誰もが聖剣を与えられる世界ですが、与えられた聖剣は特別でした

第5話 シエル女史

　「ユランくん！」

　自分を呼ぶ声に、沈思していたユランの意識は現実へと引き戻された。

　声のした方を見ると、一人の女性がユランを睨め付けていた。

　ジーノ村の女性教師、シエルだ。

　シエルは呆れた様にため息をつき、言った。

　「授業を聞いていましたか？　貴方達も聖剣を授与されたのですから、自覚を持ってください」

　ユランが考え事に没頭し、授業を聞いていなかった事が気に入らないらしい。

　「私の授業など聞く価値はないと言うことですか？」

　バンと教卓をたたき、怒りを露わにする。

　「良いでしょう。そんな貴方に特別授業です」

　シエルはニヤリと笑うと、ユランに問いをかける。

　「聖剣には下から『下級』『貴級』『皇級』『神級』とありますが、それらに属さない聖剣も存在します。それは何ですか？」

　「『特級聖剣』ですね。その特異性から正式な聖剣として認められず、抜剣術が使えない者『無剣』と同様、差別の対象となっています」

　ユランは難なく答える。

　シエルはユランが正解を口にしたことに驚愕していた。

　ユランは普段から勉強熱心な生徒ではなかったし、成績は下から数えたほうが早い。

　そんな彼が、まだ授業で習っていない問題に対し、正解を口にしたのだ。

　それも当然である。

　今のユランは身体こそ１０歳の少年だが、回帰現象を体験したため、精神年齢は30を超えている。

　それも、ユランが得た知識は激動の時代に得たもので、知識量なら教師のシエルを大きく上回る。

　「もう、座っても良いですか？」

　「え、ええ」

　驚き、固まっているしえるを他所にユランは着席し、再び考え事に耽る。

　そんなユランの姿を見て、シエルだけでなく教室中のクラスメイトが驚いた顔でユランを見ていた。