第10話
晃「もう一生会うことはないんだろうなぁって
思ってた…」
俺が小さく言った言葉に健二と結菜は
静かに耳を傾ける
晃「今まで築き上げてきた物は一瞬にして
なくなるんだ…って。
なんであの時あんなこと言ったんだろうって
後悔したりもした…
だけど…ヒーローから離れることに
安心してる自分もいて…」
晃の握る手にグッと力が入る
晃「死にたくなかっ…た。
死にたくねぇよ…今だってすげぇ怖い…」
晃は戻りたいと皆に口では言ったものの
心の中では葛藤していた
そのことは、健二や結菜、もちろん他の皆も
分かっていた
戻りたいと口にしたときの晃の体は
ほんの少し震えていたからだ
晃は自分では気付いていないのかもしれないが…
健二、結菜「大丈夫だよ」
健二と結菜二人の声が重なる
健二「無理しなくていいから。
別にヒーローとして戦わなくても…」
健二がそう言いかけたとき、「ヒーロとして戦いたい…」そう言った晃
健二「どっちなんだよ!」
健二は頭を掻く
晃「ヒーローとして戦い気持ちはあるんだけど
怖い気持ちもあって…」
結菜「あたしも怖い!
晃と同じように死にたくないって思う!」
晃「……?」
結菜「そりゃそうだよ!」
皆、心が強いなぁなんて今までの俺は
そう思っていた
何で俺は心が弱いんだろって、皆みたいに
強くなりたいって…
弱いくせにヒーロやろうなんて先陣きっちゃって…
バカだなぁって、あとになって後悔した
そんな俺の心を見透かしたように
「皆一緒だよ!だけど…皆がいるから
強くなれる!」結菜がそう言った
健二「そうだ!一人じゃない!
お前は一人じゃないから!
楓も龍一も葵も俺も結菜もいる!
俺達がいる!」
二人の言葉にまた涙が出てきそうになる
さっき葵の前で泣いたばっかだから
泣きたくねぇのに
涙をこらえるように下を向いていた俺に
「明日、俺達のはじまりの場所に
集合な!学校終わったら速攻来いよ!」と
声を掛けた健二と「一番大事なものも忘れちゃ駄目だよ?」と結菜が晃の顔を下から覗き込む
晃「近ぇーよ」俺はそう言って一歩後ずさるが
結菜が「晃、もしかして…」泣いてるの?と聞こうと
したところを遮って「泣いてねぇから」とそう言った
健二「ったく…強がりな奴」
晃「うるせっ!」
健二と結菜を見送ってから泣いた顔をスッキリ
させるため先に風呂に入りご飯を食べている俺は
「戻るのか?」と父さんにそう聞かれた
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