第7話


【速報】世界ランキング1位、塗り替えられる


1: 名無しの探索者

 おい、世界ランキング1位だったアメリカのヒューズが突然SNSに画像あげてたぞ!


2: 名無しの探索者

 ……え?なんでヒューズ、ランキング落ちてんの? ヒューズが悔しそうな投稿してるな……


3: 名無しの探索者

 なにこれ?コラか?


4: 名無しの探索者

 2位のミシェルが抜いたんじゃね?


5: 名無しの探索者

 いや、ミシェルじゃないみたいだぞ。


6: 名無しの探索者

 じゃあ3位のやつとか?あいつらってスキルカード次第で簡単に逆転することあるだろ?


7: 名無しの探索者

 いや、俺がフォローしてるランキング上位者、誰も抜いてないんだが。


8: 名無しの探索者

 ……じゃあ誰なんだよ?1位になったやつ。


9: 名無しの探索者

 めちゃくちゃ気になるわ!


10: 名無しの探索者

 俺かも……とか思ったけど、全然俺じゃなかったw


11: 名無しの探索者

 今みんな血眼になって探してるらしいぞ


12: 名無しの探索者

 そりゃあそうだろ。世界ランキング1位っていったら、とんでもなく稼げるもん


13: 名無しの探索者

 そうだよな。スポンサーはつくし、メディア出演も山ほどあるし、羨ましい限りだわ


14: 名無しの探索者

 この前、渚ちゃんの配信でファントムとか名乗ってるやついただろ? あいつが世界ランキング1位とかなんじゃね?


15: 名無しの探索者

 さすがにそれはないと思うわw


16: 名無しの探索者

 世界ランキング1位の奴がわざわざ正体隠す意味が分からんわw

 探索者やってるなら絶対金目当てなんだろうし




 次の日の朝。

 俺は学校に向かう前に【強欲】を使っておきたくて、星谷町ダンジョンへと向かっていた。

 早めに使っておけば、学校に行っている間に再使用までの時間を稼いでおけると思ったからだ。

 今回狙うのは二階層にいる盗賊ゴブリンだ。


 昨日獲得して、すでに使用済みの【索敵】を発動すると、盗賊ゴブリンが出現する地点を見破ることができた。


 ……【索敵】、かなり便利かも。本当は陰の実力者として活動するときに使い勝手がいいかもとかくらいにしか思っていなかったけど、ダンジョンでの戦闘にかなり有利に働きそうだ。

 出現した盗賊ゴブリンは、短剣を使ってくるのだが……ドロップアイテムには【短剣術】があった。

 なので、【強欲】を発動して、無事回収。

 早速、スキルカードを使い、【短剣術】を獲得した。


 それから、短剣を握ってみる。軽く短剣を振ってみる。

 ……変化は、いまいち分からない。スキルの使用前例を調べてみたところ、【短剣術】はパッシブスキルのようだ。

 効果としては、短剣の扱いが良くなったと感じる人もいるみたいだけど、どこまで効果があるのかはちょっとわからない。


 まあ、スキルは獲得しただけじゃ、100%の効果を発揮できないっていうしね。

 今後、短剣を使っていったら、もしかしたらどんどん技術が上達するようになるかもしれない。


 ……【強欲】にもさらに上はあるのだろうか?

 もしもあったら、そっちはちょっと怖いかも。

 もう一度、【強欲】を発動してみようと思ったが、やはりスキルは使用できない。

 再使用時間は……約17時間後?


 昨日よりも、再使用時間までが延長されてしまっている。

 ……何が影響しているのだろうか?


 ……現在時間と見比べてみると、次に使用できるのは明日の0時からだ。

 そういえば、昨日ダンジョンに潜っていたのも午後の九時ちょっと前くらいだった、と思う。


 ……もしかして、使用制限って一日一回……ってこと?

 だとしたら、朝一番にダンジョンに行かなくても、いいのかもしれない。


「また明日、試してみるか」


 獲得したドロップアイテムによって変わるのか、あるいは何をドロップさせても一日一回なのか。

 それとも、俺が考えつかないような難しい計算によって算出された時間なのかも。

 その場合は、再使用できるようになったら使っていけばいいかな。



 いつものように教室へと入ったところで、


「あっ、瀬戸くんおはよう」


 桜井さんに声をかけられた。

 学校で誰かに声をかけられるなんて一切想定していなかったので、思わずびくっと肩が上がってしまう。


「お、おはよう」

「昨日ぶりだね。瀬戸くんって普段はダンジョンとかよく入るの?」

「……それなりには。えと、一人暮らしで……そのアルバイトの代わりみたいな、感じで」


 ……これはあくまで表向きの言い訳だ。

 真の理由は、陰の実力者として、日々の鍛錬を欠かさないためにダンジョンに入っている。


「え? そうなんだ? でも、お小遣い稼ぎ程度が限界じゃない? 昨日も皆でずっとダンジョン潜ってたけど、3000円くらいにしかならなかったんだよ?」


 ……昨日いたメンバーは八人だった。確かに、その人数でダンジョンに長時間入ってその金額だと生活はできない。

 でも、それはあくまで複数人で活動していた場合なんだよね。

 俺の場合はソロなので、毎日数時間程度で3000円くらい稼げれば……十分でもある。

 

 自分の嘘から広がってしまった会話に、わずかながらに申し訳なさを覚えつつ、濁したように笑っておく。


「あーあ、いっそのことスキルカードでもドロップしてほしいよねぇ」


 ぎくり、としてしまった。

 お、落ち着くんだ俺。別に桜井さんは、俺の【強欲】のスキルを知っていて、そういったわけじゃないんだから。


「……そうだね」

「そうしたら、一攫千金。お金がっぽり、夢いっぱいだもんねぇ」

「……うん」


 桜井さんの冗談めかした言葉に、苦笑を返す。

 ……普通は、そう考えるよね。

 自分で使おうとする人は、きっと世界ランキングでも上位にいるような人たちくらいなんだろう。


「あっ、そういえば知ってる?」

「え? ……何が?」

「昨日、世界ランキングの1位が変わったってことで話題になってたんだよ。朝のニュースとか凄かったよね!」

「……そ、そうなんだ」


 それ俺じゃん! 今この場で確認するつもりはないけど、今朝ダンジョンに入ったときはまだ世界ランキングは1位だった。

 あんまり深く考えていなかったけど……そりゃあ話題になるよね。


 ……さすがに、ファントム=世界ランキング1位の人、とまではいかないと思うが……それでも、心配がまるでないわけではない。


「なんだか、世界ランキング1位が誰かを探し始めてるみたいなんだよねぇ。世界中の人が探してるわけだし、案外すぐに見つかるかもね」

「……そう、なんだね」


 桜井さんとの会話も一段落がついた。気づけば別のクラスメートが桜井さんに声をかけていた。

 桜井さんもそちらと会話を始めてくれたので、俺としてはほっと一息がつけた。


 ……やっぱり、人との会話は苦手だ。特に、同世代の異性ともなると緊張してしまう。

 うーん、探索者の仕事の話とかをしているときはそういう意識はないんだけど、世間話ってなると特に疲れてしまう。


 ……それにしても、世界ランキング1位の人を探しているって。


 世界ランキング1位という検索をしてみると、もうたくさん検索結果が出てきた。

 ……そ、そんな特定しようとしなくていいのに。


 俺が、こういったものをやらないのでネットを使っていくら捜索したとしても俺に繋がる情報は出てこないはず。


 だから、俺のことがバレることはないはずだ。

 だ、大丈夫……俺は大丈夫なはず……!


 ……とりあえず、今は強くならないと。


 本当の意味で世界ランキング1位の実力をつけていかないとね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る