第26話絶体絶命
絶体絶命
「仕方がないアル。 あたしたちが囮になって、二の塔までアイツを誘導するアル!」
「あたしたちって、俺も囮メンバーなのかよ」
クーニャンの足が小刻みに震えている。 100年前に戦ったとき、相当に怖い思いをしたのだろう。
一度植え付けられた恐怖が、再び甦った時の恐ろしさは、当時の何倍にもなるって話しを聞いた事がある。
ぐうぇ%#$&$ガシューー
魔物は聞いたことの無いような声を複数の口から発し、ヌメヌメと体液を道にまき散らしながら進んで来る。
もう町の逃げ遅れた大方の人々は、ヤツに喰われてしまった。
なので今のターゲットは、明らかに俺たちだ。
「あっ、おいっ。 お前たち先に逃げるな!」
ティアナもクーニャンも、もう50mほど先を逃げて行くではないか。
「やっぱり、ポポはいいやつだな」
隣にいるポポに話しかけると。
「おっ先にゃぁーー」 ダッシュで先に逃げた二人を追いかけて行く。
『しまった、猫娘のポポは足が超速かった』
「くっそ、喰われてたまるか!」
逃げ始めた俺に、容赦なく無数の触手が迫ってくる。
どうやら、触手の先にはネバネバした毒液が染み出ていて、捕まると体が痺れて動けなくなるようだ。
懸命に走るが、魔物との距離は全く変わらない。 このままでは、いずれこっちの体力が尽きてしまう。
俺は一瞬足を止め、氷結魔法で魔物の地面との設置部分を狙って凍らせた。
「魔物が止まった。 よし効いてるぞ。 このまま凍らせてしまおう」
しかし、バリバリと凍った部分を切り捨て再び襲って来る。
「ちくしょーー 距離が縮まっただけじゃねーか!」
もう、触手の毒液が背中に届くくらいまで、近づかれた。
二の塔は、すぐそこまで見えてきている。 なんとしても、あそこに逃げ込まねばならない。
俺が歯を食いしばって懸命に駆けていると、目の前から大火球が飛んで来た。
『これは、ポポの特大ファイアボールだ!』
「ちくしょー 俺ごと焼き殺すつもりかよ!」
俺が諦めかけたその時、大火球は俺の右肩をかすめ、魔物へ向かって吸い込まれるように進んでいった。
バアァァーーン
『命中したのか?』
振り返ると魔物は炎に包まれている。
「燃え尽きろや! クソやろーー」 辺りには魔物が焼ける嫌な臭いが漂う。
が、魔物の体は、凄まじい勢いで再生していく。
『こりゃあクーニャンが怖がるのも無理はないや。 俺も小便もらしちゃったよ』
怖い・・・怖すぎる!
ポポのファイアボールの足止めのおかげで、俺は何とか二の塔に逃げ込むことが出来た。
それにしても、ポポのファイアボールのコントロール性には、俺も驚きを隠せない。
正に針の穴を通すようなコントロールである。
「一樹くーーん。 こっち、こっちよー」 いつも逃げ足だけが速いダメ女神が手招きしている。
『女神のくせに、ちょっとはポポくらいに活躍してみろよ』
こうして一時は、絶体絶命の状況だったが、俺たちは二の塔の1階層でなんとか作戦会議を開いたのだった。
第二十七話(二の塔の最後)に続く
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