第11話謎の迷宮
謎の迷宮
マルデン村を出てから3日が過ぎた。
結局なんだかんだで、俺たちについて来てしまった猫耳少女の名前は、ポポというらしい。
「にゃあ、ずいぶん歩いたけど、いったいどこに行くんだにゃ?」
「えっ? それ俺に聞く?」
そう言えば俺も何も考えずティアナの後うしろを歩いていた。
「なぁ、ティアナ。 俺たちの次の目的地ってどこなの?」
「ユーデルンって町よ」
「町ってことは、結構大きいってことだよな?」
「そうね。 ユーデルンには温泉があって、観光で栄えているって感じかな」
「なるほど・・・それで湯でるん ってか」
「?? なあに それ?」
「いや、こっちの話し」
目的地を聞いてから、なんだかポポの元気がない。
「どうしたポポ。 疲れたのか?」
「なんでもないにゃ。 だいじょうぶにゃよ」
「それならいいけど」
しかし、後ろからポポを見てみれば、耳が垂れて猫背になって歩いている。
そしてあれだけ騒がしかったのに、とうとう何もしゃべらなくなった。
ティアナもそれに気づいたようで。
「ポポちゃん、元気ないわね。 どこか具合でも悪いの?」
熱が無いかポポのおでこに手のひらをあてたり、オデコをこっつんしたりする。
「う~ん。 お熱は無いみたいね」
「だいじょうぶにゃ。 あたいは猫属性にゃんで水とかお湯とかが苦手なだけにゃ。
だからユーデルは好かないだけにゃ」
「なんだ。 そうだったのか。 でもさ、それじゃあ お風呂とか入らないのか?」
ポポの元気が無い原因が分かって安心するが、ふと思った疑問をぶつけてみた。
「お風呂なんて、めったに入らないにゃ」
「うぇ、それはそれで、ちょっと汚くない?」
「お前ぇー、ポポさまは大魔法使いだにゃぁ。 だから体や服の汚れなんかは魔法
で一瞬できれいにできるのにゃ!」
「なるほど。 すまなかったな。 ごめん」 そっか魔法には、いろいろな使いかたがあるんだな。
「もういいにゃよ」
「二人とも先に言っておくけど、ユーデルンには温泉に入りにいくわけじゃないからね」
前を歩いていたティアナが、振り向きざまにちょっと悪女顔になって言ってきた。
「そうなの? じゃあ、何をしに行くのさ?」
俺はちょっと不安になって確認する。
「それはね・・ じゃじゃーん。 なんと一樹くんの魔法習得とレベルアップのためでしたぁ♪」
「でもそれって、ユーデルンじゃなきゃ出来ないってことなの」
「そうよ。 ユーデルンには温泉以外に、なぞの迷宮と呼ばれるダンジョンがあるのよ」
「にゃっ にゃんですとーー あの3階層より下まで行ければ、どんだけ強力な
魔法を使っても壊れないと言われているあのダンジョンにゃ?」
「ええ、そのとおりよ。 一樹くんに魔法を教えるにはうってつけの場所だと思うの」
「にゃらば、あたいが今まで封印してきたアレを試せるってことにゃぁ。
やったぁーーー!」
ポポが急に元気いっぱいになった。 最早いやな予感しかしない。
・・・
・・
・
ユーデルの町は綺麗で華やかさがあった。
町並みは中世のヨーロッパを思わせるたたずまいで、道のほとんどが石畳だ。
町のところどころには、噴水と水飲み場があり、源泉が湧き出ている場所には、無料の足湯があった。
もちろん温泉宿もたくさんあって、豪華なものや趣のある宿など、さまざまだ。
「ティアナ、今日はどこの宿屋に泊まるんだ?」
だが、ティアナはたくさん建ち並ぶ宿屋の前を、どんどん通り過ぎて行く。
「ちょっとティアナさん。 このままだと町を出ちゃうんじゃ・・・」
もうすぐ町はずれというところまで来ているのに不安を感じて確認すると。
「宿屋には泊まりませんよ。 これから先は迷宮で寝泊まりします」
「いや、温泉は・・・」
「あらあら、だいじょうぶよ。 迷宮の中にも温泉はあるからね」
しかし、この温泉がとんでもないものだったことが、後に分かることになる。
第十二話(迷宮温泉は、もう懲り懲り)に続く
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