第27話二の塔の最後


二の塔の最後



「やつが二の塔の外壁を壊して、この広間に突入してくるのは時間の問題アル」


「でもどうするんだ?  ファイアボールも氷結系も足止め程度にしかならなかったぞ」


「いま考えてるアルよ!」


「100年前は、どやって封印したのにゃ?」


「落とし穴アルよ」


「はぁ?  落とし穴なんてすぐに這い上がってくるじゃん。  あいつってナメクジみたいなんだぜ」


「だから、ものすごく深い穴アル。  そして這い上がってくる前に、セメントを流し込んで固めたアル」


「なんだそんなんで、よく100年も封印できたな」


「でも、今回は同じ手は使えないアル。  やつはもうすぐここにやってくるネ」


「そうだな。  穴なんか掘ってる時間の余裕なんかないぜ」


「なあ、ティアナ。 ティアナは女神なんだから、何かいいアイデアとか最強魔法とかないのかよ」


だが、女神ティアナはスマホの画面を見て、黙ったまま青い顔をしている。  きっとパーセンテージが下がっているのだろう。


「たっく! 肝心なときに本当に役に立たないんだからよ」


ドォン ドォン  


外からは二の塔の外壁に、魔物が体当たりする音が鳴り響いている。


「なぁ、この塔ってかなり頑丈に出来ているんだろ?」


「ダメネ。 アイツの粘液で外壁なんか溶かされてしまうアル」


「えげつないな。  それじゃあ侵入してきたらどうするんだよ?」


「上の階に逃げるアル」


「それじゃあ、塔のてっぺんで完全に詰むじゃんか」


「その間に、何か打つ手を考えるアルよ」


「いや、俺らもう絶体絶命じゃね?」


「二の塔の中に何か武器とかないのにゃ?」


「二の塔は、’技の塔’アル。 基本は武道の技を磨く修練場で特別なにもないアルネ」


「そっか、  クーニャンも拳だけで魔物を倒してたものな」


「にゃあ。  どうせ壊されるにゃら、先にぶっ壊して生き埋めにしたらどうにゃんだ?」


「えっ?」


「あっ?」


「それはいい案アルネ。 ただし、ひとつだけ問題がアルネ」


「問題って?」


「アタシが左遷されるアルよ。  悲しいアル」


「なんだよ。  問題っていうから、塔をどうやって壊すのかって思ったのによ」


「壊すのは簡単アル。 塔の最上階にある大きな杭を一本外せば、崩れてしまうアル」


「その時は、バル〇って言いながら外すんだろ?」  ← 一樹は、天空の城ラピュ〇を15回見た男である


みんなからの冷たい視線を浴びながら、もうひとつの疑問をぶつける。


「なあ、生き埋めにしたって、その粘液ってヤツで溶かして出てくるんじゃないの?」


「それは大丈夫アル。 粘液は体の下からしか出せないアルよ。  それにこの塔の重みで体は動かせないハズアル」


「そっか。 まあやるっきゃないけどな」


俺たちは綿密な作戦を立てた。

まずは、魔物を塔の真ん中までおびき寄せる。  こうしないと中途半端に潰されて、魔物の動きが完全に止めることができない。

問題なのは、塔の杭を抜く合図のタイミングだ。

クーニャンの言うところでは、杭を抜くとすぐさま崩壊が始まるらしい。


なので、合図と同時に逃げださなければいけないのだが、どこから脱出するかルートを決めておかなければならない。


一階層には、出入口の他には窓がない。 したがって、崩れて来る天井をよけながら2階層へ上がり、そこの窓から脱出するしかない。


戦闘配置は、俺とポポが魔物のおびき寄せ役で、そしてクーニャンが杭を抜く。

ティアナはいつも役に立たたことがないので、先に塔の外で待機だ。


シュウウーーーー


とうとう魔物が体液で外壁を溶かし始めた。


「そろそろだな。  俺が前に出て一発凍らせる。  魔物が動き始めたらポポはファイアボールだ」


「わかったにゃ」


ガラガラガラッ  入口を壊し、魔物が滑るように侵入して来る。


「ほらっ、こっちだ」  俺は魔物の地面との接地面を魔法で凍らせる。


パリ パリ パリッ


やっぱり凍り付いた部分を引きはがしながら、俺に向かって来る。


全力で塔の真ん中まで駆け抜けて。


「ポポ今だ。 打てっ!  打ったら即脱出だからな!」


「いっくにゃあーーー!  ファイアボーーール!」


ゴォォーーー


「おわっ!  これは特大だ。  こっちがあぶないぜ」


魔物はメラメラと燃えながらも突き進み、ついに塔の真ん中まで来た。


ポポは既に2階へ上がったようだ。


俺は、クーニャンに塔の杭を抜く合図の魔笛を鳴らした。  と同時に2階までジャンプで飛ぶ。


窓のそばでポポが待っているのが見えた。


「ポポ先に逃げてよかったのに。 待ってるとは律義なやつだな」


「にゃっはっはっ。  明日からはポポさまと呼ぶといいにゃ」


「こいつ、調子に乗るなよ」


俺たちが窓から飛び出すと同時に、塔がガラガラと崩れ、あっと言う間にガレキの山となった。

気付けば、崩れ去った塔のガレキの上で、クーニャンが泣いていた。


「終わたアル・・・  降格か左遷か追放か・・・  悲しいアルーーー!」




第二十八話(降格された守護者)に続く

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