第35話
「─…美羽、ごめんっ!"芹菜さん"は専務の奥さんの名前っ!専務からそう呼んで欲しいと言われて…一人で練習したりしてたからっ口から"単語"が飛び出しただけ!他なんていない俺には美羽しか…居ないんだっ、」
突然、お風呂に侵入してきたスーツ姿の楓が全裸の私を強く抱きしめて…長々とそんなことを口走った
いや、ちょっと待って…色々ツッコミたいところではあるけど、まず─…
『楓、なにしてるのっ?!もう11時過ぎてるよ?!仕事はっ?!てかスーツ!びしょ濡れじゃんっ!早く着替えてっ!クリーニング出さなきゃっ…ってか髪の毛まで濡れてるっ、乾かしてる時間ある?クソ副社長待たせてるんじゃないのっ?!』
あのクズ副社長のことだ、楓が遅刻なんてしたら私の元職場先の店長のように、即刻解雇させそう。
私としては有難いはなしではあるが、楓はヤツを崇拝してるから…そんなこと、あってはならない。あくまで楓には自分からあのクズ副社長を捨ててもらわないと、未練たらしくヤツのことを考えて生きられたら困るからね。
「俺、美羽と会話出来ないことで病んで…2日連続ミスをした。だから今日は帰らされたんだ。もう出社しなくていい、だからちゃんと話し合いたい。」
───は?っえ、ミスっ?!!
『か、帰らされたってなに?!クビっ?!なにそれ…不当解雇っ!訴えよう、やっぱクズだったなあいつ。今まで私の楓ちゃんを散々こき使っておいて、よくもこんな仕打ちをっ、』
「専務のはなし、やめてっ…俺のこと、見てよ。ねぇ…美羽…俺の名前、呼んで。楓って呼ぶ、美羽の声を聞かせて」
『───楓…?』
「もういっかい、」
『………楓』
「もっと、」
『かえ…でっ、』
「まだ、足りないっ、」
『かえでっ…かえ、で…』
「一人で影で泣いて、俺のことを呼ばないで…今みたいに俺の目を見てちゃんと呼んで。そーじゃないと、抱き締めてあげられないから。」
なんなのっ、塩顔岩塩のクセに偉そうにっ
なんでそんな嬉しいこと、言ってくれるの?
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