第3話 さようなら

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:27

身長:176


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:27

身長:162


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:27

身長:147





数日後。昼梟ひるふくろう水樹みずき七海ななみと会っていた。


「あんた、マッチングアプリ頑張ってるけどさぁ、山西やまにし君と復縁ふくえんするっていう選択肢はないの?」


そう七海が唐突とうとつに尋ねる。


「私から別れを告げといて、そんな選択肢あると思うの?」


そう水樹が聞き返すと七海は納得した様に数回頷く。


「そこはちゃんとしてるんだ。」


そう七海に言われて水樹は少し不機嫌そうな表情を見せる。


そんな水樹に七海は続ける。


「戻りたいって言う想いはあるの?」


そう聞かれて水樹は考える。


「・・・ないかな。また同じ事を繰り返しそうだから。」


その水樹の答えを聞いて七海は少し間を作ると次の質問をする。


「じゃぁ何で今でも太希君と付き合いを続けてるの?心のどこかで山西君とまだ繋がっていたいって想いがあるからじゃないの?」


そう言われて水樹は目を大きく開けて驚いた表情を見せる。


「ちゃんと自分の想いと向き合わないとあなたも山西君も次に進めないんじゃない?…やっぱり人生、ちゃんと別れケリをつけないと次に進めないんだよ。

中途半端に繋がってると…次に進めないんだよ。」


七海の言葉が水樹の心の奥に響く。


水樹は深く考える。

自分の想いとは何なのか?

自分は何を感じているのか。


その答えが出たのはそれから4日後の事だった。


答えを出した水樹は太希たいきを夜の公園に呼び出す。


「なんだ?今日はわざわざ外に呼び出して。」


そう太希が尋ねる。


「やっぱり大事な話をするなら夜空の下でないとダメでしょ?」


「大事な話?」


「そう。私達の今後の話。」


そう水樹が真剣な眼差しを太希に向けると太希の心に緊張の空気が流れる。


「ずっと気づかなかった。

嫌…考えないようにしてただけかもね。」


そう言いながら水樹はブランコに座る。


そうしてゆっくりと両足で揺らしながら続きを話す。


「私が太希君の鎖になってるって。」


「くさり?」


そう太希が聞き返す。


「呪いって言ったほうがもっと近いかも。私が太希君の近くを離れない限り、太希君が次に進める訳ないもんね。

太希君は彼女を作らないんじゃない。

作れないんだよ…私のせいで。」


そう水樹がブランコを揺らすのを止めて真っ直ぐと太希を見つめる。


「別にお前のせいじゃ…」

「太希君!!」


そう水樹は大きな声で太希の言葉をさえぎる。


今ここで太希の優しに触れてしまったらもうこの鎖を切る事はできないと思ったからだ。


この呪いに似た鎖は2人の前進を邪魔する。この鎖があるから…水樹も太希も前に進めない。


そう…この鎖は切らなきゃいけないんだ。


重たい過去に繋がっているから。


あふれ出しそうな想いをこらえながら水樹は最後の言葉を告げる。


「・・・太希君。もう忘れていいよ。

私の事も…私との思い出も…全部。

私も…忘れるから…。

だから…前に進もうよ。お互い。

次の恋愛みちを…進もうよ…。」


そう告げ終えると水樹は顔を下に向ける。


必死に何かを堪えるように…。


そんな水樹を太希はただ黙って見つめるしかなかった。


太希の眼に自分の首に繋がった鎖が見える。


その鎖がボロボロに切れる。


「太希君…さようなら。」


そう水樹はできる限りの笑顔と明るい声で別れを告げる。


太希は去って行く水樹の背中に何の言葉もかけられなかった。


ただ遠くなっていく水樹の背中を真っ白な心で見つめる。


この日…太希と水樹は本当の意味で別れるのであった。

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2024年10月5日 18:03 毎日 18:03

もう忘れていいよ 若福品作 @7205

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