第46話

「かーえでっ!おかえりっ!!!帰ってきてもお仕事なんて、ほんとに楓の勤め先は…今日も安定の超絶ブラック企業だねっ!」





突然後ろから、衝撃を受けて…目の前のパソコンで頭を強打した。いや、そんなことはどーでもいい。─…いま、なんて言った?






「っわわわ!楓大丈夫っ?!ごめん、楓の無防備すぎる後ろ姿見てたら抱き着きたくなって…もう少し加減すれば良かったね、パソコン壊れてないかな、だいじょう…ぶ、、」






放心する俺を心配しながら、俺がぶつかったことにより傾いてしまったパソコンを元の位置に戻した美羽は、自分が犯した罪を理解したみたいで─…






「っな…え─…クソ、、っあー…えっと…副社長っ…楓の上司っ!ブラック企業のボス!」






──…詰んだ、色々と終わった。






美羽は全部口に出してから、慌てて手で口元を塞ぐ。いや…今更だよな?全部声に出してたよね?






「───は?っえ…なに、誰っ?!ちょ、小山内…お前、一人暮らしだよなっ?!」




『─…専務…申し訳ありません、彼女です』







隠していた訳では無い。ただ話すタイミングが無かっただけで。専務が俺の私生活に興味があるとは思えなかったし、ただの無駄話になると思っていたから。







───…その時、






俺のスマホが、先程トラブルが起きた相手の会社の秘書からの着信を告げる







『申し上げにくいのですがっ…相手先から連絡が来たので…少し離脱します』





「あぁー…すぐ終わるだろ?このままリモート、繋いで待ってるから、終わったら報告して」







───このまま?





このまま繋いでいると…美羽と専務を対面させたまま俺が一人席を外すことになる






いや…不安しかないのですが。






「楓っ、早く電話出ないと切れちゃうよ?!」






美羽に言われて、確かにその通りだ─…っと、黙って一人リビングを出て寝室で電話をする






一刻も早く戻りたいのに、中々解放してくれない相手先の秘書。もはや俺の心中は穏やかではない






尊敬する専務と、大事な彼女─…二人のやり取りが気になりすぎて…仕事どころでは、ない。

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