第20話ティアナ活躍する


ティアナ活躍する


ティアナは一樹が見つかったのと同時に、こっそり建物の裏手に回り込んでいた。

そして裏側のドアから、こっそりと室内に侵入した。


そこには柱につながれたポポと、檻に入れられた沢山の猫たちがいた。


「ポポちゃん、だいじょうぶ。  いまその首輪を外してあげるからね」


ポポに駆け寄ると女神の杖をかざして、あっという間に首輪の鍵を外した。


「ティアナ、ありがとうにゃー」


「本当にだいじょうぶ? どこも怪我してないわね?」


「いにゃ、頭を思いっきり殴られて、でかい瘤ができたにゃ」


髪の毛に隠れて見えなかったが、手でそっと触ってみると、なるほどぷっくりと出っ張っている。


「まあ、酷いことを・・・」


「そうだにゃ。 それよりあの猫たちを檻から出してあげてにゃ」


「まあ、たいへん。  けがをしている猫ちゃんもいるじゃないの」


ティアナは、檻の扉を壊して、すぐに猫たちを出してあげた。  怪我をしている猫には、回復魔法をかけ治してあげる。


「それじゃあ、ポポちゃんは みんなを連れて裏口から先に逃げて!」


「ティアナはどうするにゃ?」


「わたしは、一樹くんを助けてくるわ」


「わかったにゃ」


ポポは猫たちを誘導しながら、裏口からの脱出に成功した。


・・・

・・


俺は人間と戦うのが初めてだったので、どう戦っていいのか迷っていた。

今の俺の力だと一歩間違えれば、確実に殺してしまうだろう。

こんなことで、殺人犯で指名手配されるのは、マジでごめんだ。


だが、男たちは手にナイフや棒を持っている。

これならば、魔物と戦っている方が全力でいけるので、よっぽど楽だ。


だぁーーっ!  男の一人が鉄の棒で殴りかかってくる。


魔物にくらべれば人間の動きなど止まっているかのように見える。


俺は男が振りおろしてきた鉄の棒を楽勝でかわすが、10人近くいる男たちは、次から次へと襲い掛かってくる。

どうしたものかと思いながら、攻撃をかわし続けていたが、ふとあることを思いついた。


『そうだ。  弱い電撃を使えば、こいつら痺れて動けなくなるんじゃないか』


一の塔で祝福を受けた俺は、使える魔法も増えていたが、電撃を打つのは初めてだった。

手加減の仕方がよくわからないが、とにかくやってみるしかない。


いくぜっ!  サンダーバーストーーーッ!


バリ バリ バリッ


ぎゃーーーっ


電撃を受けた男たちは、面白いようにバかっこタバタとその場に倒れた。

『だいじょうぶか?  死んでいないよな?』


男たちは白目をむいて、痙攣している。  まぁ死んではいないようだ。


「一樹くん、すごいじゃないの」


ティアナが俺を見つけて駆け寄って来た。


「なんだよ! ティアナまた自分だけ逃げただろう!」


「いやねぇ。  わたしは裏に回ってポポちゃんたちを助けてきたのよ。  遅くなっちゃたけど向こうが片付いたから、一樹くんを助けにきたんだけど・・」


「そうだったのか。 すまない勘違いしてたよ。 で、ポポは?」


「裏口側から、捕まってた猫ちゃんたちと一緒に逃げたから、心配ないわ」



こうして、3日目の災難は無事に解決したのだった。



第二十一話(ビーネンの町)に続く

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