第6話 和泉サリー その2

「晴斗さま……。作ってきたお弁当を一緒に頂こうと思いまして、探していたのですが……」

「出たわね、この学園のラスボス、山城澪センパイ」


 澪が、そのサリーに向き直る。


「和泉サリーさん……でしたよね? 上級生に大人気の、ロリ系後輩ギャル」

「ロリギャル言うな!」

「別に馬鹿にしているわけではありません。ロリというのも立派な個性だと認識しております」

「いいからアタシの邪魔しないで! いま晴斗センパイに、アタックかけてる最中なんだから!」


 澪は、そのサリーの抗議に対抗する。


「サリーさん。単刀直入に言います。晴斗さまに手を出さないでください」

「そんなコトいわれるスジアイないっしょ。なんで澪センパイに命令されなきゃならないの?」

「私と晴斗さまは褥を重ねた間柄です。私は生涯、晴斗さま以外の男性と寝るつもりはありません。むろん、晴斗さまにも私だけを求めて欲しいのですが……。殿方の甲斐性を束縛するわけにもいかず……」

「当たり前っしょ!」


 そのサリーの返答に、澪が葛藤しているという難しい顔をして唇をかみ、拳を握る。


「なので、せめて私のいるところでは、晴斗さまのお相手は私が勤めたいと思う次第なのです」


 胸に手の平を当てて、自分を主張する澪。サリーはそれを、ふっと笑い飛ばした。


「澪センパイ、晴斗センパイとしかヤらないんだ? 古臭い考えもってるんだね」

「古風と言ってください。私はお慕いした晴斗さまだけに、シングルマザーとして身も心も一生捧げるのが夢であり希望なのです」

「だからって、晴斗センパイの社会生活を邪魔する権利はないっしょ!」

「おっしゃることいちいちごもっともですが。サリーさんに晴斗さまを満足させられるのですか? サリーさんを侮蔑する意図はないのですが、その薄い胸で。その大きくないヒップで。晴斗さまを疲労だけさせて絞り取ろうというのは虫が良すぎるのではありませんか?」

「アタシが三年生に人気なの、知ってるっしょ。小さい子を組み敷いて支配するのが燃えるっていうのも男の本性。アタシ、晴斗センパイを満足させる自信アリだけど、その点についてはどう?」

「…………」

「女は男に注がれた量が魂の価値! 男はどれだけ女に注いだかが魂の価値! だからアタシには価値がある!」


 ぐぅと唇を噛みしめて、澪がそのサリーのセリフに押し黙る。


「なんて淫乱な世界なんだ……」


 俺は思わず声を漏らしてしまった。その俺を、再びサリーが見つめてくる。


「晴斗センパイ。一人としかヤらないとかいうヘンタイ的な考えに凝り固まっている澪センパイは放っておいて、私と一発気持ちよくなりましょ。澪センパイもあまりしつこく邪魔するようなら、学園に報告するけどそれでもいい?」

「ぐぐぐ……」


 澪はうなるばかりで、それ以上、俺とサリーの間に割って入ってはこなかった。


「じゃあ行きましょ、晴斗センパイ!」


 サリーが俺の手をガッシとつかんで、歩き出す。否と言う間もなく、廊下を引きずられていく俺なのであった。

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