第44話 女王陛下 その3
「この瞬間を……待ち望んでおりました」
俺と対面する形で、顔を上気させた美咲がそう言ってきた。
「この瞬間を、晴斗さまに抱かれる瞬間を、ずっとずっと待ち望んでおりました」
美咲が、再び同じセリフを口する。その瞳がうるんでいて、頬は染まり、唇の間からは吐息が漏れ出している。もう、カラダもココロも準備万端。まだ年端もいかない少女ながら、俺に抱かれたいという恋情にかられている様子がみてとれた。その美咲を見て、ずっと気にかかっていたというか、不思議だったので聞いてみた。
「いいのか? 婚姻の儀の前にヤってしまって?」
「結納の儀はすませたので、問題ありません。そのあたり、私の一存に任されております」
「俺のことが好きなのか?」
「はい。お慕い申し上げております。晴斗さまを目の前にした今、もはや我慢はできません」
「どうしてそんなに俺にこだわるんだ? 別にナナミのような幼馴染でもないだろうに」
「晴斗さまとは、前の世界で会ったことがあります。晴斗さまは覚えていらっしゃらないでしょうが……周防美咲というのが、私の本名になります」
周防美咲。知らない名前だった。俺を誘拐した周防美由紀と関係があるのだろうか。前の世界で会ったことがあるというのも……不意打ちだった。
俺は、おちつけ、おちつけと、自分に言い聞かせながら、美咲から情報を引き出そうとあとに続けた。
「なんでそんなに俺に丁寧なんだ? 大組織の長なんだから、命令すればいいんじゃないのか?」
「私はもともと、ホワイトリリーが小さい団体だった時代には、普通の子供でした。今では女王陛下とあがめられ、必要性からもそのようにふるまってはおりますが、性根はただの少女なのです」
「そう……なのか……。謁見室での威厳は、女王にふさわしいものだと思ったが」
「はい。晴斗さまだけにはお伝えいたしますが、私のメンタリティー的にも、本音を申し上げればあのような居丈高なふるまいは、性に合いません」
ふふっと、漏らしてしまいましたと微笑んだ美咲。俺もその美咲が可愛らしくて、思わずも笑みを返してしまった。
その美咲が、言いたいことは言い終えたという様子で、俺を見つめてきた。熱いまなこに、俺に抱かれたいという女の本能がかいまみえて、俺も美咲と目を合わせた。その美咲が、唇を俺に近づけつつ、言ってくる。
「晴斗さまに……お願いがあります」
「なんだ、あらたまって?」
「私は、この瞬間を、前の世界にいるときから待っておりました。長い間、待ち望んでいおりました。ですので、私が女王だからと、初めてだからといって、遠慮しないで欲しいのです」
「お前に、か?」
「はい」
俺と美咲は、口と口が接触しそうな距離で、言葉を交わす。
「晴斗さまの想いの丈を存分にぶつけて、愛して欲しいのです」
俺は、その美咲の希望を否定しなかった。かわりに、美咲の口に舌を差し入れた。じっくりと丹念に、その美咲の中を俺の舌でほぐし、柔らかな胸の膨らみへと手を進める。美咲は先端が弱いようで、指で軽く弾くと、全身をぶるりと震わせた。
俺は、美咲を愛撫しながら、じっくりとその胸をほぐし始める。ときにはゆっくりとじらすように。ときには強く激しくもみほぐし。二十分ほどもかけて、美咲に刺激を与え続けていただろうか。美咲はすっかり出来上がってしまったようで、もう止まることなどつゆほども考えないまま、下半身を俺と絡め合い……という段階で、俺はふっとその美咲からカラダを離して、寸止めをくらわせたのだ。
「え?」っという顔で、美咲は冷水を浴びせられたという反応。何が起こったのかわからない様子。その美咲の顔を見つめつつ、俺は前から立てていた戦略通りにセリフをつげた。
「俺からもお願いがある」
美咲は、一瞬ほうけているようすだったが、やっと理性が回り始めたのか、じれているという火照った顔のまま、短くつげてきた。
「かなえて差し上げられることと、そうでないことがあります」
「後宮を作りたい」
「それは……この世界の常識には合いますが、私の希望には反します。私が後宮をつくるならともかく、男である晴斗さまが作られるのは、ホワイトリリーの理念的にも褒められたことではありません」
美咲は、俺を見つめながら否定してきた。その訴えるような瞳に、わかってほしいという想いが見てとれた。
「加えて、晴斗さまを夫に迎えたいという私の立場も……悪くなります。この結婚は、ホワイトリリーの総意というより、私の独断、わがままの面が強いのです。晴斗さまには晴斗さまの希望があるのは理解できるのですが……」
「後宮を作れないなら、美咲を抱かないし愛さない。俺は寝るから、あとは一人で勝手に処理してくれ」
「それは……!」
美咲が、俺をつかもうと腕を伸ばし、その手が宙で止まる。
「美咲なら、暴力や洗脳で俺をどうにだってできるだろう。けど、俺からは美咲のことを好きにはならないし、愛することもない。それでいいなら、勝手にするといい」
俺はベッドに横になってから、ちらとその美咲を見やった。美咲は、唇を噛みしめ、拳を握りしめて、顔を歪めていた。俺に対する愛情と、加えて俺に火をつけられた欲情にも揺さぶられて、懊悩している表情に見えた。
「晴斗さまは……卑怯です」
美咲は、歯噛みをしながら、悔しいという顔だ。断らねばという判断と、認めてそのまま俺と……という感情の間で揺れている様に見えた。やがて、もはやこれまでというように、俺に抱き着いてきた。
「後宮は……認めます。認めますが……かわりに、私のこの想いを受け止めてください。身も心も熱くて、もう気が狂ってしまいそうです」
俺は、答えるかわりに起き上がり、美咲に口づけてまた舌を絡めた。美咲も、その俺の舌に、自分のものを無我夢中で絡め始める。
美咲が後宮を認めてくれたことで、当面の目的は達せられた。仕方がない対応だったとはいえ、少し酷い扱いをしてしまったと、胸中でごめんと美咲に謝った。あとは、美咲に満足してもらえるように、全身全霊をかけて愛するのみだ。その美咲を抱きしめながらベッドの上に押し倒すと、ぎゅうと俺に抱きついてきた。
美咲の胸を再び揉みほぐし始めると、熱い声が漏れ始め……。俺たち二人は、男女の行為に没頭していくのであった。
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