第15話6階層の植物女


6階層の植物女



6階層の様子は、5階層とはがらりと変わった。

5階層はいかにもダンジョンという不気味な感じだったけど、6階層はまるでジャングルのようだった。


「なあティアナ、スマホばっかりいじってないで、6階層の説明をしてくれよ!」


ぎくっ


『あ、こいつ、いまぎくってなったよな。  ’ぎくっ’って音が聞こえるほど、明らかに動揺したぞ』


「えっ、あっ そうね。  ここは、わたしも苦手な場所なのよ」


「ふ~ん。  苦手って?」


「え~っと・・・ 好きじゃないっていう?」


「おいおい、それじゃ説明になってないよ」


「そのうちに、分かるから。  あまり思い出したくないのよ。  分かるでしょ?」


「いや、俺は初めて来た場所だし、そんなの分かんねぇよ・・」


頓珍漢な問答をしながらも、うっそうとしたジャングルの中を進んで行く。


ポポは、やっぱり猫だ。  もう、あっちこっちへと駆けまわって、姿がほとんど見えない。


2時間ほど歩き、疲れも出始めたので、俺たちはちょっとした池の水辺で休憩することにした。


「きれいな場所だし、どうせならここでランチにしましょうか」


ティアナが近くの平らな石の上に腰掛ける。


「賛成、アルカリ性。  俺もう腹ペコだよ」  癖でいつものオヤジギャグっぽいのが出る。


「アルカリ・・?  それってスマホで品物を売り買いする・・」


「それは、メ〇カリ!  もう、スマホばっかりいじってるからそうなるー」


なお、こっちに来てからの食事は、ほとんどティアナが用意してくれている。

けっして料理上手な女神なんかではない。


不思議なんだけど、あの光る杖から食べ物がドサドサ出てくる。  俺もあんなのが欲しい。


ポポは焼き魚を出してもらって、ゴロゴロ言いながら美味しそうに食べている。


俺とティアナは、ホットサンドとアイスティーというオシャレランチである。

なので、ダンジョンの中という緊張感が薄れていた。


メキ メキ メキッ


突然、背後から木々が倒れるような音が響きわたって、全員が身構える。

しかし、しばらく経っても何も起こらない。


「いったいなんだったんだ?」


横にいたティアナの方をちらっと見ると、顔が青ざめている。


「ティアナ、どうかしたの?」


「く・・来る・・・  みんな逃げてーーーー!」


と言って、自分がいち早くジャングルの奥へと逃げ始めた。


「いったいどうしたにゃっ?」


「いや、ポポ。 あのティアナが逃げ出したんだぞ!  俺たちも逃げるぞ急げ!」


「にゃっ!」


しかし間に合わなかった!

目の前の地面から木の根っこが、うにょうにょと生えて来て、まるで檻のようになり行く手を塞がれてしまった。


ならば、こっちからだ。


前方を塞がれた俺たちは、それぞれが左右に展開するが、同じように生えて来た根に阻まれて動けない。

どう対処しようか迷っているうちに根はぐんぐん伸びて、俺たちは鳥かごの中の鳥のように閉じ込められてしまった。


ポポが根っこにファイアボールをを打つが、根には大量の水分が含まれていて、突破することが出来ない。

ふと、ティアナが逃げて行った先を見ると、ティアナは大きな岩の陰から、こっちを覗いている。


「あいつ、助ける気がないな!」


「うらぎり者にゃっ」


二人で悔しがっていると、俺の近くの地面がうずうずと盛り上がってくる。


「なんだこれ?」


「な、なにか来るにゃあーー」


盛り上がった土の山は高さが3mくらいになると、全面にヒビが入り、中から緑色の艶っつやなお姉さんが現れた。


「ようこそ、6階層へ。 うふふ、男の子なんて久しぶりだわぁ♪」


俺は目のやりばに困った。  だって、お姉さんは・・ 全裸だったから。




第十六話(受粉したいお姉さん)に続く


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