第21話 円卓会議 その2

「週に三組がかりではなく、二組でお義兄さまのお相手を務めるというのはいかがでしょうか?」

「っていうと……」


 露骨に興味を示してきたサリーに、沙夜が詳しく説明を始める。


「一組だけ抜けて、お義兄さまのお相手を二組にするのです。それをローテーションで行います。三週間のうち、一週間だけあぶれますが、二週間は我慢なしに情熱を発散することができます」

「なるほど……」


 サリーがうなずき、ナナミと澪も思案しているという顔。


「でも思ったんだけど、結局それってアタシたちがガマンしろってのと変わらないよね?」

「ナナミさんも含めての話になります」


 サリーの疑問に沙夜が答え、聞いていたナナミが物申してきた。


「それって妻の私も含まれるの!?」

「それは当然です。現状、妻という地位は形骸化しておりますし、不倫等が非難されたのも過去のことです。私たち四人は対等の立場だと思います」

「うーん……」


 ナナミは、沙夜の言葉にしぶしぶといった様子。受け入れたくはないが、否定もできないという態度。


「いいと……思います。その案」


 澪が、同意してきた。


「ずっと不完全燃焼のまま、だらだらと事態が進むより、メリハリをつけて対応する。さすがは沙夜さんだと、うならされます」

「まあ、そう……かもね」


 サリーも、納得するという姿勢。


「晴斗センパイなしっての、けっこうストレスたまるって思うんだけど、一週間ガマンすればあとはシホウダイってわけなんでしょ?」

「そういうことになります、サリーさん」


 沙夜が、ナナミたち三人に顔を向けて、いかがでしょうかと反応をうかがう。


「同意したします」

「いいんジャナイ?」

「まあ、仕方ないわね」


 三人が返答してきて、沙夜がありがとうございますと丁寧に礼を返す。


「いいカンジにおさまったジャン。これで『一件着落?』ってヤツ?」

「はい。落着ですね」

「仕方なしといったところかしら」


 四人が、ほっと息を吐いて、場の緊張がゆるんだ。みな、冷めてしまった紅茶に手の伸ばし、乾いていた喉を潤し始める。その場面で、サリーがぼそっとつぶやいた。


「でも、まずサイショは誰が抜けるの?」

「私とサリーさんのペアが抜けます」


 即座の沙夜の返答に、サリーが「え゛!?」っと渋い顔をする。


「言い出しっぺの私が抜けなければ話になりません。私とサリーさんはペアなので、申し訳ありませんが、サリーさんにも我慢していただきます。でも一週間我慢すれば、その後には想像もつかないほどの快楽が待っています」

「ガマンしぞんってわけじゃないってコト?」

「そうなります。俗語に『オナ禁』ってあるじゃないですか? 我慢した後には、以前とは比較にならないほどの快楽が待っているということです」

「悪いことばかりではないというわけですね、沙夜さん」


 最後に澪が、にっこりと締めくくった。四人の顔に微笑みが浮かび、険悪な雰囲気から始まった四大美花の円卓会議は、円満な解決を迎えた空気に包まれる。


「実は、今わたし、一週間の我慢が楽しみになってきました。晴斗さまとのしばしの別れ。そしてその後の再開と、燃え上がる欲情。そう考えると、早く私も抜けたいとすら思ってしまいます」

「たしかにそうね。妻としても夫と毎日だとマンネリになっちゃうから、倦怠期を避けるのにもいいかもって思う」


 四人が微笑み合い、笑い声すら漏れ始める。これで無事、全部解決……だと思われた晴斗の処遇に関する円卓会議なのであったが、現実はそうは問屋が卸さないということになる。


 問題はすぐに発生した。

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