第28話降格された守護者



降格された守護者


クーニャンは結局、二の塔の守護者だったのだけれど、自ら塔を破壊したこともあって、2ランク降格処分となった。

今まで気づかなかっただけかも知れないが、次の日からライムグリーンのスマホを触るところを目にするようになる。


そして、2ランク降格され素性の割れたクーニャンは、俺たちパーティの正式メンバーになっていた。


「ポポにゃん、これからよろしくアル」


「こちらこそ、よろしくにゃぁ」


どうやら俺が二の塔で、武術の技の習得が出来なかったために、大神よりパーティーに加わり、直接指導するよう下知が下ったのだった。

当然、守護者から俺の教育指導者へと降格になったというわけなのだ。


「一樹。  これからは、毎朝1時間は武術の基礎稽古アル。  あと夜は10時から2時間はあたしと組手稽古アル。  よろしな!」


「・・・イヤ  あの~ 俺は帰宅部で・・ 朝連とは無縁の者でして・・ですね・・・」


「ブツブツ文句言ってると稽古時間増やすアルよ!  後、今日からは師匠と呼ぶアル!」


『まさかクーニャンのヤツ。 降格された腹いせに俺をいびって憂さ晴らしとかしないよな』


こうしてクーニャンは、俺の師匠となった。  てか、師匠はいったい何歳なのだろう。


・・・

・・


翌日から厳しい稽古は、毎日続いた。

最初のうちは、まったく歯が立たなかったが、3ヵ月経つ頃には100回に1回は拳が入るようになった。


「一樹、稽古の成果がはっきり出てるアルネ。 早く師匠を超えるアル。  そうすれば、あたしが昇級試験を受けれるようになるアルよ」


「ほら、もう10%になたアル」  師匠はライムグリーンのスマホの画面を見せてくる。


これはどこかで見たような・・・  はっ、そう言えばティアナも持ってたっけ。

ってことは、ティアナも昇級試験を受けるってことなのか?


俺の武術の特訓期間中、治安の悪いミュデンの町に滞在していたのだが、クーニャンとポポがごろつきどもを一掃してしまった。

なので、とても住みやすい町になった。


また、近くにあったダンジョン(二の塔)が壊れて無くなったため、集まっていた冒険者たちもめっきり数を減らした。


「みなさーん。  そろそろ次の町へ出発しましょうねー」


ある朝、朝食を食べているとティアナが、突然旅への出発宣言を行った。

俺も、ミュデンの町のだいたいは見てしまったので、そろそろ飽きが来ていたため、ちょっと嬉しかった。


「ティアナ、次はどこへ行くの?」


「えーと、次はハイネ村よ」


なんかオヤジギャグに使えそうな名前の村なんだけど、久しぶり過ぎて何も思い浮かばない。


『やっぱし、ハイネーは絶対にないしな』


「あたいハイネ村は行ったことがあるにゃ」


「へー どんな村なんだポポ?」


「村人みんなが、ハイネーックを着てるにゃよ」  と言ってポポが俺を見てドヤ顔をする。


「ちくしょー いつの間にかオヤジギャグを覚えやがったなポポ!」


「へへんにゃ」


・・・

・・


ハイネ村は、火山の麓にある村で、たくさんの温泉が湧き出ている。

村の主な収入源は、この温泉を目当てにやってくる湯治客である。

もともと小さな村なので、温泉宿も数はあるが、それぞれの規模が小さい。

だからひとつの宿に泊まれる人数は、10人程度である。


ハイネ村から次の村までの間には、きれいな渓谷があり、いろいろな宝石が取れるらしい。

ただし、この渓谷は魔物が多く出没するため、そこに留まって宝石を採掘する人はいない。

渓谷には幾つかの滝もあり、中でも最大のものは、竜の滝と呼ばれている。


昔この辺りに一匹の竜が棲んでいたのが、滝の名の由来らしい。


そして、4日をかけて俺たちのパーティーは、ハイネ村に到着した。



第二十九話(温泉宿の若女将)に続く




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