かちかち山

「かちかち山の復讐」


昔々、山奥の小さな村に、心優しいおじいさんとおばあさんが住んでいた。しかし、その平穏な日々を壊したのは、狡猾で残忍なタヌキだった。タヌキは畑を荒らし、村人を困らせていたが、特におばあさんをひどくいじめ、最終的には彼女を命まで奪ってしまった。


おじいさんは絶望し、タヌキへの復讐を決意した。そこへ、ウサギが現れ、おじいさんを助けることを約束した。ウサギは冷静で計画的にタヌキを罠にはめることを考え、二人でタヌキを懲らしめる作戦を練った。


まず、ウサギはタヌキに木の束を背負わせ、山道を歩くように仕向けた。そして、火打ち石を使って、その木に火をつけた。「かちかち、かちかち」と火を起こす音が響くと、タヌキは不安げにウサギに尋ねた。


「何の音だ?」


ウサギは笑顔で答えた。「それはかちかち山だからさ。木々が風で揺れる音だよ。」


だが、その瞬間、火はタヌキの背中に燃え広がり、タヌキは悲鳴を上げながら山を駆け下りた。皮膚が焼け焦げ、肉が裂ける音が響く中、タヌキは必死に川に飛び込んで火を消した。


だが、タヌキの苦しみはこれで終わらなかった。次にウサギは「治療」と称してタヌキに薬を塗るふりをしたが、実際には辛子と塩を混ぜた毒のような薬だった。タヌキはその激痛にさらにのた打ち回り、絶望的な叫び声を上げた。


「お前……なぜ……こんなことを……」


タヌキは恐怖と憎しみの混じった視線でウサギを見つめたが、ウサギは冷たい目でタヌキを見下ろしながら言った。


「これは、お前が奪った命の報いだ。おばあさんの苦しみは、これ以上だっただろう。」


ついにウサギは最後の復讐の計画を実行に移す。ウサギはタヌキを船で湖に連れ出した。だが、ウサギの船は丈夫な木で作られているのに対し、タヌキには脆い泥の船を用意していた。タヌキが船に乗り、湖の中央に達したとき、ウサギは笑顔で言った。


「さあ、これで終わりだ。」


タヌキが驚いて水面を見ると、泥の船はすでに崩れ始めていた。タヌキは必死に泳ごうとしたが、火傷と毒薬で弱り切った体では、深い水の中に沈んでいくことしかできなかった。タヌキは最後にウサギを睨みつけ、その目には怒りと恐怖が混じっていた。


タヌキが湖底に消えた後、ウサギは静かに岸に戻り、何事もなかったかのように振る舞った。だが、湖のほとりに立つウサギの背後では、タヌキの怨霊が現れたという。


それ以来、満月の夜には、かちかち山の湖の近くでタヌキの怨念が漂い、助けを求めるかのような低い唸り声が聞こえるという。その声を聞いた者は、決して無事に帰ることはなく、次々と姿を消していった。村人たちは恐れ、この山には誰も近づかなくなった。

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