したきりすずめ
「舌切り雀の呪い」
昔々、山里の小さな家に、心優しいおじいさんと欲深いおばあさんが住んでいた。おじいさんは毎日山へ薪を取りに行き、その途中で出会った一羽の雀を家に連れ帰った。おじいさんは雀を大切にし、毎日餌をやって可愛がっていたが、おばあさんは雀を嫌い、何かしら理由をつけて追い払おうとしていた。
ある日、おじいさんが山に出かけている間、雀はうっかりおばあさんが作っていたのりを食べてしまった。怒ったおばあさんは、「この恩知らずの雀め!」と叫び、雀の舌を切り落として追い出してしまった。
おじいさんが帰ってくると、家には雀の姿がない。おばあさんから話を聞いたおじいさんは深く悲しみ、雀を探しに山へ出かけた。山を越え、やがておじいさんは雀たちが住む「雀のお宿」にたどり着いた。そこで舌を切られた雀は、おじいさんに感謝の意を示し、二つの箱を差し出した。
「この大きな箱か、小さな箱、どちらかを持って行ってください」と言う。おじいさんは迷わず小さな箱を選び、礼を言って家に帰った。
家に戻って箱を開けると、中にはたくさんの金銀財宝が詰まっていた。おばあさんはこれを見て目を輝かせ、「なんで小さい方を選んだんだ!」と怒鳴り、大きな箱を手に入れるために雀のお宿へ急いだ。雀たちはおばあさんにも同じように二つの箱を差し出したが、おばあさんは迷わず大きな箱を選んで帰った。
しかし、家に戻って箱を開けた瞬間、おばあさんは凍りついた。中からは数えきれないほどの蜘蛛や蛇、そして不気味な闇が溢れ出し、部屋中を埋め尽くした。おばあさんは恐怖で後ずさりし、叫び声を上げたが、闇は彼女を包み込み、家全体を飲み込んでいった。
それから数日後、おじいさんが帰宅すると、家は無人で、ただ闇に包まれたような冷たい空気が漂っていた。おばあさんの姿はどこにも見当たらず、家の中には不気味なほど静寂が広がっていた。
その晩、おじいさんが寝ていると、どこからともなく囁き声が聞こえてきた。
「欲深い者には、呪いが降りかかる……」
おじいさんが目を覚ますと、部屋の隅に雀がじっとこちらを見つめていた。しかし、その雀はかつての可愛らしい姿ではなく、血まみれの舌を持ち、恨めしそうな目でおじいさんを見ていた。
「お前が、全ての始まりだった……」
その言葉におじいさんは震え、もう一度家の外を見回した。しかし、おばあさんの姿は二度と戻ってくることはなく、村人たちはその日以来、その家には近づかなくなった。
夜になると、遠くから「チュン、チュン……」という雀の鳴き声が聞こえ、その声を聞いた者は不幸に見舞われると言われた。村は次第に恐怖に包まれ、やがてその家も森の中に消えるように、誰からも忘れ去られていったという。
そして今でも、山奥のどこかで、恨みを抱えた舌切り雀の亡霊がさまよい続けていると伝えられている。
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