第9話

俺の目からは涙がぽろぽろと


零れ落ちてゆく


涙は止まることを知らない




涙ってどうやって止めるんだ…?


早く…早く…泣き止め俺…


そう思えば思うほど涙はどんどん出てくる




「ほらっ、かっこいい顔が台無しだぞ!」そう言って


葵は俺にティッシュを渡してくれた




晃「悪い…」


ティッシュを受け取り俺は涙を拭く




葵「早く会いに行った方がいいんじゃない?」




晃「え?」




葵「晃の家の前で待ってるってさ。


  連絡きてた」そう言って葵は自分の携帯を


指差した




その相手が誰なのか大方、予想がついている俺は


「じゃ、またな」と葵の家を後にした




玄関を出る際、「泣き止んでから会いに行きなよ!」と


後ろから声を掛けられた俺はまだ泣き顔のため


後ろを振り返らず「うるせー。分かってるよ」と


心の中で言っておいた




俺は急いで自分の家に戻る


自分の家が見えてきた頃、俺に気づいた


2つの顔が片手をあげる




晃「はぁッ、はぁッ、はぁッ…」


今日は走りすぎて息があがっている


明日、筋肉痛になるかもなぁ…なんて


頭に一瞬過った




「もう待ちくたびれた」


「そうだよ!こっちから会いに来ちゃった!」




晃「健二……結菜…」




「家、あがっていい?」そう言った健二に


「もちろん」と俺はそう返した




「あらっ、いらっしゃい」俺の母さんが


二人を出迎える


「ゆっくりしていってね!」その言葉に健二と結菜は


同時に「ありがとうございます!」とそう言って


俺達3人は2階へと上がる






部屋に入るなり、「晃の部屋に入るの久々だな!」と


健二は言い、結菜は「ちゃんと掃除してるの?」と


俺に聞いて「してるよ!そこそこきれいだろ?」と


むくれた感じで俺は返した




「ハハッ、ハハハッ…」3人で爆笑する




健二「この感じ懐かしいな」




結菜「ほんとだね!


   喧嘩もいっぱいしたけどすぐ仲直りしてさ。


   晃のむくれた感じの顔、何回見たことか」




晃「うるせーよ」




健二「その言葉も何回聞いたことか」




晃「2人して俺をからかうなよ」




健二「1年も会いに来なかった罰だよ。


   なんてな」




うるせーと言いながらも、俺はこんな感じの


やり取りが大好きだった


いや、皆好きだと思う、たぶんだけど…




やいやい言いながらもお互いがお互いのことを


ちゃんと思っている




笑っている健二の足に目がいってしまった俺


それに気づいた健二は




「大丈夫だよ。日常生活には


支障がないくらいもうほとんど元通りだよ」と


そう言った




健二はヒーロー時代、足に怪我を負った


もう完全には治らないかもしれないと


病院の医師にそう言われたらしい




「俺、リハビリ頑張ったんだぜ?」と


健二は俺にそう言ってウインクした

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