第16話受粉したいお姉さん


受粉したいお姉さん


「ぼうや、6階層によく来てくれたわね。  本当に嬉しいわ」


緑色の全裸お姉さんは、甘い声で話しかけてくる。


「ど、ど、どうも。 お邪魔してます」


俺は、お姉さんのおっぱいを、なるべく見ないようにして返事を返した。


「そっちの子猫ちゃん。  あたしの体に火をつけちゃダメよ。 わかった?」


「にゃ、にゃんだかゴメンにゃ。  謝るにゃぁ」


ポポの尻尾の毛が逆立って、もの凄く太くなっている。 耳も倒れているし、これは相当に怖がっているんだろうな。


「ところで、もうひとり女がいたみたいだけど、どこかしら?」


「さ、さあ・・ どこでしょうね・・」


「女の方は、あたしの旦那さまの方が用があるのよねぇ」


「はぁ、そうだったんですか・・」


「まあ、いいわ。  そのうち旦那さまが捕まえてくるでしょう」


なんだか、だんだん嫌な予感がしてきた。


「ところで俺たちは、もうそろそろ行かないといけないんですけどぉ・・」


「あら、ダメよ。  これから受粉するんだから♪」


「じゅ、じゅふんですか。  それって、雌しべに雄蕊の花粉をつけるやつですよね?」


「まぁ、よく知ってるのね。  それじゃあ、話しが早いわ」


「り、理科の授業で習いましたので・・」


「そっちの子猫ちゃんには、受粉が終わるまでの間、眠っていてもらおうかしらねっ」


そう言うと緑色のお姉さんは、おっぱいから白い液体を飛ばせて、ポポを眠らせてしまった。


『ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。  ティアナはいったい何をやっているんだ。  早く助けに来いよ!』


「さぁさ、ぼうや。 それじゃあ行きましょうか」


緑色のお姉さんから、触手のような根っこが伸びて来ておれの体に絡まり、お姉さんの方へ引き寄せられて行った。


「うっぷ」


気が付けば、俺は顔をお姉さんの谷間に挟まれて息が苦できない。

いくらもがいても、びくともしない。  もう死ぬ・・


そのうち俺の意識は、だんだんと薄れていった。


・・・

・・


気が付くと俺は全裸で、ふわっふわっの藁でできたベッド上にいた。

なんだか、体がだるくて起き上がることが出来ない。


ふと、横を見るとティアナも全裸でベッドに横たわっているではないか。


『ふっ 結局ティアナも捕まったんだな』


そして、反対側にはポポも眠っていた。  そして、こいつは服を着ていた。

しばらく、ぼぉーっとしていると緑色のお姉さんと緑色のお兄さんがやって来た。


「ぼうやたちのおかげで、あたしたち百年ぶりに受粉できたわ」


「へぇ、それは良かったです」


話しを良く聴くと、こいつらは他人の魔力を吸い取って、その力(精気)を利用して受粉するらしい。


つまり、今回は俺とティアナの魔力を吸って二人は受粉したということだ。


『植物に童貞を奪われなくてよかったぜ』


後で聞いたところによると、ティアナは前に来た時に男の植物人間に捕まり、逃げ出すのに一ヵ月ほどかかったそうだ。

そして、その時の恐怖から、俺たちを置いて真っ先にひとりで逃げたと言う。


まあ俺は、気を失ってたから記憶もないし、怖い思いをしたわけでもない。


むしろ・・いや、やめておこう。


・・・

・・


「にゃぁ、あたいが眠っている間にいったい何があったのにゃ?」


「いや、別に大した事はなかったよ。  俺とティアナも眠ってたようなものさ」


「本当にゃ?  ふたりだけで美味しいものとか食べたんじゃにゃいのか?」


「だったら、ポポだけ引き返して緑のお姉さんに、ご馳走してもらえば?」


「にゃっ!?  それはいやだにゃー」


実は百年ぶりに受粉出来たお礼に、あるアイテムをもらったんだけど、それはまた今度詳しく説明しよう。



第十七話(第7階層の守護者)に続く




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