第30話童貞卒業?
童貞卒業?
昨晩の若女将の行き過ぎたサービスのおかげで、露天風呂に入った記憶が全くない。
なので、朝早く目が覚めた俺は、朝風呂に入りに行くことにした。
流石に朝は、朝食の支度があるから、若女将が露天風呂に出没することはないだろう。
出没って熊みたいに言うけれども、あの裸体は熊以上に危険だと思う。
「やった、俺一人。 貸し切り風呂だぜーー!」
ザブザブと進み、一気に飛び込む。
ドッブーン
「はぁーー さいっこーー!」
この世界を旅していると8割方が野宿で風呂に入れることなどは滅多にない。
川や湖で水浴びとか、俺の水魔法でシャワーのように雨を降らせて体を洗ったりする。
冷たすぎるときは、ポポのファイアボールとの合わせ技でお湯をつくりだすのだ。
こんな旅なので、今回の温泉はとてもありがたい。
「はぁ~ 極楽、極楽っと!」
いったん洗い場で頭と体をきれいに洗ってから、再び露天風呂に入る。
「ふぅ~」
風呂上りの牛乳も美味しいのだけど、こっちの世界では、まだ牛乳を見たことがない。
バターやチーズは食べたことがあるから、牛乳はあると思うのだけど・・・
もちろんペットボトルなんかは無いし、ビンも貴重品だからだろうな。
そんなことを考えながら、そろそろ上がろうかと出入口の方に向きを変えると
突然、裸のお姉さんが露天風呂に入ってきた。
『きゃーーーっ』 ← 心の叫び声
「俺たちの他にも泊まっていたお客さんがいたのか?」
昨日は見たことがなかったそのお姉さんは、俺を目掛けてザブザブと湯をかき分けて近づいてくる。
「貴様、われの裸体を見たなー」
お姉さんは、幽霊が言うような言葉で、俺を脅してきた。
「いやいや。 俺の方が先に入ってましたよね!」
「それがどうしたと言うのだ。 われの裸体を見たことに変わりはなかろう」
「いや・・見ましたけど・・それは不可抗力ってものじゃ・・」
「竜族の女は、裸を見られた殿方と夫婦めおとにならねばならないという掟があるのじゃ」
「まって、俺は人族ですから、自分の惚れた女性と結婚しますよ」
「ならぬ! 掟は掟なのじゃ」
お姉さんは俺の腕をガッチリ掴んで離そうとしない。 それもものすごい力でだ。
「痛い、痛い。 離してください」 俺はもう涙目だ。 これじゃあ、どっちが男でどっちが女か分からない。
「せっかくの湯浴びじゃったが、こうなったら仕方がない。 父上に報告するから、われについて参れ!」
「えっ? お父様ですか?」
竜族のお父様って、やっぱりドラゴンだよな。
そう言えば、この先の渓谷に竜が棲んでいたとか言ってなかったっけ。
お姉さんはすごい力でグイグイ俺を引っ張っていく。
「ああっ ちょっと待って。 俺は裸のままですって!」
俺だって、全裸でドラゴンのお父様に会う勇気は持っていないし、ジュニアだって、超しなだれている。
「うるさい! 父上に報告したら、すぐに契りを結ぶのじゃから、そのままでよいわ!」
『きゃー 俺の童貞がぁーー』 ←心の叫び
俺が連れ去られそうになっているところに、ティアナとポポとクーニャンの三人がちょうど露天風呂に入って来た。
「えっ? もしかしてお取込み中だったかしら?」
役立たずの女神が、早速とんちんかんなことを言ってくる。
「いや、みんな何とかしてくれ! このままじゃ、こいつと結婚させられる!」
「にゃんだと?」
「それはどういうことアルか?」
「やだ、一樹くん。 おめでとう」
やっぱりティアナは天然だった。
・・・
・・
・
結局、仕方がないので服を着る時間をもらい、竜のお姉さんに連れられお父様に会いに行く羽目になったのだった。
連れて行かれた先は、やはり渓谷の中にある大きな洞窟の中だった。
洞窟の中は水晶やエメラルド、ルビーなどの宝石で出来ていた。
そして、洞窟の奥の大きな部屋の中に、巨大な竜のお父様が鎮座していた。
第三十一話(逃避行)に続く
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