れ去られたわけじゃないし」  ←ティアナのボケ


「いや、十分連れ去られた感あったアルよ」 ←クーニャンの突っこみ


「あたいもそう思ったにゃ」


「あらあら。 だって一樹くんも、竜族の女の子も裸で仲良く手をつないでたじゃない」 ←ティアナの天然


「・・・」 ←突っこみをやめた二人


さすがに三日経っても帰って来ない一樹の事が少し心配になり、三人は次の町ロルシュへ向かうことにした。

なぜなら、宿の若女将に竜族がロルシェに行く途中にある渓谷沿いに棲んでいると聞いたからだ。


「またのお越しをお待ちしております」 


若女将に見送られ、出発する三人であったが・・・


「なあ、本当にもうロルシュへ行かにゃいといけにゃいのか」


「あたしもあと2泊しても良いと思ったアル」


「ホホホ・・・  もうお金もないし、途中で魔物を倒して稼がないとね」


「アイヤー そだったアルか!」


いずれにしても、結局はお金がないためにロルシェに向かわざるを得なかったのだった。




第三十二話(竜族の嫁)に続く

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