第23話

「ちらほら他のプレイヤーも挑戦しだしたし、一旦切り上げよっか。後で倒してないボスだけ狙いに来よう」

「クゥ」「アゥ」


 俺達は西のエリアボスを倒してから、ほぼノンストップで各エリアのエリアボスを倒していた。


 ボスの種類は反時計回りの順番で出てくる為、獅子の次は水牛、その次は大鷲、その次は大蛇、そして次はまた獅子という風になる。


「南と西は全種類倒したし、北は大鷲以外、東は水牛以外を倒せたのは良かった」


 俺達は3〜4時間で12体、合計14体のボスを倒したことになる。ゲームによってはボスが倒されたあと、次の人がボス戦を出来るようになるまで一定時間かかったりするが、今回はそんなことはなかった。


「ウルもルリもこのあとご飯にするからちょっと待っててな」

「クゥ!」

「アゥ!」


名前:ユーマ

レベル:13

職業:テイマー

所属ギルド :魔獣、冒険者

パーティー:ユーマ、ウル、ルリ

スキル:鑑定、生活魔法、インベントリ、『テイマー』、『片手剣術』

装備品:大荒熊と荒猪の片手剣、大荒熊と劣狼の革鎧、大荒熊と劣狼の小手、大荒熊と劣狼のズボン、大荒熊と劣狼の靴


名前:ウル

レベル:13

種族:ホワイトウルフ

パーティー:ユーマ、ウル、ルリ

スキル:勤勉、成長、インベントリ、『ホワイトウルフ』『氷魔法』

装備品:黒の首輪(魔獣)


名前:ルリ

レベル:13

種族:巨人

パーティー:ユーマ、ウル、ルリ

スキル:忍耐、超回復、成長、インベントリ、『巨人』

装備品:黒の腕輪(魔獣)


 皆レベルも上がって、最後の方はボス戦よりも移動のほうが時間がかかってたんじゃないかと思うくらい余裕だった。


「じゃあついてきてくれよ」

「クゥ」

「アゥ」


 西の街のクリスタルに触れて、自分達の家まで帰ってきた。


「よーし、ご飯作るから呼ぶまで外で遊んでてもいいぞ」

「クゥ!」「アウ!」


 そう言うとあっという間に2人は遠くまで行ってしまった。


「それにしてもボスの素材がすごいことになってるな」


 獅子の牙と鬣が全色1つずつ、大蛇の牙と鱗が全色1つずつ、大鷲の嘴と羽が黒以外、水牛の角と皮が青以外手に入った。


 ボスの種類が同じものはドロップアイテムも色が違うだけで同じだったので、レアアイテムのようなものがあるなら俺は引けなかったのだろう。


「ウル、ルリ、出来たぞー!」


 呼びかけるとすぐに帰ってきた。


 買ってきたものと、俺が今作ったいつもと同じ焼いた肉を出したのだが、どちらもウルとルリは美味しそうに食べてくれるので助かっている。


 絶対にギムナさんが作った串焼きとか、ベラさんのとこで買った物のほうが美味しいと思うんだけどな。


「食べながら聞いてほしいんだけど、このあとは少しだけ西の街に行って、ちょっとブラブラしながら残りの倒せていない黒の大鷲と青の水牛を狙うって感じで行こうと思う。最悪ボス討伐が無理そうだったら、農業の方を進めよう」

「クゥ!」

「アウ!」


 2人はまだ食べているが、家を手に入れたことにより、俺がログアウトしても2人は残り続ける事ができるので、今の間にトイレなどを済ませておく。


「今は夜の1時を超えてるのか」


 ゲーム内だと約1日と半日、36時間くらいプレイしていたのだが、現実だと12時間位経ったことになっている。


「初日だし、まだまだやることになるだろうからご飯は食べとくか」


 トイレを済ませ、軽いものだけ胃に入れてから戻る。



 

「クゥ!」

「アウ!」

「待っててくれたんだな。ありがとう」


 現実では10分くらいしか経ってなかったが、こっちでは30分になるので、遊んでてもいいって言っとくべきだったな。


「じゃあ行こうか」


 クリスタルに触れ、俺達は西の街へ飛んだ。




「最初はしっかりと見る時間がなかったけど、今見ると、北の街とは大違いだな」


 北の街と比べてこの街は人通りが多くて、そこら中に楽しそうな施設がある。


 闘技場とかもあるらしく、そこでは人ではなくモンスターを戦わせているらしい。


「ここなら北の街よりお金稼ぎ出来るかな」


 これだけ人が多いと依頼の値段も高そうだ。今度来た時に見てみよう。

 今やり始めるとまた時間がかかってボス討伐が出来なくなるから、今回は遊ぶだけにする。


「あそこにでも行ってみるか」


 やってきたのは他の建物と比べても一際大きい建物。


「すみません、ここって何をやってるんですか?」

「当店はこの街最大のカジノでございます。初心者様にもお楽しみいただけますよ」


 この街にはいろんな場所で賭け事ができるが、ここが一番大きくて、何でもできるらしい。


 初心者にも遊びやすい低レートから、大きな金額が動く高レートまで、どんな人でも楽しめるのが売りだとか。


 せっかくなのでお金をチップへ変えて遊んでみることにする。

 

「じゃあ、3人で5000Gずつにするか」


 正直15000Gが無になるとものすごい痛手だが、ある程度チップがないと楽しくないだろうしね。


 この金額でも全然高レートなんかには手が届かないが、遊ぶだけだし低レートでも十分だろう。2人には楽しんでもらえたらそれだけでいい。




 そう思ってた時期もありました。


「ダブルアップされますか?」

「はい」「クゥ」「アウ」


「ダブルアップされますか?」

「俺は降りようかな」

「クゥ」「アウ」


「ダブルアップされますか?」

「クゥ」「アウ」

「そろそろ降りたほ「クゥ」「アウ」なんでもないです」


 ダブルアップ、ダブルアップ、ダブルアッ……


「ダブルアップされますか?」

「クゥクゥ」「アゥゥ」


 やっと終わった


 色んなものを遊んで一通り遊び尽くしたあと、最後に皆調子の良かったバカラでもやって帰ろうと気軽に座ったのが始まりだった。


 俺はいろんなゲームで少しだけチップが増えて、ウルとルリは減っていた。なので、2人にはもう使い切ってもいいから最後まで楽しんでほしいと思って座ったんだけど。


 最初は俺が1人でゲームをして、2人は後ろから見てただけだったから、もう飽きちゃったのかなと思って立とうとしたら、他の場所に連れて行かれた。


 俺はこの時点で結構勝ってたし、何のゲームでも2人がやりたいのがあるならやっていいと思ってたんだけど、連れてこられたのはハイアンドロー。ウルとルリがチップの半分近くを失くしたゲーム。


 2人には最後に楽しんで帰ってもらおうと思って調子の良かったゲームを選んだけど、負けたゲームに挑戦して悔しさを晴らすのもいいか、なんてこの時は考えていた。


「えっと、もうやめない?」

「クゥクゥ」「アウゥ」


 ここに座ってからずっと、俺は手持ちのチップが減らないようにちびちびと遊ぶのに対して、2人は大量のチップを賭け続け勝っている。


「お客様、あちらの台は高レートの台となっておりますが、ご移動なされますか?」


 そう話しかけてきたお店の人は、俺の方を向いて話しているが、稼いでいるのは両隣のウルとルリ。


 俺は高レートに行っても最低額すら届かないだろう。


「どうする?」

「クゥ!」「アウ!」


 やる気満々の2人に押されて、高レートの台までやってきた。


「クゥ!」「アウ!」

「え、いいのか?」


 2人が俺にチップを少し分けてくれる。


「ありがとう、大事に使うよ」

「クゥ」「アウ」


 そこからは低レートで遊んでいた時よりも強気な姿勢で、2人がチップを荒稼ぎしていた。


 


「もうそろそろ出ないか? ボスの様子も見に行きたいし」

「クゥ」「アウ」


 良かった。もうどれくらいチップを稼いだかわからないが、低レートを出た時点で60万チップ、そこからさらにありえない増え方をしてたから、1000万チップは優に超えているだろう。


 高レートの台に来てから俺は自分が負けないように集中していて見れなかったのと、毎回ダブルアップをする2人の展開を見るのが怖くて、チップの合計の想像がつかない。それでも俺の知らない色のチップを2人が使っていたのだけは覚えているが。


 これ以上は減るのが怖いし、十分遊べたはずだから当初の目的は達成した。

 ウルとルリの気が変わらない内に外に出よう。


「お客様」

「はい」

「少しご相談がありまして」


 あぁ、これは裏に連れて行かれて黒服の男たちにどうにかされてしまうやつだ。


「現時点でプレイヤー様がお持ちになっているチップが1億と2000万チップになります」

「へっ?」


 1億? 1億ってあの1億?


 1億2000万全部で俺の今の家と土地が4つ買えちゃうってこと?


「すみません、想像以上で驚いちゃいました」

「いえ、そうなられるのも無理はないかと。そこでご相談なんですが、チップをお金に変換されるのを少し待っていただけませんか?」


「えっと、理由を伺ってもいいですか?」

「もちろんでございます。現在こちらではチップをお金に変換することしかできませんが、本来であればチップと交換できる商品もご用意させていただくつもりでした。しかし、最初から商品を出しておくのではなく、プレイヤー様方がある程度この街にお越しいただいてから、カジノイベントとして商品を出そうと思っていたところ、既に大量のチップを獲得されたプレイヤー様がいると知らされまして、交換所まで飛んできた次第でございます」


 カジノイベントは面白そうだが、この話と何が関係あるのだろうか。


「現在チップを換金される際は、手持ちのチップ全てを交換していただくことになります。なので今換金なされますと、チップが0枚になりお金が1億2000万Gになります。2000万チップだけ残すなどということはできません。そしてイベントの内容なのですが、ゲームで勝利し増やしたチップが商品交換の対象チップとなっているため、今お金に戻してしまうとイベントでまたチップを稼ぐ必要があるのです」

 

「なるほど、ちなみにその商品の内容なんかは教えてもらえないですよね?」

「申し訳ございませんが、お伝えすることはできません。イベント開催予定日は明後日、2日後となっております。私からは以上です。もちろんそれでも換金なされるのであればしていただいても構いません。チップを残しておく場合はこちらに預けていただくことになります」


 さてどうしよう。一応3000万は借金返済に使うとして、残りはウルとルリに決めてもらおうと思ってたからな。


「必要なのは借金返済の3000万くらいだし、あと2日なら待ってみてもいいと思ってるんだけど、ウルとルリは?」

「クゥ」「アウ」


 もう遊び終わったからあとは好きにしてという風に、俺に任せてくれるようだ。


「じゃあ預けておきます。わざわざありがとうございました」

「かしこまりました。ちなみにイベントで出す予定の最高額商品も、このチップの量だと交換できますので、楽しみにしていてください」


 こうして1億2000万チップを預け、俺達はカジノを出るのだった。



 

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