第17話第7階層の守護者
第7階層の守護者
うっそうとしたジャングルを抜けると7階層へ続く階段が見えて来た。
そして長い階段を下りきると、そこは闘技場だった。
そして闘技場は、ばかっ広ぴろかった。
よく東京ドームがデカさの例えに使われるけれども、ここはあえて甲子園球場の3倍はあると言おう。
「すっげー広いけど、もう嫌な予感しかしねーなー」
ここまでの道のりで、第6感もレベルアップしたような気がする。
「あれは何だにゃ?」
ポポがゆびを指した方を眺めると、デカくて頭が3つある犬みたいのが見えた。
「ティアナ、あれはなんだ・・・ って。 あっ、おいもう逃げやがったな!」
さっきまで一緒にいたのに、忽然と姿が見えなくなっている。
これは第6感もティアナの方が、まだまだ上だってことだろうな。
「おい、ポポ。 ここは俺たちで、やるっきゃないな!」
「いや、あたいは猫だから、犬は苦手にゃよ。 今回はお前に任せたにゃ」
「なんですと?」
聞き返そうとするも、ポポもすごい勢いでスタンドのある方へ走り去っていった。
「ちくしょー なんてやつらだ。 パーティーメンバーの風上にも置けんぞ!」
などと、スタンドに向けて罵っていると、デカい犬はすぐそばまで来ていた。
『デカイ、でかい、でかい。 まるで2階建ての家ほどの大きさがあるじゃないか』
「こんなの、どうやって戦えばいいんだ!」
いままで使ってきた剣は、化け物が大きすぎてまるで届かない。
腕につけた盾だって、腕ごと喰われてしまうだろう。
「とりあえず、ファイアボールを打って様子見だな。 あとは結果を見てからだぜ!」
くらえや ファイアボーーール!!
最初の頃に比べたら圧倒的に威力が上がっているそれは、犬の化け物の真ん中の頭に当たり、ぶつかって左右の頭にも炸裂した。
バリ バリ バリッ
『やったか?』
ヒットした火球の炎が治まると案の定、まったく無傷の姿が現れる。
「ふん。 そうだと思ったぜ。 ならば、これでどうだ!」
俺は、ミノタウロスにも若干効果のあった、氷の刃やいばをぶっ放す。
これも以前より更に威力を増した、無数の鋭く尖った刃が、一直線に突き進む!
キン キン キンッ
だがまるで金属の刃が弾かれたような甲高い音をたてて、氷の刃は次々と地面に落下してしまった。
「くそっ、まるで効いてない!」
『はっ、そうだ。 アレを使ってみよう』
俺は、緑色のお姉さんにもらった、アイテム(エメラルド色の指輪)を皮のポケットから取り出し、人指し指に嵌めた。
「よしっ、いっくぜーーー!」 ファイアボーーーールッ!!
ゴオォォーーーーッ
「うっひょーーー すっげーーー!」
ゆび先から勢いよく放たれたそれは、前にポポがミノタウロスに使ったものの数倍の大きさと速さで、化け物の胴体に当たった。
凄まじい熱波が俺に向かって跳ね返って来るが、素早くジャンプしてかわす。
この大ジャンプができるのも、5階層での厳しい修行の成果で得た身体能力強化のおかげだ。
熱波が治まると化け物は、焼き尽くされ跡形もなかった。
「見たか! 俺の勝ちだーーー ウォーーーーッ!!」
魔力も枯渇寸前で、ふらふらする体を気力で支えながら、勝利の雄たけびをあげた。
「お前、すごかったにゃーー」
ポポも俺に走り寄って来て、勝利を称えてくれる。
「うむ、見事であったぞ」
背後から聞こえてきた、しわがれた声にぎょっと振り向くと、そこにはトゥニカのような服を着た老人が立っていた。
「えっ、あのー どなたさまですか?」
見た目からでも敬語になってしまうような老人は
「わしは、一の塔の守護者じゃ。 実はさほど お主と戦ったケルベロスは何を隠そうこのわしじゃよ」
っと、なんと衝撃の真実を語った。
「えーーっと なんのために俺と戦ったのですか?」
「ホホホ 一の塔の卒業試験ってところかのぉ・・」
「卒業・・で・すか・・」
「まぁよいわ。 みんなと一緒についてきなさい」
「はぁ・・」
言われるままに、守護者とバカでかい闘技場から出て、その先にある豪華な扉の前に立つと、扉がスゥーッと開いた。
『わぉ、自動ドアじゃん』 こっちの世界で初めて見た、それにちょっと感動する。
だが、奥へと続く長い廊下を見て、疲れがどっとわいてくる。
「あのー 廊下が長すぎて先が見えないんですがー」
学校の廊下なんてもんじゃない、その長い廊下を歩いて行く気力がもうない。
なにせ、魔力はつきかけているし、身体強化を行って戦い続けたので、体もボロボロなのだ。
「心配は無用じゃよ」
守護者はそう言うと、持っていた長い杖で床を3回軽く叩いた。
すると、廊下がたいそうなスピードで進みだした。
「げっ、これは動く歩道じゃん。 すっげー」 こんなの空港以外で初めて見た。
「ホホホ どうじゃ凄いじゃろが」
「すごいです。 超近代的で感動しました」
「あら一樹くん、神の世界は人間世界よりも進んでいるわよ」
いつの間にか隣にティアナが歩いているじゃないか。
しかも、ピンクのスマホをしっかり握っている。
ティアナも片時もスマホを離さない、今どき女子だな。
やがて長かった廊下も、これまたびっくりするほど大きな扉の前で止まった。
「ここが一の塔の入口じゃ」
守護者は、ゆっくりと振り向きそう言った。
第十八話(金色の一の塔)に続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます