第32話

昨日に引き続き─…有り得ない失態。





──…遅刻、なんて。社会人として終わった





辞表を出して、退社しよう。





『─…失礼します、小山内です、』





専務が使っている部屋に入ってすぐに、頭を下げる。合わせる顔なんてない、自分は愚かな人間。専務が"嫌い"とする仕事がデキない無能な人間だから─…





『……お世話になりました、本日付で退社します』





辞めていく人間の"謝罪"の言葉は必要ない、っと以前から仰っていたのを隣で聞いてきたから、謝るような真似はしない。





辞表を近くの机の上に置いて、専務から言われる言葉をただひたすらに待った。






昨日に引き続き、有り得ないミスを犯した自分…何を言われても仕方がない。そう思っていたのにっ、





「あー…なに、もしかしてヘドハンっ?!お前、どっかの会社に引き抜きにでもあってる?!どこの会社だよ、いくら払うって?それ以上の給料出してやるから、他に行くなんてやめろ。お前は俺の下だから有能に動けてるだけ。俺以外の人間に仕えても無能になるだけだから。無駄なこと考えて遅刻するくらいなら、黙って俺のそばで働けよ、お前俺の秘書だろ」






ヘッドハンティング…なんて、声を掛けられたところでいくつもりなんて絶対にない。仕事に関しては、専務以外の人間の下で働くなんて…今更考えられないっ、





──…だけどっ、






俺は床に正座をして…その場に手をついて専務に再び頭を下げる






それを見た専務は、慌てて俺に駆け寄ってくる

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