第34話

午前10時過ぎ─…




出社したばかりの会社を出て、自宅に帰る





出て行けと言われたけど、そんなこと出来るはずがない。それに…美羽が作ってくれた朝食を食べられなかった。俺より先に帰宅した美羽がそれを見たらまた傷つけてしまうかもしれない。






だから、帰って美羽の作ってくれたご飯を食べよう…そう思いながら帰宅した俺は、リビングの電気が点いているのを見て心底驚く。





───…美羽が、居る





部屋の灯りがついていることが、こんなにも嬉しいことだなんて…知らなかった。






玄関からリビングまでの距離を走る。扉を開いてみるけど…そこに美羽の姿は、ない。





──…俺が、つけたまま出たのか、





そう思い落胆した時─…風呂場からシャワーの音が聞こえて、今度はバスルームに走る






美羽が、居る…なぜ朝からシャワーを浴びているのか不明だが、美羽は確かに風呂場に居る





いきなりドアを開けると怒るだろうか?いや、でももう待てないっ…一刻も早く、顔を見て謝罪がしたいっ─…美羽、





「──…かぇっ…で、かえでっ、」





心臓が、ドクンっと…飛び跳ねた





美羽が、泣いている…一人、シャワーの音で声を消しながら…俺の名前を呟いて、泣いている






「かえっ、ごめんねっ…かえでっ、」




いつも…俺がいない時、こんな風に声を押し殺して一人で泣いてたのか?昨日や一昨日に限らず、これまでもずっと─…?






ちぎれそうな程痛む胸に耐えられなくなり、風呂場のドアを開いて…スーツを着たまま足を踏み入れて、震える美羽を力いっぱい抱きしめた

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