第29話温泉宿の若女将



温泉宿の若女将



ハイネ村は、まるで寂さびれた日本の山奥にある温泉街のようだった。

俺はそういった温泉街は、テレビでしか見たことがなかったが、なぜだか懐かしい気持ちになる。


「にゃぁ、ポポは温泉は苦手なのにゃ。 耳とかに水が入ると中耳炎になるにゃよ」


「だったら、頭にタオルを巻いとけよ」


「にゃっ!  その手があったかにゃ」


『なんだか単純なやつだな。 まっ、猫だしそんなもんか』


ポポは温泉の硫黄の臭いも嫌いみたいだ。 動物はにおいに敏感だしな。


「さてさて、どこのお宿に決めましょうか?」


どうせ何の役にも立たないティアナが、左右に続く温泉宿をキョロキョロ見回すが、やっぱり決め手が見つからないようだ。

宿の外観は、どこもボロい。 よくいうならば歴史を感じるというところだが、なにしろボロい。


その宿のうちの1軒の軒先のきさきから、着物を着たお姉さんがず~っと俺らのことを見ている。


ティアナを先頭にパーティーが温泉街を2往復した時、お姉さんが俺に向かっていきなり投げキッスをしてきた。


これは、フリー〇ンの投げキッスと同様に、かなりエッチだった。


「ティアナ、あそこの温泉宿にしないか。 ほら手招きしてるし。 営業している感があっていいじゃん」


そう、他の宿屋は人のいる気配が全くしないのだ。


「そ、そうね。 歩き疲れたし、もうあそこにしましょうか」


みんなを疲れさせた張本人に言われると無性に腹が立つ。


「いらっしゃいませ。 当宿は広い露天風呂が自慢の宿です。 どうぞごゆっくりしていってください」


そのお姉さんは、この宿の若女将だと言う。

まだ、20代前半といったところだろう。 近くで見るとけっこうオッパイがデカイ。

お肌もゆで卵のように白くてツルッツルだ。



・・・

・・


若女将に案内されて、俺たちは部屋に荷物を置いた。


「あの~。  男1名と女3名なんですけど。  2部屋になりませんか?」


「あらあら、一樹くんったら。 恥ずかしがらなくっても1部屋でいいじゃない。 こんなに広いお部屋なんだし」


『いや、俺は寝相が悪いし、朝立ちしたジュニアなんか見られたくねぇよ!』


「もう1部屋ご用意することもできますが、料金も倍になります。  よろしいでしょうか?」


「いいえ。  1部屋で結構ですわ」  ティアナが両手でばってん印じるしを作る。


そうして、やたら俺の方を見て目配せをしてくる。  どうやら、路銀が厳しいらしい。


「わかりました。  それではお食事の前に、お風呂にお入りになって、ゆっくりしてくださいませ」


「はぁー  久しぶりのお風呂アルネ。  みんな早く行くアルよ」


クーニャンは、廊下でピョンピョン跳ねまわる。  とても100歳超えの守護者とは思えない。


「お風呂は、玄関の右の廊下を真っ直ぐに行って、その左手の突き当りになります」


・・・

・・


そうして、その突き当りにあった露天風呂は、なんと混浴であった。


脱衣所は男女別だが、入ると混浴というお決まりのスタイルである。

うちらのパーティーの女子たちは、みなさんナイスバデイなので、目のやり場に困る。

もしも直視などしてしまったら、鼻からの出血で温泉が赤く染まり、血の池地獄になるに違いない。


俺は服を脱いで全裸でお風呂に入りかけたが、手でジュニアを隠してすごすごと退散した。

なので、いったん部屋に戻り、女子たちが風呂から戻ってきたら、一人で入りに行くことにした。


しかし女子たちの長風呂のせいで、俺がお風呂に入りに行く前に、夕飯の支度が出来てしまった。

夕飯を食べお腹がいっぱいになると1日の疲れがどっと出て、ついウトウトして気が付けば日付が変わっていた。


まあ、若女将は朝方までは入浴オッケーだと言ってたので、俺は着替えを持って再び露天風呂に向かった。


「よっしゃあー!  貸し切り露天風呂だ。  泳いじゃおうかなー」


などと一人で、はしゃいでいると


「お背中でもお流ししましょうか」


と知らない女性の声がする。


ぎょっとして振り返ると、そこには裸の若女将が立っていた。


きゃーーーっ   ←若女将ではなく俺の叫び声。


驚いた。 びっくりした。 母ちゃん以外のすっぽんぽんの女性の姿を見たのは初めてだった。


あわわわ


驚いて固まっていると若女将は桶を持って、俺の後ろに座り背中を流し始めた。


たまに、非常に柔らかい何かが、プルプルッと背中に当たる。


おぬぉわっ ・・・ 静まれ静まるのだ、俺のジュニアよ!


そ、そうだ。  昔あった嫌なこととか考えれば静まる!

俺は運動会の徒競走でゴール直前で転んだことや遠足のバスに酔ってゲロったことなどを頭に浮かべた。


だが、若女将は突然俺の前に回り込み、腕やら胸板を洗い始めたではないか。


ジュニアは限界を突破した。  オワタ・・・



・・・

・・


魂が抜けたような顔をして、部屋に戻ると女子たちは、既に鼾をかいて寝ていた。

ティアナは自分の布団と俺の布団の両方を使って横になって寝ていた。

しかも浴衣がはだけて、乳も太腿も露わになっている。


のぼせた体で立ち尽くしている俺の鼻から溶岩のように鼻血が流れ落ちた。



第三十話(童貞卒業?)に続く


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