第3話

男が蹴飛ばしたある物を俺は拾い上げる


それは……   ブレスレットだ…




これは1年前、同盟を結んだときに


みんなでお揃いで買ったものだ


安い物だけどさ戦う時はみんなでこれ


身につけて戦ったんだ…




ヒーロー辞めたくせに俺は大事に


財布にしまっていた


何でかな…捨てられねぇんだよな…


まぁ別に無理して捨てる必要もないのかも


しれねぇけど…




「晃?」また誰かに呼ばれ顔をあげると




晃「!?楓…」1年前ともに戦った仲間の一人がいた




楓「久しぶり!元気してた?」




晃「あぁ…うん…


  楓は?」




楓「めちゃくちゃ元気だよ!


  今暇?」




晃「え?」




楓「もしよかったらお茶しない?


  すぐ近くに美味しいケーキ屋さんがあるの」




駄目?と悲しそうな困ったような顔をしながら


楓が聞く




そんな顔すんなよ…




晃「別にいいけど…」


本当は誘われて嬉しかったのに


ぶっきらぼうな言い方をしてしまった




楓「やった!行こ行こっ!」


楓はすぐさま笑顔になり、俺達は


すぐ近くのケーキ屋に入る。そこのお店は


イートインスペースがありお店の中でも


ケーキが食べられるようだ




楓「どれにしようかな…


  晃は何にする?」




メニューを見て悩んでいた楓を見ていた俺は


突然楓がこっちを見て聞くもんだから


目が挙動不審になってしまった




晃「おすすめは?


  楓のおすすめでいいよ」




楓「そう?


  じゃ、これとこれください」


メニューを指差し店員さんに笑顔で


注文する姿を見ながら


相変わらず明るいなぁ…なんて


ふとそんなことを思った




メニューが運ばれてきて


俺達はケーキを一口ずつ口へと運ぶ


黙って食べていた俺達だったが


先に口を開いたのは俺の方だった




晃「ヒーロー辞めたこと後悔してる?」


なぜかそんな言葉が口から出てきていた


そんなこと聞くつもりなんてなかったのに


なんでだろ…




楓「分かんない。


  だけど晃の気持ち分かるよ。


  平穏な生活が一番だよね。


  ヒーロー辞めて改めてそう思った!


  普通に学校通って友達と馬鹿話して


  笑い合ってそういう何気ない日常が


  一番だよ!ヒーローとして戦ってた


  あの頃に戻りたいかって聞かれたら


  正直分かんない。1年も前だもんね。


  もう今の生活が当たり前になっちゃって


  るんだよね」


そう言ってヘヘッと楓は笑う。




楓「晃は?後悔してるの?」




同じことを聞かれると思っていなかった俺は


なんて答えればいいのか分からない

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