第23話 我慢できない面々 その2

「これでいいのか?」


 翌日のホームルーム前。人のいなくなった廊下で、サリーに依頼されていたブツを渡した。


「そう! コレ! 晴斗センパイの洗ってないパンツ! 脱ぎたてのホカホカ」

「一昔前のブルセラ……」

「そんなことはどうでもいいの! いまはコレ! スーハ―。スーハ―」


 サリーは、いきなり俺のパンツを鼻に当て、いきおい、匂いを吸い込み始めた。とたんに、その表情に安堵というか安寧というか、途切れていた薬を補給した患者ようなリラックスした表情を浮かべる。


 サリーのような金髪美少女が、俺のパンツの匂いを必死で嗅いでいる。その渇きをいやすというか飢えをしのぐという光景がなんともシュールで、他の人には見せられないなと、周囲をキョロキョロしてしまった。


 サリーは俺の前で、ひとしきりパンツを堪能したあとで、ふぅと大きく息をついた。


「これで今日はもちそう。やっぱり、全部シャットアウトってのが無理あったんだって、今思ってるトコ」

「サリーが落ち着いてくれるのならそれでいいんだが……。やっぱり、俺たちは思春期の旺盛な年齢だから、無理せずに他の誰かと……」

「晴斗センパイがアタシのこと心配してくれてるのはわかってる。でもまあ、無理じゃないレベルでちょっとガンバって見るつもり、アタシ的に。何より、一週間後のゴホウビってのがミリョク的で、その為にいまガマンしてるっていうのがショウジキなところだから」

「一週間後……か。まあ、サリーの気持ちもわからないことはない。乾いているときに補給する水って、甘露だからな」

「そういうこと。そのときはエンリョもチュウチョもしないで襲いかかるからカクゴしておいてね、晴斗センパイ♡」


 サリーは、可愛らしくニコッと笑って、去っていった。俺のパンツを顔に当てながら。


 大丈夫なのか? と心配したが、まあサリーはロリに見えても歴戦の勇者というか性に対して経験値豊富だ。問題ないだろうと思って教室に戻ったんだが、翌日もその翌日もパンツを要求されてさすがに頭を抱え……。


 やっと1週間が過ぎて、いざ尋常に勝負となってホテルにしけこんだときのサリーはすさまじかった。なんというか、女の子ってこんなにエロに対して貪欲になれるんだってほど、舐めるわ吸うわ入れるわ振るわで、声を上げ続けてまる一日ぶっとおし。


 終わったあとのサリーは満面の笑み。飢えや乾きはすべて満たされて、足りないものはなにもないという、太陽のような微笑み。「じゃあね!」と全身つやつやと輝きながら帰っていったサリーのことは大好きだし、もちろんサリーに対する欲望も存分に発散できて満足なんだが……。


 パンツ提供は学園内で噂になっているようだし……。サリーにもまっとうな学園美少女としての道を進んでもらいたいという気持ちもあって……。ちょっとこれは、なんだかなーと思ってしまった、円卓会議後の日曜日夜半なのであった。



 ◇◇◇◇◇◇



 そして、サリーが抜けたあとは澪が外れる番になったのだったが、これも一筋縄ではいかなかった。


 出だしの澪は、学園優等生の淑女のまま。「おはようございます、晴斗さま。今週はお手合わせかないませんが、日常生活はよろしくお願いいたします」と、丁寧なあいさつ。俺も、返事を返して、今週は無事にすむだろうと安堵していたところに、異変は三日目におこった。


「…………」


 朝、澪が登校してきたが、俺に対してあいさつをしてこなかった。俺、何か不作法があったかと澪に尋ねようとしたところ、その澪は顔を赤らめてもじもじと手や足をすり合わせているがせているばかり。風邪でも引いたのかと、心配になって聞いてみる。


「どうしたんだ? 身体の調子でも悪いのか?」

「か、カラダの調子は、その、悪いというより、その……」


 澪は、身をよじるばかりで、はっきりとしない。


「無理はダメだ。一時間目は休みにしよう。俺もついていくから……」


 そういって、澪の手を引いて保健室に連れていった。扉を上げて中に入ると、幸いベッドでお盛んなことをしている男女はいない。空いているベッドに澪を寝かせて、その上に毛布をかける。


 澪は、顔を手で覆い、落ち着こうとしているさま。呼吸に合わせて、ゆっくりと毛布が上下している。具合は安定しているようで、澪の額に手を当てるとその澪はビクンを震えたが、熱っぽさは感じなかった。


 一時間目の保健体育では、宿題になっていた妊娠しやすい時期についての回答を、檀上で披露しなくてはならない。戻っても大丈夫だろうと思って、じゃあ休み時間になったらまたくるからと部屋を出ようとすると、後ろから澪に声をかけられた。


「は、晴斗さま……」


 振り返ると、澪がベッドから起き上がって、俺を見つめていた。熱はなかったのに、顔は赤く染まり目はうるんで、口を半開きにして吐息を漏らしている。


 わかりやすく言って、欲情しているメスの顔にしか見えなかった。


「晴斗さま……。私、その、カラダが火照ってもう我慢できそうになくて……」

「そっちか!」


 思わず、俺は突っ込んでしまった。体調不良を心配して損をした。……とまでは思わないが、澪は別の意味で体調不良だったわけだ。


「家で一人、溜まった物を発散させようとしても消化不良。晴斗さまと褥を重ねた身では、もはや一人では……」

「円卓会議で、我慢すると決めたんだろ?」

「決めました。決めて、問題なく解決するだろうと思っていたのですが、現実は甘くなく……」

「サリーは我慢したぞ。補給に別のブツを使ったが」

「他の女の名前を出さないでください」


 澪が、声を大きく指摘してきた。


「これほどまでに辛いとは思いませんでした。他の女性が晴斗さまと寝て涼しい顔なのが、さらに悔しく口惜しく……。カラダの欲求もあり、もはやこれまでかと……」


 澪は、もう我慢ができないという様子で毛布をはだけ、ベッドから起き上がる。そのまま俺に駆け寄ってきて、俺の股間に顔をうずめた。顔を上下左右に動かしこすりつけながら、俺自身を顔で感じているという挙動。


「ああ……。私は、もはやこれまでです」


 言い終えるか終えないうちに、俺が止める間もなくスラックスをずり下した。


「おい! ちょ、ちょっと待てって!」

「待ちません。晴斗さまがいけないのです、私をこんなたくましいもので誘惑するのですから」

「俺、何もしてないじゃん! 俺、悪者なの!」

「問答無用です」


 言いながら澪は、パンツにまで手をかける。


 澪の様子を見るに、もはや我慢が限界なのだろう。ムラムラした男が女性に乱暴狼藉を働くという犯罪が前の世界ではよく報道されていたが、女性が我慢きかないこともあるのか……と思いつつ、やむを得ないなと気持ちを決める。


「澪。ベッドにいくぞ。立ったままというわけにもいかないだろ?」

「はい! 晴斗さま!」


 澪が、喜びを抑えられないという、はじけた声を返してきた。仕方なしと覚悟を決めて、ここまできたらご褒美だと、澪をお姫様抱っこする。澪が、感極まったという表情を浮かべて、顔をとろけさす。


 俺は澪をベッドにそっと乗せ、口を重ねてから愛撫を始める。澪が、今までの体調不良とやらが嘘だったかのような甘い喘ぎを出し始めるのだった。

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