第18話 争奪戦 その5
「きれくれてありがと。晴斗センパイ」
サリーが呼び出したのは、体育館倉庫だった。バスケットボールの詰まった大きなかごや、跳び箱、マットレスがところせましとならんでいるほこりっぽい空間。サリーが大切な話だと伝えてきたからやってきたんだが、そんな話をする場所には思えない。
「ここなら誰にもジャマされずにお話しできるかなって」
「確かに割り込んでくるやつはいないだろうけど。で、話って?」
「いきなりなんだけど、アタシを晴斗センパイのハーレムに入れてくれないかなって」
「ハーレムって……」
サリーのセリフに戸惑ったが、客観的に見て、それを否定するのは難しい。
「アタシと晴斗センパイって、付き合ってるのかな? だいぶごぶさただよね」
「ナナミたち相手をしなくちゃいけないからな。責任があると思ってるし、希望をかなえてあげたいという気持ちもある」
「アタシは?」
「…………」
迷った。カラダを重ねた相手であり、可愛いとも思っている。好意を向けてくれるのも嬉しいし、男としての欲望もある。だが、しかし……。
「なんでサリーが、そこまで俺を求めてくれるのかがわからないんだが」
「好きだからじゃ、ダメかな? カラダの相性もバッチしだと思うし」
「好意は嬉しいけど、さすがにきりがない。俺のカラダは一つだけで、お相手する人数にも限界がある」
と、サリーが突然、言い放ってきた。
「晴斗センパイ、沙夜としてるでしょ」
「…………」
サリーが、俺を探るように、そのくりくりまなこで俺の目をのぞきこんでくる。嘘をついてもしかたないので、正直に答えた。
「ああ。確かに、義妹の沙夜ちゃんとは沙夜ちゃんの希望に従って一緒に寝ている。周に一度、といった程度だけど」
「その沙夜のに、アタシを混ぜてくれない?」
「?」
「アタシが沙夜と同じクラスなの、知ってるよね。実は沙夜と取引したんだ。メチャクチャな話なんだけど、ダメ元で話してみたら、簡単にオッケーしてくれた」
意味が分からない。
「沙夜が晴斗センパイとするのに私が混ざってもいいって。もし晴斗センパイがそれをオッケーしてくれたら」
「それって……3Pか! 沙夜ちゃんがそんなことを……」
「もちろん見返りは要供された」
「……なんて?」
「一度だけ、沙夜ちゃんのお願いを、沙夜ちゃんがお願いしたいタイミングで、一個だけ聞いてくれって」
やっと意味がわかった。が、沙夜ちゃんも俺との行為を大事にしているはずだ。沙夜ちゃんの行動が理解できない。
「『死んでとか殺してとか言わないから安心して』って、笑ってた」
「死んでって……」
「『ナナミさんの同居やサリーさんのことは、慈善事業や慈愛というわけでもありません。私にも深謀遠慮があり、過激に聞こえるかもしれませんが、私にとってはそれだけ大切な時間の半分を提供しているということで、深刻に考えなくてよいので真剣に楽しんでください』、だそうで」
それを聞いて、沙夜ちゃんの怖ろしいセリフに、背筋が震えあがる。沙夜ちゃんの人柄や善性に疑問はない。そこは全く疑ってない。だけど沙夜ちゃんはちょっと常識が通じないというか、いきなり突拍子もないことを言い出したりするから、年下だからといって全くかけらも侮れない。
「どうかな? 今まで沙夜を抱いてた分を半分にして、その半分でアタシを抱いてくれないかな?」
「沙夜ちゃんがそういうなら……。俺が反対する理由はないんだが……」
「ならキマリ! 丸く収まったところで……」
サリーはいってから、俺に流し目を送り、壁に手をついて後ろ向きになる。お尻を突き出して、誘ってくる姿勢だ。
「このかっこうで、して♡ アタシ、後ろからされるのが一番感じて、好きだから」
「今、ここで、か?」
「うん。晴斗センパイ、ずいぶん相手してくれなかったから、欲求不満がたまってたというか。晴斗センパイ、アタシの精神安定剤みたいなところがあって、終わったあとはいっぱいいっぱい満たされて、生まれてきてよかったって実感できるんだ」
サリーの言葉を聞いて、サリーに対する愛おしさがあふれ出た。そのサリーが、蕩けた目、火照った顔で俺を見つめながら、誘うようにゆっくりと下着を下ろす。あらわになった淫靡な部分に目がいって、そこから視線を放すことができない。
サリーに対する情欲も、膨れ上がる。澪としたばかりなのに、我慢できなかった。そのままサリーに覆いかぶさり……。まずは口からと、キスを重ね始めるのだった。
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