第2話 でも、嬉しいよ

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:27

身長:176


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:27

身長:162


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:27

身長:147






数日後。水樹みずきは親友の四条しじょう七海ななみに会うために“昼梟ひるふくろう”と言う喫茶店に来ていた。


「はぁ?!また山西やまにし君の家で飲んだの?!」


そう七海は大きな声を上げる。


その声に周りのお客さんが目線を向ける。


そのお客さん達に七海は軽く頭を下げると声のトーンを落として続きを話す。


「あん達って別れたんだよね?

2年前に。」


そう七海が小声で話すので水樹も自然と小声になる。


「うん。そうだよ。」


「だったら何でまだ付き合いがあるの?

普通別れたらそれで終わりじゃない?」


「そう?別に喧嘩別れじゃないからなぁ、私達。」


そう答えながら水樹は体を背もたれに預ける。


「…そういえば、何で別れたの?あんた達。高校1年の時からだから9年ぐらい付き合ってたよね?」


そう聞きながら七海は目の前に置かれたコーヒーを手に取る。


「別れた理由…か。

改めて聞かれるとよく分からないなぁ。」


そう水樹がテーブルの上を見つめながら答える。


「今でも付き合いがあるなら、嫌いだって訳ではないんでしょ?」


そう聞かれて水樹は目線を上に向ける。


「そうだね。嫌いじゃないよ。今でも。」


「じゃぁなんで?あんたから別れようって言ったんでしょ?」


そう質問されて水樹は少し考える。


「・・・寂しかったからかな?」


「え?」


「いつも一緒に居たけど、心は寂しかったんだ。・・・多分、太希たいき君の隣に自分の居場所がないって思ってたんだと思う。」


「居場所?」


「うん。恋愛の寂しさをめるのは一緒に居る時間じゃなくて、相手に必要とされる事なんだよ。自分の居場所が…ある事なんだよ。太希君の隣に私の居場所はなかった。別れた理由があるとすれば…きっとそれだけだよ。」


そう自分の想いを話した水樹は抹茶を1口飲む。


少し寂しそうにしている水樹に七海は返す言葉が見つからなかった。



それから約2週間後の夜。

またマッチングアプリで上手くいかなかった水樹は太希の家に来ていた。


その手にはコンビニの袋が握られていて、中には大量のハイボールが入っていた。


「これ、冷蔵庫に入れといてね。」


そう言って水樹はハイボールが入ったコンビニの袋を太希に差し出す。


そんな水樹の手には1個だ取り出したハイボールの缶が握られていた。


太希は1つため息をこぼすが文句を言っても無駄だと悟り、黙って従う。


「今回は早かったな。」


そう言いながら太希はハイボールの缶を冷蔵庫に入れる。


「私の何がダメなんでしょう?」


そう水樹は元カレに尋ねながら床に倒れる。


「・・・ねぇ…太希君。」


「ん?」


「太希君は私のどこに惚れたの?」


そう水樹は尋ねる。


「…惚れた理由かぁ。

考えた事もなかったなぁ。」


そう太希が言うと水樹は体を起こして目線を太希に向ける。


「じゃぁ、今考えてみてよ。」


そう言う水樹の眼は真剣なものだった。


その眼にこたえるために太希は考える。


「・・・ずっと1番近くで見ててくれたからかな。」


その答えに水樹は目線を太希から外す。


「なんとも参考にならない答えですなぁ。」


「それはわるぅござんした。」


そう少しすねた声で太希は言葉を返す。


「でも、嬉しいよ。ありがとう。」


そう水樹は微笑む。


その微笑みを太希は静かに見つめる。

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