第12話迷宮温泉はもう懲り懲り
迷宮温泉はもう懲り懲り
「さあ、着いたわ。 ここが謎の迷宮よ、一樹くん」
ティアナは、眩しそうにその荘厳な建物を見上げ、指をさして俺たちに言った。
俺たちの目の前には、パルテノン神殿によく似た巨大な建物が聳そびえ立っていた。
そして、そのうしろには、これまた天を突くように立っている金色の塔があった。
「これは思っていたよりも、すごいところだな。 まるで世界遺産にでも来たみたいだ」
「うふふ。 一樹くん、何を隠そうあの塔が一の塔よ。 通称’魔力の塔’と呼ばれているの」
「最初に説明してくれた、あの塔のひとつなんだね」
俺が感心していると。
「やったぁーー さっそくアレをぶっ放すのにゃー!」
これまた猫らしく大興奮のポポが、あたりを駆けまわっている。
『やっぱりコイツは猫だな』
しかし、いきなりぶっ放すとは、物騒なやつだ。
駆けずりまわっているポポを見ていると、ティアナに後ろから肩をトントンとたたかれた。
「今日から、一樹くんが幾つかの魔法を覚えて、それらの魔力量が一定値を超えるまで、ココで修業生活を送るのよ」
「俺のMPは’0’だったけど・・・ いったいどのくらいまで?」
「そうね、だいたい’50’くらい?」
「にゃっ、 MP’50’だってにゃ? それはすごいにゃ」
「そういうポポは、どのくらいなんだ?」
「えへん。 聞いて驚くにゃよ! ’70’にゃ!」
「ティアナ、これってすごいのか?」
「すごいですよ。 ’70’もあれば上級魔法使いです」
「へぇ・・・ ポポ、お前ってすごいやつだったんだな」
「やっと分かったかにゃー」
「へっ パンツ猫だけどな」
「パンツいうにゃーーー」
「さあ、じゃれあってないで、二人とももう行きますよ」
ティアナにうながされて、迷宮の入口へと向かう。
天界らしいその建物は、初代の1階層の守護者が造り、代々多目的に使われてきたらしい。
そして、その地下1階層から7階層までが迷宮になっている。
冒険者たちは、この迷宮で修業し、主に魔法のレベルアップを行うのだそうだ。
「でも俺たち、ココに勝手に入ってもいいの?」 立派な建物なだけにちょっと戸惑う。
「問題ないわよ」 ティアナはニコッと笑いながら言った。 不気味だ。
入口を入ると地下階層に下りるための階段があった。
ダンジョンの階段って狭くて薄暗いイメージがあったのだけれど、ここの階段はまるでお城のように広い。
まあ、外観に相応しいっていうか。
「一樹くん。 1階層に下りる前にこの水晶に手をかざして。 これで使える魔法の契約が出来るの」
ティアナは、いつの間にか手に水晶玉を持っていた。
「手をかざすだけでいいの?」
「だいじょうぶ。 水晶が個人の適性を判断して契約してくれるわ」
俺が水晶玉に手をかざすと、水晶がゆっくりと輝き始めた。
最初は赤、次に青、その次は金、最後は水色。
「すごいわ、一樹くん。 火、水、光、風の4属性も契約できるなんて!」
「そうなの? あとはどんな属性があるの?」
「雷や土とか闇とか・・ あとは・・植物とかかな」
「ふ~ん 雷撃とかカッコイイな」
「4属性のレベルがある程度の値になったら、契約できる魔法も増えるかもしれないわね」
「忘れてはいけにゃいのに、回復魔法があるにゃ」
「あらあら、そうだったわね。 回復魔法は大事よね」
「えっへんにゃ」
こうして、俺たちは1階層へと階段を下りて行った。
・・・
・・
・
1階層には、スライムやゴブリン、スケルトンなどが出現した。
どれもレベル1とか2の魔物で楽勝で倒し、2階層へ降りる階段まで到達するには、それほど時間はかからなかった。
「二人とも、2階層に行く前にちょっと温泉によっていくわよ」
ティアナがそう言うとポポは、露骨に嫌そうな顔になる。
「あっ、ポポちゃんは入らなくてもいいわよ。 これは一樹くんの魔法の訓練を兼ねているから、見ててもらうだけでいいの」
「そうなのか。 あたいは入らなくていいのにゃ?」
「別に入ってもいいけどね」
「にゃっ!」
二階層へ続く階段手前の脇道を少し歩くと、ちょっと大きい池くらいの温泉があった。
むろん迷宮内だから、露天温泉である。
「それじゃ、お先にひとっ風呂っと」
服を脱ぎながら駆け出した俺に。
「あっ、ダメよ。 一樹くん、待って!」
ティアナが大声で止めるが。
「それっ!」
ザッブーン
「うぎゃーーー!!」
温泉だと思って飛び込んだのは、思いっきり冷泉だった。 サウナの水風呂なんて甘いもんじゃない。
俺の’ち〇こ’も縮み上がった。 よく見れば氷も浮かんでいる。
「もう、だから引き止めたのに。 もう少し人のいう事をよく聞かないとダメでしょ!」
「だってよー。 俺は温泉に入りたかったんだよー」
「だいじょうぶよ。 これから入れるようにするから。 一樹くんがね」
「えっ、どうやって?」
「だから、それが魔法の訓練じゃないの」
俺がなんのことだか分からないでいると。
「はい、はーい。 あたい分かったにゃ。 火属性魔法をつかうにゃ?」
「ポポちゃん、正解よ」
「どういうこと?」
「だからファイアボールとかぶち込んで、温めるにゃ!」
「あっ、そうか。 ポポ、お前頭もよかったのか」
「にゃうん。 もっとほめてにゃ」
「で、ティアナ。 ファイアボールって、どうやればいいの?」
ティアナは、ポポをちらっと見て。
「ポポちゃん。 一樹くんにお手本を見せてあげてくれる」
「わかったにゃ。 それじゃ特大のファイアボールを放っちゃうにゃ!」
そういうとポポは、カ〇ハメ波を打つような構えをすると。
「ファイアボーーーール にゃっ!」
と、露天温泉目掛けてファイアボールを放った。
ゴオォーーーッ
唸りをあげて火球が温泉目掛けて一直線にぶっ飛んで行った。
ザザザァーーーン
激しい水飛沫があがり、辺りの地面が揺れ動く。
「すっげーーっ これがファイアボールか!」
温泉からはシュウシュウと水蒸気があがり、火球が直撃した辺りはグラグラと沸騰している。
「一樹くん、そろそろいいんじゃない?」
「よしっ、今度こそ行くぜ!」
俺は再び服を脱ぎながら、温泉目掛けて走りだす。
「あーーーっ ダメだったら! 一樹くん、もどってきなさーーーい!」
ザッブーン
「うぎゃーーー!!」
「なんだよ。 まだ氷のように冷たいじゃないか! なにがそろそろだよ」
「わたしが、そろそろって言ったのは、まだまだ温度は冷たいはずだから、一樹くんにファイアボールを何発か打ち込みなさいってことよ」
「だったら、ちゃんとそう言ってくれよ」
ヘーークション クシュン
・・・
・・
・
この後、俺も威力は低いけどファイアボールをが使えるようになった。
ついでに、3階層の温泉は煮えくりかえっていて、こっちは風魔法を使って温泉をかき回し温度を下げた。
まあ、草津温泉の湯もみみたいなもんだ。
さらに、水魔法や氷魔法で更に温度を下げてみた。
でも、熱湯温泉は火傷したらシャレにならないので、もちろん入浴はしなかったけどね。
第十三話(4階層の化け物)に続く
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