第17話 ホフマンの陰謀

 聖剣教会を後にしたユランは、人目をなるべく避ける様に移動し、貴族街までやってきた。

 

 ユランは、死角になるような場所を利用して先に進む。

 

 物陰に身を潜め、抜け出すタイミングを計っていたとき、ユランはある貴族の屋敷の前で、警護に当たっていた警備兵の会話を耳にする。


 「おい、聞いたかよ? あの話」


 「ん? 何をだい?」


 「第一王女様が、魔王討伐の遠征に出てただろ?」


 「ああ、ファルスの大平原に新しく現れたって言う、魔王の討伐遠征の話だな」


 「そう、その遠征なんだが……随分長引いてるじゃあないか」


 「魔王の討伐だろう。そりゃ時間がかかるのは当然なんじゃないのか?」


 「それにしたって、もう三ヶ月だろ……勝利したって一報も届いていないらしいし、だいぶ苦戦しているのかも知れないな」


 「確かにな……どうなってるんだろう……まさか、遠征軍が敗北なんて事はないよな」


 「第一王女様は『皇級』だ。それはないだろう。だが、万が一敗れるなんて事になれば、次はもっと大規模な編成軍が組まれるかもな……」


 「うへぇ、嫌だぜ。せっかく貴族街の警備って安全な仕事に有り付けたのに……戦争に駆り出されるなんてのは」


 「俺だって嫌さ……でもよ、魔族との戦いは聖剣士様の仕事だ。俺たちみたいな聖剣士でもない平民が戦に駆り出される様な事態になったら、それこそ末期の状態だろ?」


 「まあな……でも、過去にそう言う例が無いわけじゃないしな……聖剣士様にはしっかりしてもらいたいよ。平民オレたちを守るのが仕事だろうに」


 「言えてるな……でも、今回ばかりは、そんな心配はしなくても良さそうだぜ」


 「さっきから含みのある言い方するな……勿体ぶらずに言えよ」


 「すまん、すまん。実は最初に言いたかったのはその話なんだ……実は──」


 兵士は声を潜め、ヒソヒソと話し始める。


 しかし、直近に潜んでいおり、隠剣術で聴力が強化されているユランには丸聞こえだ。


 『リアーネ家のグレン様が、討伐軍に合流するために昨晩王都を出立したらしい……』


 『グレン様って……神人の?』


 『ああ、『神級聖剣』のな……グレン様が参加されるなら、討伐軍の勝利は約束されたようなもんだ』


 『おいおい、討伐軍の隊長って第一王女様だろ? 『皇級聖剣』の……それって、どうなんだ……?』


 『ん? どうって?』


 『第一王女様が討伐軍に参加されてるなら、今グレン様が合流したら、国民に「第一王女様では魔王の討伐は無理だ」って公言すようなもんじゃないか……不敬にならないのか?』


 『そう、それなんだが、どうやらグレン様は討伐軍に参加することを秘匿して出立されたらしい。おそらく、第一王女様の名誉を守るためだと思う』


 『内密に出立されたとするなら、何でそんな噂が広がってるんだ?』


 『噂として広がっている訳じゃないさ……オレは、リアーネ家の警護に当たっている警備兵と知り合いなんだ。昨日、仕事終わりに一緒に飲んだんだが、その時にソイツが口を滑らせやがった』


 『げ、そんな話をオレに聞かせるなよ……知らない方が良かった事じゃないか。わざわざ秘匿してるって事は……そう言う事なんだろ?』


 『まあまあ、オレだけの秘密にしとくのもな……オレたちは運命共同体だろ?』


 『……調子の良い奴だな……オレが他の奴らに話したらどうするんだよ……』


 『お前はオレの同僚で、信頼できる友だからな……信じてるのさ』


 『お、お前……』


 最後の方はどうでもいい内容であったが、兵士たちの話を聞き、ユランは激しく動揺していた。


 グレン・リアーネが王都を出立した?


 今はリアーネ家に居ないと言う事なのか?


 その内容に、言い知れぬ不安を感じた。


 もし、グレンが魔王との戦いで命を落とすとしたら、急いで後を追わなければ……。

 

 しかし、ユランは聖剣教会に世話になっている身だ。

 自由には動けないし、追いかけるにしても手段がない。


 仮に追いかける事が出来たとしても、相手が『魔王』だとしたら、レベル1のユランで太刀打ちできる相手ではない。

 とてもではないが、ユランが介入できるレベルの話ではないのだ。


 しかし、同時にユランはこうも考える。


 警備兵たちの話では、魔王はファルスの大平原に『新しく』現れた魔王らしい。

 新参の魔王に『神級レベル6』のグレンが敗れる事などあるのだろうか……。

 それこそ、厄災級の魔族でなければ相手にすらならないだろう。

 

 「と、とにかく……何とかしないと。このままリアーネ家の調査を続けるのか、それとも……」


 誰にも聞こえないほどの小声であったが、ユランは思わず呟きを漏らしてしまった。


 声は聞こえていなかっただろうが、ユランは動揺してしまい、隠していた気配が漏れてしまった。

 すると──


 「誰かいるのか!?」


 警備兵に存在を気取られてしまう。


 「貴様、何者だ! 怪しい奴め!」

 

 サブウェポンを引き抜いて、二人の警備兵がこちらに走ってくる。

 先ほど、グレンについて話していた警備兵たちだ。


 ユランは素早く物陰から飛び出し、出来るだけ体勢を低くして、警備兵の間を縫うように進む。


 警備兵たちは、ユランの鋭い動きに対応できずアタフタとするが、その姿だけは捉える事が出来ていた。

 しかし──

 

 「な、何だコイツは! あれは、仮面なのか?」

 

 全身をローブで覆い隠し、仮面を装着しているため、姿は確認できたとしても、彼らにはユランの性別すら判断できなかっただろう。

 

 「小さい……子供か?」


 「バカ言うな! 子供の動きじゃないだろう!」

 

 素早く走り抜けるユランの姿に、警備兵はサブウェポンを振り下ろして攻撃を試みる。

 しかし、ユランの動きが早すぎて捉える事ができなかった。


 警備兵たちは、自分たちの方に走ってきたユランを見て、『攻撃される』と覚悟したが──


 ダダダダダッ


 ユランは警備兵を無視し、貴族街の奥へと向かい疾走する。


 「逃げたぞ! 追え!!」


 警備兵の一人がユランを追跡しようと走り出す。

 

 しかし、


 「おい、やめとけ……オレたちは持ち場この屋敷を守れば良いんだ。後は聖剣団の仕事だ……報告だけで良い」


 もう一人の警備兵に制止されていた。


 ユランはチラリと後ろを振り返り、警備兵が追って来ない事を確認する。

 そして、その後、ユランはそのままリアーネ家へ向かって疾走するのだった。


         *


 リアーネの屋敷に到着したユランは、鉄製の門扉の近くの茂みに身を隠した。


 屋敷の庭には、相変わらずダリアの大樹が聳え立っている。

 

 ユランは茂みから庭や屋敷の様子を伺い、そこにある違和感を感じた。


 人の気配がない……?


 リアーネ家の屋敷には、門番や巡回の警備兵の姿がなく、まだ日が落ちて間もないと言うのに、部屋の灯りも点いていない。


 いや、一部屋だけ、灯りが漏れている部屋がある。


 ダリアの大樹の枝が、テラスにかかる様になっている部屋……リリアの部屋だ。


 (リリアに会いに……いや、その前に屋敷の中を探ってみよう。何かグレンの死について、手掛りがあるかも知れない……)

 

 ユランは外壁によじ登ると、難なくリアーネ家の敷地内……屋敷の中庭に降り立つ。


 そして、ひとまず無施錠の箇所がないか確認するため、屋敷の周りをグルリと見て回る。


 先にリリアに会ってしまったら、屋敷の中を探る事は難しくなるだろう。

 その前に、なるべくならリアーネ家とグレンの現状を確認しておきたかった。


 ユランはそんなことを考えながら、屋敷の周辺を確認する。

 窓や厨房の勝手口など、全て施錠が成されていた。


 (やはり、屋敷の二階──リリアの部屋から入るしかないか……屋敷の調査は諦めるしかないかも知れないな)


 ユランは、そう結論付けるものの、まだ、正面玄関の扉の施錠を確認していなかったことを思い出し、一応、試しにドアを引いてみた。


 (流石に、開いてる訳ないよな……)


 キギィ──……


 金属製のヒンジが鈍い音を立て、僅かな抵抗の後、扉が開く。


 

 「は……?」


 ユランは思わず声を漏らしてしまった。


 なんと、正面玄関の扉は無施錠であった。


 (おかしくないか? 他の場所は厳重に施錠されていたのに、何故、玄関だけ無施錠なんだ? 屋敷に人の気配は無いが……リリアが在宅中だからか? それにしても……警備兵の姿もないし、貴族の屋敷にしては不用心すぎだろ)


 あまりにもずさんな警備体制に、ユランは逆に警戒心を強めていく。

 

 リアーネ家が、普段からこの様な警備体勢を敷く家と言うなら分かるが……以前訪れた時は深夜であっても、それなりの数の警備兵が在中していた様に見えた。

 

 何かあるのだろうか……?


 ユランは、僅かに開いた玄関扉の隙間から、そっと中を確認する。

 やはり、一階部分に人の気配は感じられない。


 これは何かの罠なのか?


 だとしたら、何故?


 それに誰に対しての?


 などと、突拍子もない考えまで浮かんだ。


 しかし、考えたところで、ユランに正解など分かるはずがない。

 

 ユランは警戒しつつも、リアーネ家を探るためには結局、中に入るしかないと結論付けた。


 ユランは、サブウェポンを鞘から引き抜くと、刃を下に向けてローブの中に隠す。


 そして、扉の隙間からスルリと身体を滑り込ませ、リアーネ家の屋敷の中に足を踏み入れた。


         *


 ユランはリアーネ家の屋敷の中を、気配を消しつつ、慎重に探っていく。


 屋敷の中を巡ると、以前に見た事がある様な感覚を抱くが、別段、ユランが何か思い出す様な事もなかった。


 それよりも、回帰前の状況──ミュンの死や、村人たちが辿った運命を思い出してしまい、不快感が強くなった様な気さえした。


 ユランは屋敷を巡っていく内に、軽い頭痛を覚える様になっていた。


 (何か、思い出せそうで、思い出せない……頭がうまく働かないな)


 頭痛に耐えながらも、一つ一つの部屋を慎重に回っていく。

 

 客室、厨房、使用人の私室までも……。

 

 そして、ユランはある部屋の前に差し掛かったとき、その部屋に強烈な既視感を覚えた。


 ユランが回帰前の世界で、その部屋の中に入った事は一度もない。

 ただ、この部屋の前で悲しげに俯く少女の姿を思い出していた。


 何かを願い出ようと扉をノックしかけるが、すぐに手を引っ込めてしまい、諦めた様に笑う少女を……。


 「リ、リリア……ここは、シリウス──ホフマン・リアーネの執務室か……」


 ユランは、執務室の中の気配を探るが、人がいる様子は無い。

 

 「……」


 ギーッ──……


 ユランは、段々と酷くなってくる頭痛に耐えながらも、執務室の扉を開ける。

 やけに鈍い音を立てながら、木製の扉が開いた。

 

 執務室内は意外なほどに整理されており、整然としている。


 いや、整理されていると言うよりは、執務に使われた事が殆どないのか、書棚に保管された執務記録や羽根ペンなどは埃をかぶっている様子だった。

 

 古びた品の多い室内で、妙に真新しく、新品同然の執務机がユランの目に留まった。

 木製て、飾り気のないシンプルな机だ。

 

 執務机の上には、変形したカードや、破損したダイスなどが隅に寄せられ、まとめて置かれている。


 新品同然の執務机に置かれた、破損したギャンブル用品……。


 このギャップが、持ち主の言い知れぬ怨嗟の念を表している様で、なんとも言えぬ不気味さを感じさせる。


 ユランは、酷くなってきた頭痛に、左手で頭を押さえながら、フラフラと覚束無い足取りで執務机に近付く。


 裏に回ると、執務机に備え付けの引き出しを発見する。

 

 向かって左側に大引き出しが一つ。


 向かって右側に三段の小引き出し。


 ユランは、大引き出しから順に調べていくが、入っているのはどれもギャンブル用品や、数字と個人の名前などが記載された羊皮紙だけだった。

 羊皮紙は、おそらくギャンブルに使用された点数計算表などだろう。


 次々に引き出しを開けていくが、有力な情報が得られる様なものはない。

 しかし──


 ガンッ!


 ユランが三段の小引き出しの、下段を開けようと引っ張ると、抵抗音を立て、引き出せずに止まってしまう。


 引き出しは施錠されている様で……さらに、左右に分かれて二重ロックが施されている。


 その厳重さから、そこに何か重要なものが入っているのではないかと、容易に想像ができた。


 「……」


 ユランは、何かに導かれる様に、引き出しと机の隙間にサブウェポンを強引に差し込み、力を込める。


 バキンッ──ガガッ!──


 引き出しの施錠部分が破損する音が響いたかと思うと、勢いよく下段の引き出しが開いた。

 

 引き出しが開いた事を確認し、ユランは一旦、サブウェポンを鞘に収める。


 引き出しの中には──

 

 「これは……手紙?」


 手紙がたった一通だけ入っていた。

 

 それも、よく見ると『保存』の神聖術が施されている。

 

 余程、重要な内容の手紙なのだろう。


 ユランは迷いなく、手紙を手に取る。


 封筒を確認するが、差出人の名前はない。


 封筒の上部が、ペーパーナイフで丁寧に裂かれていたため、封蝋が綺麗に残っており、刻印が確認できた。

 

 (この印章……どこかで見た事がある。どこで……? ……クッ……思い出そうとすると、頭痛が……)


 ユランは震える手で、封筒から手紙を取り出し、内容を検めた。


         *


 親愛なる友シリウス・リアーネ殿。


 ついに我々の計画を実行に移すときが来たのだ。


 君はグレン・リアーネを恐れて及び腰になっていたが、ついにチャンスが来た。


 忌々しい第一王女を救援する為、昨晩、グレン・リアーネがファルシオーネに、向かったらしいのだ。


 魔王を討伐し、王都に戻るまでには、神人と言えども二週間以上はかかるだろう。

 

 その間に準備をしよう。


 これは、私にとっても、そして君にとっても絶好の好機となるはずだ。


 君は何としても『シリウス』でいたいのだろう。


 私だって、国主の地位が欲しい。


 私が国主となったら、君の地位も盤石になると約束しよう。


 悪い話ではないはずだ。


 私は、この王国の理が憎くて仕方がない。


 私にとって、姉や兄……ましてや末の妹にすら蔑まれて生きていくのは、苦痛以外の何物でもないのだ。


 今後、神人が奴らの味方につけば、我々の望みもそれまで……実に嘆かわしい事だ。


 聖剣の等級だけで国主が決まるなど到底、納得出来ようはずもない。


 我々の望みを叶えるために行動するなら、今をおいて他にない。


 『神人をこの世から抹殺する』


 まずはこれを持って戦いの狼煙としよう。


 君にやって欲しい事は、以前話した通りだ。


 屋敷の人間を全員解雇し、警備を故意に手薄にする事。


 これは、何か適当な理由をつければ良い。


 君は今までリアーネ家の当主として様々な無法を通してきた。


 意図した事ではないだろうが、屋敷の人間を総入れ替えすると突然君が言い出しても、『いつもの気まぐれ』で済むだろう。


 それに、グレン・リアーネが不在の今、君の意見に意を唱える者もいまい。


 リアーネ家の護衛は優秀だ。


 万が一にも失敗は許されないからな。


 作戦実行前に追い出しておきたいのだ。


 分かっているとは思うが、邪魔が入る可能性を考慮すれば、護衛だけでなく従者は全て解雇すべきだ。


 そして、いきなり作戦を決行すれば、怪しまれる可能性があるだろう。

 

 予めの準備は必要だ。

 

 そこで、この手紙を閲読した後、すぐに屋敷の人間を解雇しその状態をしばらく維持してくれ。


 そして、君も怪しまれない様に夜間は、適当な理由をつけて家を空けて欲しい。


 君は、大好きなギャンブルに興じていれば良いだけだ。


 『アレ』を、一人にする状況を当たり前にするんだ。


 実行の日取りは、こちらで勝手に決めさせてもらう。


 適切なタイミングと言うものがあるからな……。


 回りくどいやり方だが、我々は、作戦が成功した後のことも考えて行動せねばならない。


 そこまでやってくれれば、後は私が手配した人間に全て実行させよう。


 なに、心配するな。


 この手紙を届けた人間はすぐに始末するし、実行犯たちも後々、全て始末するつもりだ。


 失うものもない、誰からも顧みられることのない人間たちだ。


 いなくなったところで、誰も気にしまい。


 作戦が成功した暁には、広くなった君の家で一杯やろうじゃないか。

 

 なお、この手紙は閲読後、すぐに廃棄する様に。


 我々の未来のために。


 君の友人、Vより。


         *


 手紙を読んだユランは、動揺のあまり、ぐわんぐわんと足下が揺れる様な感覚に陥った。


 (シリウス──ホフマンが、グレン・リアーネを暗殺しようとしている? それに、協力者もいる様だ。この手紙の内容から察するに、協力者は……)


 王族の誰か──


 ユランは、手紙の内容が信じられずに、頭を抱える。

 両の拳を力一杯、握りしめた。


 頭痛、混乱、動揺、そして……


 それらを塗りつぶす程に、激しい怒りがふつふつと湧き上がってくる。


 神人は、王国の守護者だ。


 魔族や、この国を狙う隣国に対する抑止力になっている。


 それが……


 回帰前の世界では、この愚か者共の企みによって、神人は死亡し、戦争が勃発。

 多くの国民の未来が、理不尽に奪われる結果になったのである。


 それに、回帰前の世界で、リリアがシリウス・リアーネにならなければならなかったのは、グレンの死が原因ではないかとユランは考えている。


 ユランは、今すぐにでもこの馬鹿共を抹殺してやりたいと思っていたが、相手はリアーネ家の現当主……そして、王族の誰かだ。

 

 今のユランの地位では、手を出すことすらできない相手……おまけに、ユランは神人である事を秘匿としている。


 『貴級聖剣』のユランでは、彼らは到底、太刀打ちできる相手ではないのだ。

 暗殺でもすれば話は別だが……。


 とにかく、ホフマンたちについて、今はどうする事もできないが、手紙の内容からグレンの死についておおよその予想が立てられたのはユランにとって僥倖だった。


 ただ、回帰前でのグレンの死の原因が、ホフマンたちに有ると確定したわけではないが……。

 引き続き警戒は必要だが、事態が進展したことは確かだ。


 ユランは、読み終わった手紙を丁寧に折りたたみ、封筒に入れる。


 ホフマンは、Vと言う王族から手紙の廃棄を命令されたが、おそらく、後々に脅迫の材料として使用するために、手紙を破棄せずに残しておいたのだろう。

 

 内容から、自分も事件に関わった証拠となってしまうが、差出人を脅す材料としては十分だ。


 しかし、この様な内容の手紙を持ち歩くのは危険だと判断し、施錠可能な引き出しに仕舞い込んだのだろう。

 有効に使える時が来るまでの間……。


 この手紙はユランにとっても強力な武器となる。


 ユランは、手紙を懐に仕舞い込んだ。


 「調査の成果としては十分だ……一度、リリアに会いに行こう」


 そう考え、ユランは執務室を出る。


 すでに頭痛は治っていた……。

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