第9話 初授業
「よーし、じゃあ、お前ら、授業始めるぞ」
「「「はい」」」
「じゃあ、初日ってことで、ちょっと復習と行くぞー」
俺たちは今、星川先生主導の元、学院最初の授業を受けている。
だがこの話をする前に少し、昨日の話の続きをさせてくれ。
俺たちは昨日、授業が終わった後、学院に付属してある寮を紹介してもらい、そこで暮らすことになった。
部屋は全員個別に用意されており、部屋はものすごい広かった。
家具も一式揃ってあり、実に快適な初夜を過ごすことができた。
翌日、支給された白と青の線が目立った制服を着込み、新天地の気持ちで俺たちは今、星川先生主導の元、最初の授業を行なっている。
そして、その内容は初日ということもあり、低学年の復習をしている真っ最中だ。
「じゃあ、そうだな....お前らは、魔法と魔術の違いってわかるか?」
星川先生はそう問いかけると、後ろを振り返り、クラス全体を見回した。
「はい」
すると、そう問いかける星川先生に一人の少女が手を挙げる。
ふと、そちら側を見ると、そこには自信満々な表情で挙手するリーンの姿があった。
「じゃあ、リーン答えてみろ」
「はい」
星川先生はその重そうな瞼でリーンの挙手を見ると、先生はリーンを指し、問いに答えさせた。
「魔法は、自身を中心に展開させる魔技であり、魔術は、他者を中心に展開させる魔技です」
昨日の怒涛の勢いの彼女からは考えられないほどの冷静な回答に驚きつつも、その正確な回答に俺は心底感動した。
魔法も魔術も使えなかった俺だが、実は、魔技の勉強に関してだけは人一倍に努力はしていた。
いつか、使える時のために....と思って。
よって、知識だけは十二分にある......と思う。
だからこそ、彼女の簡潔で素早い回答は、すごいものだと実感できた。
問いに即反応、即回答できる彼女は、よっぽど勉強を積み重ねてきたんだろう。
それを星川先生もわかっていたのか、先生もまた簡潔な彼女の回答に誠意を見せる。
「正解だ。そしていい答えだな。座っていいぞ」
「ありがとうございます、先生」
そう言って黒板の方へと向き直ると、先生はそれについての詳細な説明を書き出し始めた。
チラッとその後のリーンの姿を見てみると、褒められた彼女がドヤ顔で席に着くのが見えた。
(リーンの本質は、やっぱり変わらないな.....)
そんなありふれたことを考えていると、星川先生が本格的に説明を始めたので、再度集中を高めて授業に臨んだ。
「もっと細かく言えばだが、魔法ってのは、カインが使ってた【濃霧】や自身にバフをかける時に使う魔技なんかを魔法っていう。
んで、魔術ってのは、クレアなんかが使ってた【
つまり、自分が自分に魔技を使うか、自分が他者に魔技を使うかでその呼び方は変わってくるってことだ。
わかったか?、えー、じゃあ、次はだなーー」
スラスラと説明をする星川先生の最初の復習授業は、そのままスムーズに行われ、皆、真面目に授業を受けていった。
やがて、授業は終盤を迎え、1時間目終わりまで残り数分とまでなった。
「じゃあ、1時間目はこれで終わりにするが、何か質問があるやつはいるか?」
そう言って振り返る先生に、隣に座っていたユーリが手を伸ばした。
「おう、なんだ?」
そう言われ、手を下ろし、ユーリは先生へと質問を投げかけた。
「先生、魔法と魔術そして、魔剣士の階級分けってどうなっているんですか?」
「ああ、そういえば言ってなかったな」
そう質問をされた星川先生は怠そうにも、黒板にピラミッドのようなものを書き出し始め、説明の準びに取り掛かっていた。
魔剣士の階級分けは、見習いの学院を卒業した時点で各々が実力に見合った階級に振り分けられる。
これは、次に入学した学院、つまり、正式な魔剣士育成学院に入学してから発表される方式なのだ。
まあ、どうやら今の今まで先生は忘れていたらしいが。
とにかく、見習い学院を卒業しても、正式な高等学院に進学しなければ、そもそも魔剣士としての仕事はこなせない。
しかし、魔剣士として学院に入学すれば、階級によるが学院限定ではあるが一時的だが確実な名声が手に入る。
それすなわち、学院の期待を背負うこと。
つまり、チャンスが訪れるということ。
周りのみんなが息を呑み始める。
緊張感がグッと増した感じだ。
まあ、それも当然だろう。
魔剣士の階級は箔そのもの。
貴族なら威権に関わったり、今後の人生を大きく左右するものだ。
まあ、俺にはあんまり関係ない話かもだけど。
俺は貴族とかじゃないしな。
そうダラダラと考えていると、星川先生は黒板の分布を書き終えたのか、こちらへと振り向いた。
「よーし、じゃあ、説明するぞ。この図をよく見とけ」
黒板に書いてあるピラミッドを指で指すと、下から順に階級の説明を施してくれた。
「あー、魔剣士の階級は下から、見習い、下級、中級、上級、錬級、王級、帝級、神級、そしてその最たるものとして、
ただし、魔剣士の世界改変級はこの大陸で六人、魔技師に関してはたったの四人しかいない。
そして、その魔技師の世界改変級の一人として数えられているのが、大賢者美沙雪、ここの学園長だ」
「え」
驚きのあまり、つい声が出てしまった。
でもまさか、あんなおちゃらけて、気の抜けてる学園長の美沙雪さんが世界を揺るがしかねない
驚愕の新事実に唖然としながらも、星川先生は説明を終え、ポケットに手を差し込んで何かを弄り始めた。
「あー.....お、あった、あった」
ポケットから6枚の白いカード出すと、それを魔術で風に乗せて一枚ずつ、クラスのみんなへと配り始めた。
なんだ、なんだと、騒ぎ始める皆を尻目に、星川先生は説明を続けた。
「これはお前らの学生証だ。クラス、番号と、自分の現時点での魔剣士と魔技師としての階級がそこに書かれている。現状を受け止めて、せいぜい精進してくれ。あーそうだ、次の授業は第一模擬実験室でやるから、遅れんなよー」
学校のチャイムと同時に教室を駆け抜けていった星川先生を横目に、俺たちは全員学生証を眺め始めた。
俺も先生を目で見送った後、自分の学生証へと軽く目を向けて、そこに書いてある記述を確認する。
『
アルカナ魔剣士学院
生徒名:カイン・ツキノ
魔剣士階級:中級魔剣士
魔技師階級:上級魔技師
』
「中級魔剣士か。これっていいのか?」
記述の階級がいいのか、そんな疑問が頭を過ぎる。
すると突然、横から声が聞こえた。
「あら、カインも中級なの?」
ふと、そんな声を聞いて俺は横を見る。
すると、そこには俺の学生証を覗き込むクレアの姿があった。
「もってことは、クレアも?」
「ええ、私も中級よ」
そう言って彼女は片手に持っていた学生証をヒョイと俺の方へと向ける。
それを拝借して確認すると、そこには確かに俺と同じ中級魔剣士の称号が与えられていた。
なるほど、つまり今はクレアと同じレベルぐらいってことか。
ん?、ちょっと待てよ、それってもしかして、俺が神童と同列ってことか?
「........」
ダラダラと冷や汗を垂らしながら俺は心の中で固く決意した。
この称号が見合う魔剣士にまで俺は必ず成長すると。
そう冷や汗を垂れ流しながら勝手に意気込んでいると、俺のもう片方の方からさらに声がかかる。
「あれ、二人も中級なの?」
そちらへと向けば、俺たち二人の学生証を覗き込んでくる、ユーリの姿がそこにはあった。
この反応、もしかして彼女もーー。
「もしかして、ユーリも?」
「うん、私も中級」
そう言って彼女も同様に学生証を俺たち二人へと見せてきた。
それを俺たち二人で確認すると、そこには確かに俺たちと同じ、中級魔剣士の文字が刻まれていた。
「みんな、お揃いか」
俺は何かにホッとしながら学生証をしまい、両側にいる二人を連れて、次の授業の場所である第一模擬実験室へと向かった。
無魔の魔剣士〜謎の男に修行をつけてもらったら最強になった〜 ヤノザウルス @Yzaurusu
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